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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)
414/505

EP414:伊予の物語「浮舟の刺(うきふねのとげ)」 その3~伊予、激情に流される~

あっ??!!!


やっちまった?!!!


「あの、予知夢?を見たのね、で『警戒するように!』って伝えようとしたら、その日の朝にはもう、負傷して勤めに出なくなってたの。」


影男(かげお)さんは面白そうに目を細め、微笑みを浮かべ


「予知夢・・・・ですか。そんな能力があるんですか。だから、あなたには神秘的な魅力があるんですね!納得しました。」


感心したように呟く。


「でも、何を取り返そうとしたの?そうじゃなきゃ肩を負傷しなかったでしょ?」


影男(かげお)さんが微笑みを引っ込め、真顔になり


「いいえ。大したものではありません。あなたには関係のない、仕事上の、大切なものです。」


「あの暴漢は誰なの?知り合い?なぜ襲われたの?」


首を横に振り


「知りません。強盗でしょう。銭を奪おうとしたのかもしれません。」


アレ?


「仕事の大切な物を盗まれそうになったんでしょ?


極秘情報とか?


影男(かげお)さんが母上に仕える人間だって知ってて狙ったんなら、通り魔的な犯行じゃなく、母上に関係する物を狙った犯行じゃない?


母上に敵はいないの?」


影男(かげお)さんが真剣に考えこみ


「いいえ。おそらく、(あるじ)と関係ありません。どちらにしろ、あなたは気にしなくていい。


見舞いに来たというなら蜜柑(みかん)をむいて食べさせてくれませんか?」


ん???


やけに話を()らしたがるっっ!!


何かを隠してる?


もしかして暴漢の素性を知ってるの?


何か裏があるの??


気になるっ!!!


と思ったけど、お見舞いに来たのは確かなので、蜜柑(みかん)を手に取り、モソモソと影男(かげお)さんに近寄る。


手早く蜜柑(みかん)をむき、ひと(ふさ)摘まんで口に運ぶ。


あれ?左手は使えるから、ひと(ふさ)ずつにほぐせば、自分で食べれるでしょ??


疑問に思いつつ、もうひと(ふさ)、もうひと(ふさ)、と口に運ぶ。


影男(かげお)さんが『あーーーん!』と呑気(のんき)に口を開けてたと思ったら急に左手で


ギュッ!!


蜜柑(みかん)を運ぶ腕を握った。


グイッ!


その腕を引っ張り、押し下げ


顔を近づけたと思ったら


「口づけしてくれれば、もっと早く治る気がします。」


鼻がくっつきそうな距離で(ささや)く。


兄さまより、薄い薫物(たきもの)、濃い汗、の匂い。


男らしくて、嫌な匂いじゃない。


ドキッ!


としつつ、これじゃあ望子(もちこ)の言う通り尻軽浮気女だなぁ~~!って思って


「ダメっ!大人しく療養しててっ!!」


キッパリ言ったのに、(かす)れ声で


「気づいてますか?その言葉が、もっとそそるってことに?」


(ささや)きながら、唇を重ねた。


熱い、太い、舌が中に入る。


かき乱され、陶酔に浸る。


兄さまの顔が目にチラつく。


ゾクッ!


罪悪感が刺激(スパイス)になり、官能が加速したような気がした。


「・・・んっ!もう終わりっ!」


影男(かげお)さんの胸を押し、唇を離した。


ふぅ~~~!ヤバいっ!


危うく夢中になるところだった!


本気の『浮気』?になるところっ!!


影男(かげお)さんが無表情の三白眼に戻り、口の端だけで微笑み


「肩が治ったら、続きをしましょう。」


ヤッ・・・バッッ!!!


ドキドキしつつ慌てて立ち上がり


「じゃ、元気でね?!!また、来るかも?わからないけど?じゃねっ!!」


手を振って急いで帰ろうと、背を向けると


「あなたの、全てが、好きです。どうしようもなく・・・・愛おしいんです。」


影男(かげお)さんが言い放った。


・・・・・


御簾を押して廊下に出ると、(こずえ)が待ってくれてた。


ちょうどそのとき、磯鵯(イソヒヨドリ)が、目の前の庭木から、空へ飛び立った。


羽の(つや)やかな青と、お腹の(あざ)やかな赤を輝かせ、(かす)かな胸騒ぎを残して。



 数日後、帝のお伴で兄さまが雷鳴壺を訪れた。


帰り際、話があるというので、私の(へや)に案内した。


向かい合って座り、白湯を注いで差し出すと、すぐに碗を手に取り、渇きを潤すように、一気に飲み干す。


影男(かげお)が負傷したんだって?見舞いに行った?」


(やま)しさで一瞬、ギクッ!としたけどウンと頷いた。


「つい先ほど、直廬(じきろ)臺与(とよ)が来てね、萄子更衣(どうここうい)を通じて、ある上書(じょうしょ)を、皇太后(こうたいごう)に出すというんだ。」


萄子更衣(どうここうい)臺与(とよ)(あるじ)


皇太后(こうたいごう)が民間の娘から選んで萄子更衣(どうここうい)を入内させたから、後ろ盾なのよね?(*作者注:EP153:伊予の事件簿「不承の富貴栄華(ふしょうのふうきえいが)」にあります)


皇太后(こうたいごう)に?どんな内容の?」

(その4へつづく)


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