EP452:伊予の物語「死出の田長(しでのほととぎす)」 その7~伊予、引き返せない旅路を歩く~
兄さまは私の背中をゆっくりと撫でながら
「う~~~ん。そうだな。恋人にするようなことは一通りするだろうな。信用させるためにも。
最後は男色・・・・も覚悟しなければならないかもしれない。
男性経験は無いし、気は進まないが。
まぁ、最後の手段だな。」
兄さまが泉丸を愛おしそうに見つめ、愛撫してる姿を想像し、
『麗人どうしはサマになるなぁ~~~!』
じゃなくてっっ!!
嫉妬で全身が燃え上がりそうに熱くなり、狂おしいほど兄さまを独り占めしたくなった。
ガサゴソッ!!
兄さまの胡坐の上に跨り、向かい合うようにして座り、顔を両手で包んで唇を近づけた。
唇が触れそうな距離で
「ダメッ!泉丸としないでっっ!!」
兄さまの唇に唇で噛みつき、激しく吸う。
腰を抱きしめられるのを感じながら、舌を使って、口の中を愛おしむようにまさぐった。
口づけしながら、背中にまわした腕で私の体を支え、ゆっくりと押し倒す。
床に横たわると、袴の腰紐をほどこうとする。
その手を制して、自分で紐を全部ほどき、単と袴を脱ぐと、兄さまも直衣を脱ぎ、小袖姿になった。
指で敏感な部分を確認すると、すぐに兄さまが中に入った。
大きく動かす腰の速さと同じ速さの、快感で突き上げられ、官能の揺馬に全身が揺さぶられた。
兄さまの熱い肉体で、私の中に痛みと悦びが杭打たれ、流れ出し、体の奥に溶け込み、一体化するような幻に眩暈がした。
律動的に速くなる動きに同調するように、快感の波が高まり、下腹部が硬直し、ピンと張り詰めた。
淫らな快感の波が大きくうねり最高潮に達する。
限界の高さに達した砂山が突然、雪崩れ落ちるように、頭の芯と下腹部の奥に痺れが広がり、全身の力が抜け、弛緩がさざ波のように広がった。
衣を整え、兄さまの伸ばした腕に頭を乗せ、添い寝していると、
「泉丸を信用させるためにも、浄見は恋人を作って、周囲に見せつけてくれ。
元佐でも、四郎でも、新しい男でもいい。」
ん?
不思議に思って
「影男さんは?ダメなの?」
兄さまは悔しそうにチッ!と舌打ちし
「あいつは嫌だ。浄見が本気になりそうだから。あいつだけは許せない。」
呟き、横を向いて私の頬に触れ、指でくすぐるように動かしながら、愛おしそうに見つめる。
「浄見がこの先、誰の子を腹に宿し、産んだとしても、その子は全て私の子とする。
籍に入れ、藤原時平の子とする。
ホトトギスの子を受け入れるウグイスのように。」
何て寛大なの!!??
って感心しかけたけど、まてよ!って気づいて、不機嫌な声で
「ん~~~~、それって、兄さま以外の人とホイホイそーゆー行為をするほど私が尻軽だって言いたいの?」
クスッ!といたずらっぽく笑って
「誰かと恋人のフリをするなら、迫られたら拒めないこともあるかもしれない。
浄見がしたければ、我慢しなくていいよってこと。」
私も意地悪を言いたくなって上目遣いで瞳を潤ませ
「影男さんでも?いいの?」
兄さまは途端に、青筋を立てて口をとがらせ
「絶対ダメっ!!ヤツ以外の男の話っ!!」
唇に指を当てて悩んだポーズで
「う~~~ん、でも、影男さんはやめてって言ったらちゃんとやめてくれると思うし、一番安全なんだけど?」
私を引き寄せギュゥゥゥッッ!と力いっぱい抱きしめる。
「知らない。何も聞いてない。影男?誰それ?そんなヤツこの世に存在するのか?」
呟くと、腕から力が抜け、ゴロンと仰向けになった。
「とにかくっ・・・・影男・・・・だけは、ダメ・・・・」
最後は消え入りそうな声で呟く。
少しすると、規則正しい寝息が聞こえ、兄さまは眠りに落ちたようだった。
チッョチチチチッョ!!
ホトトギスの声が、闇夜から響く。
まるで死出の旅路へと先導するかのような
不気味なほど澄んだ音色だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ホトトギスほど別名が多い鳥も珍しいですよね!