EP497:伊予の物語「報復の越境(ほうふくのえっきょう)」その1~伊予、眠りを妨げられる~
【あらすじ:いかがわしい場面を見せつけて、はたから見れば再起不能なぐらいヒドく傷つけてしまった男友達が、私に報復を考えたみたい。
同僚の女房との逢引きを見せつける魂胆らしいけど、こっちはお見通しだからその手にはのらない!
ハズだったのに、うっかり術中にハマった私は引くに引けずに浮気寸前?!
私は今日も貞操観念の意味を考える!】
低い位置から太陽が強く照り付け、酷暑の昼間が続くけれど、日が沈むと涼しい秋風が暑さを吹き払い、過ごしやすくてホッとする、そんなある日のことだった。
夜風の涼しさで暑さとダルさが癒されつつあった夜中、褥に横になってウトウト眠りかけていると、同僚の女房・有馬さんの房に人の気配がした。
几帳を隔てた隣だから声が筒抜け!
鼻にかかった低い女性の声で
「梅壺でよかったんじゃない?どうせ誰もいないんだし」
掠れた低い男性の声で
「久しぶりにあなたの房に来たかったんだ」
女性がフン!と鼻で笑ったあと
「あら!隣の誰かさんと何かあったからでしょ?
揉めてるんでしょ?
ふ~~~~ん。
だからあの子に聞かせたいの?
どうりでね~。
ずっとあの子に熱を上げてたあなたが、突然誘うなんておかしいと思ったわ!」
その後、楽しそうに弾んだ声で
「フフフッ!
でもいいのよ!気にしなくてっ!
今夜は楽しみましょ!
今まで味わった数多くの殿方の中で、あなたの体が一番素敵だもの!
ホントよ!
左大臣よりあなたの肉体の方が立派で相性が良くて満たされるわ!
さあ脱いでちょうだいっ!!」
有馬さんの鼻に抜けた色っぽいご機嫌な声が聞こえる。
その後、ガサゴソと衣擦れの音がして、掠れた男性の声で
「今夜は、メチャクチャにしてもいいか?」
低い声で囁く。
・・・さっきから、やたらハッキリと聞こえるのは気のせい?
私が聞き耳立ててるから?
まさかね!?
それにしても・・・・
イラッ!
無性にムカムカと腹が立ってくる。
だって、もしかしてわざと隣で有馬さんとそういうことをするつもり?!って影男さんを疑ってるから。
先日の、兄さまと私が『ナニ』してるのを目の前で見せつけたことに怒ってるのね?
ヒドいことした自覚はあるけど・・・
ってゆーか、私はイヤだったのにっっ!!
私は兄さまに、無理やりされた被害者だしっ!!
え?反応するのが悪いって??!!
ノリノリだったって?
それはっ!!自分で制御できないから仕方ないでしょっ!!
まぁ、その場を逃げ出せばよかった、のかもしれないけど・・・・。
それほどイヤがらなかった私も悪いっちゃ悪い。
恥ずかしいし、反省してる。
で、影男さんはそのときの仕返しに、有馬さんと『ナニ』する音を聞かせようとしてるのね?
もしかして覗くと思ってる??
いーーーやっっ!!
絶対っ!そんなことしないからっ!!!
プライドにかけてもっ!!!
覗きだなんて下品なことっ!!!
プンスカ!怒りながら、枕に頭をおしつけ、瞼をギュッ!と固く閉じた。
隣の音なんて無視して早く眠りにつこう!って思ってるのに、隣から有馬さんの吐息交じりの喘ぎ声
「あああっ・・・あああんっ・・・そこはっ・・・っはぁぁぁぁんっ・・・・んんふっ・・・」
やたら語尾を伸ばす。
「んんそうっっ・・・・そこよっ・・・いいっっ・・・いいわっ・・・・もっとぉぉぉんっっ・・・!!!」
他人に聞かれてるって知ってるにしては、恥ずかしくないの?って思うくらい大きな声。
やだやだっ!!!
早く眠ってしまいたいっ!!
眠りに入ろうと集中するけど、
「ね、今度はいいことしてあげるから、そう、ここに、そうよっ!!」
有馬さんの嬉しそうな声に続いて
ガサッ!ゴトッ!
衣擦れの音と今度は影男さんの荒い息遣いと喘ぎ声?のような
「ううっ・・うっ・・・んうっ・・・あっ・・・はっ・・・!」
と、パチンッ!パチンッ!と肌と肌がぶつかるような音がする。
「・・あっ・・・ダメだっ・・・もっとゆっくり・・・たのむっ・・・!」
その後も激しい運動後のようなハァハァという息遣いや、喘ぎ声が続く。
はぁっっ??!!
バカなの????!!!
イラ立ちが最高点に達し、影男さんの激しい運動の最中のような律動的な息遣いが聞こえ続けるけど無視して、
『うるさすぎて眠れないでしょっ!!もっと静かにしてっ!!』
と苦情を言おうと隣の房とを隔てる、几帳の隙間から有馬さんの房を覗いた。
あっ!
目の前の光景にあっけに取られて思わず硬直。
暗くてよく見えないけど、影男さんは小袖が腰紐に引っかかってるってだけの半裸で四つ這いになって、俯いた頭をこちら側を向けてる。
その身体の下にくみしかれた有馬さんが、お椀のような形のいい胸から下半身までを露にして仰向けになって寝てて、痛みを我慢してるような、歓びに悶えてるような何とも言えない表情。
影男さんが律動的に腰を前後に揺らし、その度に力んだときのような声を出す。
それに合わせて肉と肉がぶつかるような激しい音がする。
有馬さんが、体の振動と息遣いを速めながら
「もっとぉぉっ!!もっとよぉぉっっ!強くしてっ!激しく突いてっ!!」
ほぼ叫んでる?!
恥ずかしさと、変な気持ちになるのとで、思わずぼぉっと見つめてしまった。
ふと、影男さんが顔を上げ、目が合った。
(その2へつづく)