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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)
413/461

EP413:伊予の物語「浮舟の刺(うきふねのとげ)」 その2~伊予、影男の許嫁に牽制される~

影男(かげお)さんが私を見て


「伊予さん!わざわざ来てくれたんですか?さぁ、そこの円座に座ってください」


そばの女子(おなご)に向かって


望子(もちこ)、ありがとう。友人と話をしたいから、席を外してもらえるかな?」


望子(もちこ)と呼ばれた女子(おなご)は、年は私と同じぐらいで、お尻まである長い豊かな髪を束ねた、中流貴族の子女が着るような(うちき)姿。


目はパッチリしてるけど、目じりが切れ上がってて、鼻梁の細い形のいい鼻と、厚いめくれあがった肉感的な唇の美女。


どちらかというと痩せ型なところは私と同じ。


肉感的(グラマラス)じゃないところが、親近感が湧く!!


望子(もちこ)が水瓶を置き、床に指をそろえてつき、


望子(もちこ)と申します。(ともの)影男(かげお)許嫁(いいなずけ)でございます。もうすぐ夫婦になりますので、ご友人にはお見知りおきいただきますよう。よろしくお願いいたします」


頭を下げた。


はぁ?そうなの?


ビックリしたけど


「はい。わかりました。それはおめでたいことですね」


影男(かげお)さんが慌てたように


望子(もちこ)っ!何を言ってる!その話はとうの昔にお前の両親が破談にしただろっ!!」


望子(もちこ)がキッ!と怒った表情で影男(かげお)さんを睨み付け


「この女子(おなご)は誰?もしかして仕事で仕えてたとかいう宮中の女房?なぜそんな人がお見舞いに来るの?つきあってるの?」


影男(かげお)さんは無表情に首を横に振り


「違うっ!そういう関係じゃないっ!」


望子(もちこ)が今度は私をキッ!と睨み付け


「宮中の女房は尻軽ばかりっ!


この前も藤原黒文(ふじわらくろぶみ)っていう貴族の屋敷で、殿様といちゃつく女子(おなご)を見たわっ!!


奥様に尋ねたら宮中の女房で臺与(とよ)というそうよ!


影男(かげお)さんは騙されてるのよっ!!この女もどうせ多情多淫な尻軽浮気女でしょっ!!」


影男(かげお)さんが三白眼の黒目を少し光らせ


「なぜ藤原黒文(ふじわらくろぶみ)の屋敷に?仕事で出入りしているのか?帯飾りの?」


望子(もちこ)はツン!と顎を上げ、自慢げに胸を張り、腕を組み、引き続き私を睨む。


「そうよっ!!私はね、宮中でブラブラ遊んでるあなたと違って、自分の作った帯飾りで生計を立ててるのよっ!!


私の作った帯飾りはね、上流貴族の奥様やお姫様方に大人気なんだからっ!


つい最近も秦奧涼(はたのくますず)という貴族の奥様にご注文いただいたのよっ!!


巾着に、翡翠(ひすい)瑪瑙(めのう)を使った玉飾りや、房飾りをつけた、お洒落で豪華な帯飾りよっ!!


あんたが影男(かげお)さんにあげたみすぼらしい巾着と一緒にしないでよねっ!!」


え?


はぁ?


みすぼらしい巾着?・・・・あげたっけ?


あぁーーー!はいはい!そーいえば、山桜を刺繍したやつねっ!!あったなぁ~~~!(*作者注:EP162:伊予の事件簿「吉備津彦の桃(きびつひこのもも)」にあります)


望子(もちこ)の剣幕に圧倒されて、愛想笑いで何も言えずにいると、影男(かげお)さんが


「いい加減にしろっ!今すぐ出ていけっ!!帰れっ!!」


怒鳴りつける。


望子(もちこ)はビクッ!と全身を震わせた。


しぶしぶ立ち上がり、怒りが収まらない様子で私をチラチラ睨みつつ立ち去った。


影男(かげお)さんがふぅ~~~っとため息をつき


「彼女は幼いころに、お互いの両親が決めた元許嫁(いいなずけ)です。


右手が使えないので、身の回りの世話をしに通ってくれてるんです。


私が、官人登用試験に合格した(あかつき)には結婚させようと考えていたようですが、文章得業生(もんじょうとくごうしょう)を辞め、大舎人(おおとねり)になったことを知ると、望子(もちこ)の両親は私の両親に破談を言い渡しました。


あのまま役人になっていたら抵抗せず結婚していたと思います。」


ふぅ~~~ん。


親が決めた許嫁(いいなずけ)かぁ~~!!


幼いころから近くで育ったなら気心が知れてるわね?


私にとっての兄さまみたいに!


「彼女の方はまだ影男(かげお)さんを好きみたいだけど?


・・・・気が合うなら、結婚すれ」


ばいいんじゃない?


って言いかけて目が合うと、影男(かげお)さんが冷たい三白眼に、怒りをたぎらせてた。


低い、抑揚のない声で


「何しに来たんですか?結婚を薦めに?それとも見舞いに?」


「も、もちろん!お見舞いに。これどうぞ!」


包みを解いて、忠平(ただひら)様からもらった蜜柑(みかん)を差し出す。


三角巾で右腕を吊ってるのを見て


「暴漢に右肩を外されたのね?(すじ)を痛めたの?まだ痛む?」


何気なく呟くと、影男(かげお)さんがギョッと驚き


「なぜ知ってるんですか?まさか、現場にいたんですかっ??!!」


三白眼の黒目が大きくなりすぎてる。

(その3へつづく)


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