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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)
412/505

EP412:伊予の物語「浮舟の刺(うきふねのとげ)」 その1~伊予、不吉な予知夢を見る~

【あらすじ:気になる男友達が負傷する夢を見た私は、まんじりともせず夜を過ごした。気遣いであって、浮気じゃない!って思いたいけど、流されてしまう自分を責めたくなる。私は今日も浮舟のような自分の心が、漂泊するのをくいとめきれない!】

今は、900年、時の帝は醍醐天皇。

私・浄見にとって『兄さま』こと左大臣・藤原時平(ふじわらときひら)様は、詳しく話せば長くなるけど、幼いころから面倒を見てもらってる優しい兄さまであり、初恋の人。

私が十七歳になった今の二人の関係は、一言で言えば『紆余曲折(うよきょくせつ)』の真っ最中。

原因は私の未熟さだったり、時平さまの独善的な態度だったり、宇多上皇(とうさま)という最大の障壁の存在だったり。

結婚だけが終着点(ゴール)じゃないって重々承知してるけど、今のままじゃ辿(たど)り着けるかどうかも危うい。

「それを返せっ!!」


影男(かげお)さんが叫んだ。


薄墨色の(とばり)がおりたような夕闇の路地。


筒袖(つつそで)(くく)(ばかま)雑色(ぞうしき)の恰好をした男の腕を、影男(かげお)さんが()じり上げた。


その男の手から何かを奪って、胸元にしまった。


影男(かげお)さんは内舎人姿ではなく、普段着の水干と(くく)(ばかま)


私は三間(さんけん)(5.4m)ぐらい上空から二人を見てる感じ。


胸元に何かをしまった影男(かげお)さんに、今度は、その暴漢が(つか)みかかり、腕を()じり上げた。


暴漢が影男(かげお)さんの肩に手を当てたと思ったら、腕を後ろの変な方向に()じったので


ゴキュッ!!


イヤな音がして、影男(かげお)さんが歯を食いしばり


「ウッ!!」


とうめいた後、その場にうつ伏せに崩れ落ち、動かなくなった。




・・・・・・・


ハッ!??


変な夢見たっ!!


何だったの??


ただの夢?それとも予知夢??!!!



 昼間の暖かさにつられて、夜間の冷え込みも弱まった冬の終わり。


辺りは真っ暗で、まだ夜が明けてない。


雷鳴壺の自分の(へや)で、綿入りの(ひとえ)にくるまりながら目が覚めた。


夢の中で、影男(かげお)さんが暴漢に襲われて、動かなくなってた!!!


大丈夫かな?


死んだり、してないよね?


これから起こること?なら、気を付けるよう伝えた方がいいかな?


今までの経験から、予知夢を見て警戒しても、現状を変えられた事は、一度も無かった。


でも!教えてあげなくちゃ!!!


まんじりともせず、夜が明けるのを待って、大内裏にある内舎人局に向おう!


と思ったけど、変な噂になっても困るので、内侍司(ないしのつかさ)で、(こずえ)が出勤してくるのを待って見つけ出し


「ねぇっ!(こずえ)っ!!今すぐ、影男(かげお)さんに、『もうすぐ暴漢に襲われるから、気を付けて!』って伝えてくれる?」


(こずえ)はキョトンとしてたけど、本気度は理解してくれて


「はい!」


とすぐに内舎人局に向かってくれた。


すぐに帰ってきて、


影男(かげお)さんは今朝、病欠の届け出が出てたらしいです!


昨夜、重傷を負ったので、内舎人の務めを果たせないらしいです!


理由は書いてなかったそうです!」


えぇっっ!!!


重傷なの?!!!


肩を変な方向に()じられてたから、右手が使えないとか?


大丈夫かしら?命に係わるような怪我じゃない??!!


顎に指を当て考え込んでると、(こずえ)がおずおずと


「あのぉ、伊予さんは、なぜ、影男(かげお)さんが暴漢に襲われるって言ったんですか?もしかして、そのせいで重傷を負ったんですか?」


は?


まいっか、バレても。


「ええっとぉ、そのぉ、夢、を見るの。予知夢?みたいなの。でも、夢で不幸が起こるって知ってても現実を変えられないの!だから全~~然っっ無意味な能力!!」


(こずえ)が半信半疑の様子で


「へぇ~~~~そうなんですかぁ。じゃあ嬉しい夢は楽しみですよね!!」


ホントにそう!!


でも今は、影男(かげお)さんが心配っ!!



 数日後、(もみじ)更衣に許可をもらって、影男(かげお)さんのお見舞いにいくことにした。


自分の(へや)にあった蜜柑(みかん)を数個、布に包んで持っていく。


影男(かげお)さんはどこで療養してるのかを(こずえ)(たず)ねると


「実家ですよ~~!(ともの)家の!場所を教えてあげます!」


というので、内侍司(ないしのつかさ)に『買い物のお伴に(こずえ)を連れて行きたい!』とお願いして許可を取って一緒に影男(かげお)さんの屋敷を訪れた。


(ともの)家の屋敷は、中流貴族のそれらしく、小ぶりだけど、主殿、北の対、東の対または侍所(さむらいどころ)(くりや)はありそう。


庭に池?と思われる水たまりはあったけど、建物は全体的に黒っぽくて古めかしい。


(こずえ)が東にある建物にサッサと近づき、廊下に上がって、御簾を押して中に入った。


出てくると、


「東の対で療養してるそうです!行きましょう!」


侍所(さむらいどころ)とほぼつながった東の対の、壁代(かべしろ)で区切ってある空間に入ると、予想に反して影男(かげお)さんは文机に向って座ってた。


三角巾で右腕を吊ってる。


そのそばには、水瓶で碗に白湯を注いでる女子(おなご)の姿があった。

(その2へつづく)

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