もはや呪いとしか思えない
俺が五歳になる頃には地底人たちの村は豊かになっていた。
花の加工技術は地底人たちに広まり、花そのものを売ることも増えているらしい。
そして驚くべきことに迷宮は観光地になった。
迷宮を知り尽くした地底人がガイドとなり探検するアドベンチャー型。
順風満帆だ。
まあ、一つ心配があるとしたら教会との戦争だがこれも最近は大人しくなっているので問題ないだろう。
「カトレヤ、これを読んで実用化出来そうであれば言ってくれ」
仕事も慣れてきた。
書類を読んで必要とあらば意見する。
今日のは何だろう。
羊皮紙に書かれた細々とした字。
「…無魔力児の延命治療?」
あの空気に溶けるように消えてしまった魔族の子供を思い出す。
「魔力が全くない空気に…」
読み始めた所で偵察隊のカラスの魔物が慌てて窓から入ってきた。
また教会の軍が攻めてきたのだろうか。
「敵襲! 数、十五万! 教会軍!」
十五万。
ちなみに魔族軍は三万いるかいないかだ。
数では負けている。
しかしそこまでおびえる必要はない。
「軍に伝令を送れ、それと一般魔族の迷宮避難と魔法防壁を用意しろ!」
戦いは基本的に守る方が優位であり、俺達は魔族だ。
魔族は人よりずっと強い。
今回も勝てるだろう。
「カトレヤはここにいろ、まだ教会はお前のことを知らない。出て行って見つかるのはよくない」
魔王はそう言って俺の頭を撫でる。
……そこ、角だから。
「ご主人様、久々に大きい戦いになりそうだね」
そこでさっきまで庭で訓練をしていたモリオンが走って戻ってきた。
そのままの勢いで俺に飛びつく。
腕を回して…そこ、首だから。
凶悪な抱きつき方をしないでくれ。
「今回も勇者は来てないみたいだね、何でだろ?」
魔王が戦況を見るために魔法で映し出した画像を睨んでモリオンが言った。
「…確か、勇者と教会は仲が悪いらしい。大喧嘩をして先に魔族を壊滅させたら勝ちというはた迷惑な勝負を始めたとか」
魔王は大きなため息と共にモリオンの問に答えた。
「魔王様、何で勇者と教会は喧嘩したの?」
「原因は些細な価値観の違いだったらしい」
内輪もめをしていたから最近はあんまり攻めてこなかったのか。
「…どんな?」
モリオンがさらに質問をすると魔王はかなり真面目な顔で答えた。
「目玉焼きは七味かソースか」
全面戦争が始まります!
目玉焼きのせいで。
次回予告
戦います