EP396:伊予の物語「回生の粉飾(かいせいのふんしょく)」 その6~伊予、実力を証明するため作戦参加を申し出る~
主殿の中には、仙人と竹林を描いた薄墨絵の屏風を背に、一段高くなった畳の上に座る左大臣・時平様の姿があった。
文机の上に開いた書があり、パラパラと行ったり来たりしてめくりながら何かを確かめてる。
兄さまの右側の床には、同じく文机に向かって座る大舎人がいて、多分、野太い声の持ち主。
筆で紙に何かを書くことに集中してる。
時平様も文机の書をパラパラ見ながら
「名と歳を教えてくれ。」
「はい、阿波です。二十歳です。」
ハキハキと答えると、紙をめくる手をとめ、兄さまが顔を上げた。
目が合うと、文机の上に肘を乗せて両手を組み、あごに添え、眉一つ動かさず
「数日前は酔い覚ましの煎じ薬をありがとう。
で、聞きたいことは、過去に、宴会に同席して、客の接待をするよう役人に頼まれたことがあるかどうか?なんだが。」
「いいえ。ありません。」
首を横に振るだけで、余計な事は言わない。
数日前に口づけしたとは思えない、兄さまの淡々とした冷たい態度に
『やっぱり遊び慣れてる人は違うのね~~?あんなに簡単に、大勢としてるなら私としたことなんてとっくに忘れてるのかも?』
チョット感心。
イラっと嫉妬。
「ああそうか。じゃ、もういいよ、次っ」
えっ?
終わりっ??
これじゃぁ『切れ者』としてイイところが見せられないっ!
焦って
「あのっ!橘公紀さまが地方豪族を女儒を使って性接待したんですよね?もし、証拠がないなら私が囮になって宴席に同席して、証拠を取ってきたり、実態を確かめてもいいですけどっ!!もし、次があるようならの話ですけど。」
作戦参加を申し出る。
私だって、臺与のように上手くやれる!
初めは失敗するかもだけど、きっとうまくなるっ!!
男性の扱い?にあんまり自信はないけど、要は慣れよっ!!
回数を重ねれば何だって上手くなるハズっ!!
ウンと言って!
了解してっ!
私を信用してっ!!
願いを込めた、真剣な表情で兄さまの目を見つめた。
兄さまが驚いたように眉を上げ、記録係の大舎人に向かって
「今のは記録しなくていい。少し席を外してくれ。休憩してていいよ。」
大舎人が
「はぁ?でも全部隈なく書き付けるようにとおっしゃったのでは?」
なんてヤボな事は言い返さず、無言でウンと頷き、そそくさと立ち去った。
やったぁ~~~!!
作戦参加決定??
大舎人が退出すると、意気揚々と
「何でもしますっ!!細かく指示してもらえば、その通り動きますのでっ!!宴席に同席すればいいんですよね?」
やる気を前面に見せる。
兄さまがギロっと睨みつけ
「簡単な事じゃない。初めて会う、粗野な、むさくるしい男に、嫌な事をされるかもしれないんだぞ?耐えられるのか?」
「ハイッ!!頑張ります!」
やったことないけど、臺与にできるのなら、私にだってできるっ!!
兄さまはスクッと立ち上がり、怖い顔で私に近づいたと思ったら、床に押し倒した。
抵抗する間もなく、唇を奪われ、荒々しく、無造作に、手を、下腹部に伸ばした。
敏感な部分に袴の上から、手を添え、指を縦に動かしたと思ったら、止め、手のひら全体で律動的に押さえ付け始めた。
口づけしながら、下腹部を一定の力と速さで圧迫する。
袴の上からなのに、ずっと続けられると、振動が身体の奧に伝わり、快感を引き起こした。
口づけが快感を加速し、突き上げるような官能の波に飲み込まれ、思わず喘ぎ声が漏れた。
「っっうっうっうっんっ!っぅあっっ」
違うっ!!
コレって、兄さまは見ず知らずの粗野な男に、強姦されたときの怖さを思い知らせるためにしてるのにっ!!
ここで快感を感じちゃダメなのにっ!!
怖がらなくちゃっ!!
初対面の女子じゃないってバレるっ!!
我慢しようとしても、勝手に身体が反応するのを止められない。
次々と突き上げる快感の波に、ビクビクと痙攣に襲われる。
「見知らぬ乱暴者にも、こんなに敏感に反応するのか?・・・・・・・浄見?」
口づけをやめ、手をとめた兄さまが、両手で体を支えて、上から私を見下ろしてた。
はっ???
今、浄見って言った?
(その7へつづく)