表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)
457/505

EP457:伊予の物語「追憶の扶桑樹(ついおくのふそうじゅ)」 その5~竹丸、謎の和歌を解明する~

竹丸からの返事は


「五月x日近辺(きんぺん)は他の使用人たちと桑の実狩りに行くのでその日以外なら、相談にのってあげてもいいですよ!

若殿(わかとの)や奧様や色んな人から頼りにされて何かと忙しい身ですけど、来る日を教えてくれれば左大臣邸で待機します。

姫とは昔のよしみがありますし、面倒ですけどしょうがないです。」


と上から目線?でちょっとエラそーでかつ恩着せがましい。


『忙しいアピール』する人ほど実は有能じゃない説があるけど大丈夫?


でも、桑の実?って


小さいツブツブが集まって細長い丸い実になって、はじめは白っぽくてだんだん赤く色づいて、完熟したら紫になるやつ?

食べたことないけど甘酸っぱくて美味しそうっっ!!


桑の葉は(カイコ)が食べて、桑の実は人が食べるのね?

桑って万能っ!!便利っっ!!有益っっ!!


それはそれとして、竹丸でも誰でもいいから、できるだけ早く相談したいっ!!


という事で竹丸に面会の予約(アポ)の文を送り、明日にでも、左大臣邸に出かけることにした。


・・・兄さまが堀河邸じゃなく、左大臣邸に『偶然』いることを期待しつつ。



 翌日、『大納言邸』から『左大臣邸』と呼ばれるようになって以来、初めて、年子様が北の方としてお住まいになるお屋敷を久しぶりに訪れた。

水干・括り袴・束ね髪の少年風従者姿で。

(こずえ)は忙しそうだったから声をかけずに出かける。

ま、少しくらい大丈夫でしょっ!

無事、『左大臣邸』に到着し、侍所(さむらいどころ)で待ちくたびれて昼寝してた竹丸を起こすと、寝ぼけた目をこすりながら


「ふわぁ~~~~。やっと来ましたね。うーーーーんっっ!」


伸びをしながら立ち上がりブツブツと呟く。

辺りを見回し、使用人や来客でガヤガヤしてるのを気にして


「ここではゆっくり話せませんね。

姫が以前、使ってた東北の対の屋を使いますか?

『彼』は夜しか来ないから、今は空いてますので。」


ん?

えぇ??

『彼』って・・・?


嫌な予感がしたけど、東北の対へ渡る竹丸に、大人しく黙ってついていく。


まだ兄さまが大納言で、堂々と付き合ってた頃、私に割り当てられてた殿舎は東北の対だった。


その『イロイロな思い出』の詰まった東北の対に、久しぶりに立ち入るっっ!!!


ドキドキしながら御簾を押して中に入ると、パッと見た感じでは屏風や几帳や畳・(しとね)といった調度品や、鏡棚、書棚、文机は私が使ってた時のままだった。


でも、真っ先に目に飛び込んだ(ころも)()けに掛けられてる衣は、もちろん私のじゃない。


その衣は、黒い高級そうなツヤツヤした絹の狩衣で、銀糸で竜胆唐草(りんどうからくさ)の文様が刺繍されてる。


あと、黒光りした漆塗(うるしぬり)(ふた)に金を散らして、螺鈿(らでん)で龍が(かたど)ってある、見た事のない蒔絵螺鈿(まきえらでん)の手箱もあった。


嫌な予感的中。


『自分の持ち物を恋人の(なわばり)に置いて目印付け(マーキング)!』って、女子あるあるだけど。


イラっとして口をとがらせ


「ふ~~~~ん。

今は泉丸がここを使ってるのね?

『夜しか来ない』って、夜は毎日ここに来てるの?」


竹丸もちょっと不機嫌そうに口をとがらせ


「いいえ。お互いの屋敷を行き来してるみたいです。

来るのは三日に一度ぐらいですかね、よく知りませんけど。

私だって(ヒマ)じゃないんですっ!!

いちいち二人の動向を見張っ(ストーカーし)てるわけじゃないしっ!!」


つっけんどんに吐き捨てるので、なんだかんだ、竹丸も泉丸のことまだ少しは気にしてるみたい。


二人ともトゲトゲした雰囲気のまま、私は畳に座り、竹丸は円座に座った。


早速、相談すべく持ってきた文を、(たもと)から取り出して竹丸の目の前に並べ


「この一枚目の文は左大臣から私宛てで、逢瀬の場所?のことが書いてあるのかな?桑畑って?でも意味が分からないの。

で、二枚目の文は、差出人不明で(もみじ)更衣宛てなの。

和歌の意味が不吉なんだけど、疫病が流行るのを予言してるの?

どう思う?」


竹丸が文を手に取り交互に眺めながめた。

しばらく黙り込んで、やっと口を開いたと思ったら


「う~~~ん、一枚目の『今すぐ君と桑畑で喜びを分かち合いたい』の意味は分かりませんけど、若殿(わかとの)が書いた文じゃありませんよ!

だって、筆跡が違うじゃないですかっ!

姫だって気づいてるでしょ!

それに私の知る限りでは、最近は、姫に文を書いてる気配は全くありません。」


薄々(うすうす)感づいてた嫌な事をアッサリ言ってのけるので、イラっとしつつ


「ふんっ!何よっ!でも『左大臣から雷鳴壺の女房へと文を預かった』って大舎人が言ったんだものっ!」


竹丸は私を無視して顎に指を添え考えこみ、ブツブツ呟く。


「う~~~ん。二枚目のこの和歌は、何か知ってる気がします。

何だったかなぁ~~~~。


『ついなして しょうなきそらに えのかみぞ ・・・・』?


ん?

追儺、しょうな、疫神(えのかみ)、と言えば・・・・

どこかで聞いたことがあるんですけど・・・・

どこだったかなぁ・・・

う~~~ん。

あっ!!そうかっ!」


何か(ひらめ)いたみたいで突然、竹丸の目がキラキラと輝き出し、頬に赤みがさし、興奮が隠せない様子。


私もつられてドキドキッ!

期待感が高まるっ!!


「えっ!わかったのっ!!スゴイっ!早く教えてっ!!」


竹丸は勿体付(もったいつ)けるように、ニヤリと片方の口を歪めて笑う。

ぽっちゃりとした桃色の頬に浮かべた、()らすような自信満々の笑みにイラついた私は


「もうっ!!兄さまの真似??はいいから早く和歌の意味を教えてっ!!」

(その6へつづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ