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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)
498/505

EP498:伊予の物語「報復の越境(ほうふくのえっきょう)」その2~伊予、反省する~

影男(かげお)さんのひそめた眉の下の三白眼の白目の部分がギラッ!と光ったような気がした。


ハッ!ヤバッ!見てたのがバレるっ!!


と慌てて後ろに身を引き、めくってた(とばり)を元に戻した。


急いで(しとね)に寝っ転がって目をつむる。


有馬さんが


「ねぇ、・・・・どうしたの?まだ途中でしょ?具合でも悪い?」


荒い息遣いでそう言うと、影男(かげお)さんが低い押し殺した声で


「いえ、大丈夫です。

少し野暮用(やぼよう)を思い出したので、今夜は失礼します。」


ガサガサと衣擦(きぬず)れの音と有馬さんの焦ったような


「はぁっ??!!

野暮用(やぼよう)って何よっ!!

待ちなさいっ!!(ともの)影男(かげお)っっ!!」


声が聞こえ、影男(かげお)さんの去っていく足音が聞こえる・・・かと思ったのに一向に聞こえない。


その代わり、東廂(ひがしひさし)側の私の(へや)を区切る几帳の向こうから


「伊予さん、入りますよ」


『はい』とも、『いいえ』とも(こた)えてないのに、几帳をめくって黒い影がニュッ!と(へや)に入ってきたので、びっくりして飛び起きた。


影男(かげお)さんが水干と袴を手に持った状態で私のすぐ目の前に現れた。


小袖の乱れは整えてあり、腰紐はちゃんと結んであることにホッとした。


胡坐(あぐら)をかいて座る影男(かげお)さんと正座して向かい合った。


手に持った衣の(かたまり)を横に置き、影男(かげお)さんが低い(かす)れ声で


「見ましたね?どう思いましたか?」


はぁ??!!


「どうって・・・別に・・・お盛んだなぁとしか・・・」


モゴモゴ呟く。


暗さに慣れてきた目には影男(かげお)さんの真剣な表情が見えた。


「なぜ、私がこんなことをしたか分かりますか?」


へっ??!!


「なぜ?!って言われても、う~~~ん、私への仕返し?報復?とか?」


暗い中で影男(かげお)さんがウンと(うなず)いたのが見えた。


「あれ以来、あのときのあなたの顔が目の前にチラついて離れなくなりました。」


はっ??!!!


あのときの、自分の、あられもない姿を思い出してゾッ!とした。


あれをっ??!!


恥ずっっ!!!


顔がカッ!と熱くなった気がした。


「ごっごめんなさいっ!!

本当にバカなことしてしまってっ!!

あのときはどうかしてたのっ!!

兄さまが臺与(とよ)に媚薬?かなにかを盛られて、それが衣に染みついてたのね、そのせいで、それと、暑くてイライラして、頭が変になってたみたいっ!!

もう二度としないから許してっ!!」


手を合わせて謝った。


影男(かげお)さんは首を横に振り


「いいえ、絶対に許しません。

そのせいで女子(おなご)が欲しくてたまらなくなり、望子(もちこ)に手を出すところでした。

向こうもその気になり、毎日文で結婚を要求してきます。

しかし今夜はついに、女色を我慢できなくなり後腐(あとくさ)れの無い有馬を誘ったんです。」


は?私のせい?


影男(かげお)さんの自制心が弱いだけでしょ??!!


とは口に出さず


「別に私の夫でもないから、望子(もちこ)さんでも有馬さんでも好きにすればいいでしょっ!

屋敷に(こも)ったら私的(プライベート)に護衛してくれるって約束でしょ?

それって、仕事上の付き合いなんだし・・・影男(かげお)さんが妻を何人持とうが私は気にしないし、全然っ構わないわ!」


言ったあと、ちょっとだけ、チリッ!と胸が焦げた。


ホントは奧さんに、ほんのちょっと?は嫉妬するかも。


でもこれは独占欲みたいなもので、お気に入りの玩具(おもちゃ)を誰かに貸したときにあるやつ!


恋愛じゃないっ!!と思う。


チラと上目遣いで様子をうかがうと影男(かげお)さんは眉根を寄せて、口をへの字に曲げムッとして不機嫌そう。


「あなたには夫が一人なのに、不公平じゃないですか?

彼には妻が三人もいて?

あなたは平気なんですか?」


ズキンッ!


心がえぐられた気がした。


「だって!しょうがないじゃないっ!!

私が大人になるのが遅かったんだもの!

兄さまを責められないわ!」


グッ!


影男(かげお)さんが身を乗り出して、顔を近づけた。


ヤバッ!


口づけされるっっ!!


焦って、顔を(そむ)けると、影男(かげお)さんが


「横になってください。按摩(あんま)してあげましょう。そのあと添い寝も。」


落ち着いた静かな声で呟いた。

(その3へつづく)


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