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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)
409/467

EP409:伊予の物語「逡巡の款冬花(しゅんじゅんのかんとうか)」 その5~伊予、時平の質屋通いの理由を推理する~

次の日、雷鳴壺で女房の仕事をしてると、(こずえ)(ざる)に、十個ほどの花芽のようなものを入れて持ってきた。

文と一緒に差し出し


「これを持っていくように影男(かげお)さんに言われました。」


文を開くと


『伊予さんお元気ですか?

出かけた先で山菜を採りました。

旬のものを食べると健康にいいという昔ながらの知恵があります。

フキノトウは少し苦いですが、体にはいいそうです。

 影男(かげお)


そういえば、最近、影男(かげお)さんと会ってない。

兄さまを振り向かせることに必死で、影男(かげお)さんのことを考えもしなかった。


『あなたは、きっと、いつもそばにいない私のことなど、すぐに忘れてしまうでしょう?』


影男(かげお)さんの言葉を思い出した。


私って単純。

好きな人でもそばにいないと、影男(かげお)さんの言う通り忘れてしまうのかも?


唯一、忘れられないのは、時平様だけ。


そうだ!

フキノトウを天ぷらにして兄さまに食べさせてあげようっ!!


でも、アレ?山菜ってもしかして・・・・


(こずえ)


「ねぇ、もしかして、影男(かげお)さんがこの頃、山菜が取れる山の近くの質屋に通ってるなんてことはない?」


(こずえ)はビックリしたように


「そうです!よく知ってますね!何度も足を運んでたそうですが、でも『今日でもう終わった』といってました。」


フムッ!

なるほど、ということは、目的は兄さまと同じ?

幼女買春?はありえないので、おそらく・・・・


ハッ!


とひらめいて、兄さまと影男(かげお)さんに文を書き、(こずえ)に届けてもらった。

忠平(ただひら)様にも『枇杷屋敷を使わせてもらいたい』という文を届けてもらった。


大内裏の内膳司(ないぜんし)に出かけて、フキノトウを天ぷらにして持っていくことにした。


日が暮れた頃、枇杷屋敷を訪れた。

主殿に、文で呼び出した時平様と影男(かげお)さん、枇杷屋敷の持ち主である忠平(ただひら)様が(そろ)ったので立ち上がって話し始めた。


「皆さんお集まりいただきありがとうございます。」


ペコッとお辞儀すると、兄さまは仏頂面、影男(かげお)さんは無表情、忠平(ただひら)様はニヤケながらこっちを見てる。


「私が皆さんを呼び出した目的は、幼女売春をしてる質屋に、時平様と影男(かげお)さんが何度も通っていた理由を考えついたので確認したいからです。

なぜ二人はそのいかがわしい質屋に何度も足を運んだのか?

私の推測ですが・・・・・」


流暢(りゅうちょう)に話し続けてるのに、ニヤニヤ顔の忠平(ただひら)様が突然


「伊予どうした?そんなに(かしこ)まって?もっと砕けた口調でいいのにっ!」


冷やかすので、イラっとしたけど気を取り直して


「あっそう?じゃ、気楽に話すわね?!

ええっと、兄さまと影男(かげお)さんの両方が同じ目的で通ってたとすると、その質屋は質草(しちぐさ)として、二人が欲しがるような価値のある何かを手に入れたってこと。

もういいから話すけど、影男(かげお)さんは私の母上の命令で私を守ってくれてる。

身分も高く裕福で、私の居所も把握している母上なのに、育ててくれた上皇(とうさま)から私を取り返そうとしなかった。

ということは、母上と上皇(とうさま)は信頼し合う間柄ってこと。

文のやり取りもあったはず。

だから、兄さまと母上の命を受けた影男(かげお)さんが手に入れたくなるもので、一番可能性が高いのは


『上皇の宸筆(しんぴつ)の文』


じゃないかしら?


内容を伏せて『上皇の宸筆(しんぴつ)の文』を入手したという噂だけを質屋は流した。

できるだけ高値で買う意思を示した人たちとは何度も交渉して、昨日、やっと兄さまが手に入れた。

そうでしょ?」


兄さまがウンと頷いた。


よしっ!

ここまでは合ってるっ!!

ウキウキして続ける。


「でも、一つだけおかしな点がある。

上皇の腹心の忠平(ただひら)様がその文を手に入れようと行動しなかったこと。

もしその文が上皇の弱みになるような内容かもしれないと、わずかでも危惧した(・・・・・・・・・)なら、上皇側の忠平(ただひら)様が動かないハズはない。

ということは、上皇側の人たちは内容を知っていたってこと。

どう思う?兄さま?」

(その6へつづく)

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