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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)
481/507

EP481:伊予の物語「不勝の簪(ふしょうのかんざし)」 その8~伊予、交渉を試みる~

竹丸がアクビをしながら、


「ふわぁぁ~~~!

そんなこと知りません!

伝言があるなら伝えますけど?」


「そうね。じゃあ


『泉丸の女間者・久美(くみ)と泉丸の関係について、何か知ってたら教えてほしい。』


と伝えて!

二人が知り合ったきっかけを知りたいの。

あとは、久美(くみ)は既に『右大臣失脚につながる証拠』を持ってるかどうか知りたい!」


もうっっ!!!


兄さまが逢いに来てくれれば話は簡単なのにっ!!

ホントに他の人と結婚したら、今後一生会えないかもしれないのにっ!

変な意地張って後悔するのはソッチよっっ!!


苛立ちながら、竹丸が帰るのを見送った。


 次の日の朝、竹丸が迎えに来てくれて、紅梅殿へ向かう途中、歩きながら話してくれた情報によると、


久美(くみ)は以前はある寺に属す傀儡子(くぐつし)の一員の踊り子で、貧しい生活から抜け出したくて、泉丸の主催する仲介(マッチング)業者『比翼連理(ひよくれんり)』を訪れ、裕福な貴族との結婚を望んだ。


久美(くみ)の身のこなしや頭の回転の速さを見込んで、多額の報酬と引き換えに情報収集に協力してほしいと泉丸が頼み込むと、久美(くみ)はすんなり承諾した』


らしい。


ということは、ある程度の金銭・物品で久美(くみ)の心は動くのね?


「あっ!泉丸と久美(くみ)は恋人関係なの?」


竹丸に聞くと、首を横に振り


「違うそうです。脅迫があるかどうかは知らないそうです。

あと、『右大臣失脚につながる証拠』は、どうやらすでに久美(くみ)が握ってて、まだほかにもつかめるかもしれないので念のため、右大臣邸に潜入を続けてるらしいです。」


「・・・・って何?」


竹丸は頸が埋まってしまって見えなくなるくらい肩をすくめ


「さぁ。若殿(わかとの)も知らないそうです。」


私が個人的に、確かめたいことがあったので、竹丸にどーでもいいフリして、何気なく聞いてみる。


「あの、兄さまと、泉丸は、まだ逢ってるの?関係を続けてるの?」


竹丸が不機嫌な表情で頬をふくらませ


「さぁ。姫を別の男に嫁がせろ!と泉丸が言ったんでしょ?

若殿(わかとの)とは決裂したってことでしょ?

じゃあ会ってないんじゃないですか?

若殿(わかとの)随身(ずいじん)兼従者として、最近はどこに行くにも泉丸がずっとくっついてたから、私は堀河邸で使用人みたいなことしてましたし。」


 そんなこんなで、それから三週間ぐらい、右大臣邸に通いつめ、書棚の前で手当たり次第の書をパラパラと流し読みしつつ、久美(くみ)の様子を気にしながら、話しかける機会(チャンス)をうかがってた。


忙しそうに書を持って、いったり来たり、整理整頓したりする久美(くみ)に、話しかけるタイミングは充分にあったと思う。


でも!!


いざとなると、コミュニケーション能力に難がある私には、高いハードルっ!!


ひと言目に、何といえばいいのか、困るのよね?!


私がチラチラ見てることにも気づいてると思う。


話しかけたそうにしてる雰囲気を察してくれないかな~~~!


ウジウジしてても前進がないっ!!って気づいて、


よしっ!


とやっと覚悟を決めた。


私が書棚の前に立って書を手に取って眺めてる(フリをしてる)と、久美(くみ)が書棚に書を並べに来た。

ちょうどそのときに


「あのっ!相談したいことがあるのっ!」


久美(くみ)がニコッ!と微笑み


「やっと話しかけてくれたのね?何かしら?」


それまで

『嘘をつくのか?』『誤魔化すのか?』『同情を誘うのか?』『策略を練るのか?』

をさんざん悩みつくしたあげく、結局、『素直に話す!』と結論を出した私は、


「あのね、私、今、泉丸に脅されてて、恋人と別れて他の人と結婚しなければ、恋人を破滅させるって言われてるの」


突然のぶっ飛んだ告白に久美(くみ)の反応やいかに?

チラッと上目づかいで見ると、久美(くみ)は目を丸くしてた。


やっぱりびっくりしてる?

でも、ここで(ひる)んじゃダメッ!!


「でね、あなたは、泉丸のために、右大臣様の身の回りを探ってるでしょ?

その何かが泉丸の手に渡ると、私の恋人は破滅するのね。

だから、あなたの満足のいく方法で、それを譲ってもらえないかなって思って。」


「・・・・・・・」


久美(くみ)は目を丸くしたまま固まって私を見つめ続けた。


「唐突に、変なこと言ってごめんなさい。

でも、今まで、泉丸にはさんざん酷いことされたの!

頸を絞められて殺されかけたり、強姦されかけて応天門の二階から落とされかけたり、男を(あさ)ってるって悪い噂を流されたり、さんざん攻撃されて、今度は、兄さまと別れて、別の男の妻にならなければ、兄さまを破滅させるってっ!

悔しくて、憎いから、何とかして反撃したいのっ!!

そのためには、あなたの協力が必要なのっ


お願いしますっ!!」


床に座り込んで手をついて頭を下げた。


いわゆる土下座。


久美(くみ)は口角を上げて、面白いっ!って感じで笑って


「まぁ!泉丸って極悪人だったのね!

フフフッ!

私は報酬さえもらえば、取引相手は誰でもいいのよっ!

じゃあ、泉丸の二倍をもらえる?

それなら『菅公の文』を譲ってあげる!」


やったっ!!


パッ!と目の前が(ひら)けたような明るい気持ちになり


「ありがとっ!!じゃあ、もし、泉丸の三倍の報酬を用意したら、裁きの場で泉丸の有利になる証言をしないでくれたり・・・・する?」


久美(くみ)の表情が曇り


「え?(おおやけ)の場に引っ張り出されるかもしれないの?

それはお断りよっ!!

公衆の面前で証言とか、考えられないっ!!したくないから、もしそうなら報酬を手にした段階ですぐに姿を隠すわっ!!

でもそうなると・・・いい(かせ)ぎ口がなくなるわねぇ~~~。

泉丸は気前のいい雇い主だったのに~~!」


う~~~~ん、確かに。

久美(くみ)が寝返ったことを泉丸に悟られない方法を考えればいいのね?

(その9へつづく)

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