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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)
415/461

EP415:伊予の物語「浮舟の刺(うきふねのとげ)」 その4~伊予、転覆を免れる~

兄さまが


「要約すると、


『宮中にふしだらな女房がいて、左大臣の寵愛を受けながら、大舎人や内舎人、上皇侍従やその他、数えきれないほど多くの男性をたぶらかしている。


いずれ帝にその毒手を伸ばし、入内なんて事態になれば、萄子更衣(どうここうい)に皇子を望むどころか、萄子更衣(どうここうい)がそばに仕え、本来の目的である「帝に幸運をもたらすこと」ができない。


皇太后(こうたいごう)の御意で、帝に災いをもたらす、ふしだらな伊予という女房を宮中から排除して欲しい』


という内容だった。」


兄さまは皮肉気に口を歪め、反応を確かめるように、私の顔色を(うかが)う。


瞬間的にイラっ!とし、そのあとゆっくり、ふつふつと怒りが湧き


臺与(とよ)の言いがかりでしょ!!そんな一方的な誹謗中傷を皇太后(こうたいごう)はお聞き入れになるかしら?」


兄さまが、面白そうに眉を上げ


臺与(とよ)が言うには、証拠があるらしい。その『ふしだらな女房』がある内舎人と交わした恋文らしい。身に覚えは?」


はぁ~~~???!!!


影男(かげお)さんが???


私の送った文を誰かに渡したの??!!


フツーのやり取りで、恋文じゃないけどっ!!


信じられないっ!!!


イライラしつつも、


「そんなもの一枚が証拠になる??ふしだらって、臺与(とよ)の方がよっぽどでしょっっ!!」


ムカつくっっ!!!


兄さまがニヤニヤしながら


「でも、万が一、皇太后(こうたいごう)上書(じょうしょ)を信用されて、伊予を宮中から出せと(おっしゃ)ったら大変だ!どうする?」


ムッ!


臺与(とよ)がそれを兄さまに見せたということは、取引を持ち掛けたんでしょ?


何?


上書(それ)皇太后(こうたいごう)に出さない代わりに何を要求したの?兄さまと毎日逢引きしたいって?」


急に真剣な顔になり、首を横に振り


「伊予と永遠に別れろ、と要求された。」


「ふんっっ!!で、兄さまは何と答えたの?別れるって?」


「そんなワケないっ!!いざとなれば、気が済むまで臺与(とよ)の言いなりになって機嫌を取って、許してもらう。


とりあえず、まだ保留してもらってる。」


深刻な表情を浮かべつつ、上目遣いでチラチラ私を見て、口元はニヤケてる。


チッ!!


ま~~た、色仕掛け??!!!


ったくっ!!!


いつまで臺与(とよ)の言いなりになるつもりっ??!!


私が嫉妬すると思ってニヤケてるの??!!!


バカじゃないの??!!!


こーなりゃ、臺与(とよ)をやり込める手段が欲しいっ!!


ん?確か、望子(もちこ)藤原黒文(ふじわらくろぶみ)の屋敷で臺与(とよ)を見たと言ったわね?


秦奧涼(はたのくますず)の奥様からも注文を頂いてるとも言ってた。


藤原黒文(ふじわらくろぶみ)の屋敷で臺与(とよ)を見かけたあと、望子(もちこ)影男(かげお)さんの実家で私に会った。


その後、秦奧涼(はたのくますず)の屋敷で私の誹謗中傷を臺与(とよ)に吹き込んだとすると・・・・


う~~~ん、確信は無いけど、もしかして、イチかバチか・・・・


「ねぇ!兄さま、最近、藤原黒文(ふじわらくろぶみ)秦奧涼(はたのくますず)が何か悪事を働いてない?


もしそうなら、臺与(とよ)をやり込めることができるんだけど?」


兄さまが目を丸くして驚き


「え?よく知ってるなぁ。実は、秦奧涼(はたのくますず)にある悪事をもみ消してくれと頼まれてる。


臨時官司(りんじかんし)造河司(ぞうかし)長官(のかみ)である秦奧涼(はたのくますず)は鴨川の氾濫対策工事にあてられた公金を横領したそうだ。


その悪事の証拠を藤原黒文(ふじわらくろぶみ)に握られ脅されて困っているから、私に正直に打ち明けて、横領した銭を全て返すから、検非違使(けびいし)庁には黙っててくれと頼まれた。」


「それに臺与(とよ)が絡んでるのね!!


臺与(とよ)藤原黒文(ふじわらくろぶみ)秦奧涼(はたのくますず)の屋敷を行き来してたのを見た人がいるわ!


秦奧涼(はたのくますず)は自分の身を守るために臺与(とよ)との関係を曝露する(バラす)でしょ?


そうなれば臺与(とよ)藤原黒文(ふじわらくろぶみ)秦奧涼(はたのくますず)とともに犯罪者として獄につながれるぞ!と言って脅せばいいんじゃない?」


「公金横領に関わった罪をもみ消す代わりに、皇太后(こうたいごう)への上書(じょうしょ)を燃やせと臺与(とよ)に言えばいいんだな?」


ウン!と頷く。


兄さまはニコニコと満面の笑みで


「あぁっ!!左大臣の『ふしだらな恋人』は、なんて頭がいいんだっ!!()れ直すよっ!!」


ムッ!


としたけど、身に覚えがありすぎて、胸がチクチクしつつ、尖った声で


「イヤなら臺与(とよ)とつきあえばいいでしょっ!!」


プンっ!頬を膨らませて横を向く。


『やましいと逆ギレする』って、真理だと思う。


兄さまはゴキゲンに


「今夜は?左大臣邸に来る?枇杷屋敷を借りる?」


声を落として(ささや)く。


罪悪感で落ち込み、兄さまに申し訳なくて、そんな気になれなくて


「ごめんなさい。今夜はちょっと、無理なの。」


兄さまが眉をひそめ、心配そうに


「『ふしだらな』って言ったを気にしてる?ごめんっ!冗談だよ?!もしかして傷つけた?!浄見が本当にふしだらだなんて思ってないから!許してくれっ!」


苦しくて真っ直ぐ目を見れない。


影男(かげお)さんとまた、口づけしたって正直に言うべき?


でも、


「兄さまは、臺与(とよ)と、その、そういう行為をしてるとき、罪悪感ってある?」

(その5へつづく)

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