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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)
394/505

EP394:伊予の物語「回生の粉飾(かいせいのふんしょく)」 その4~伊予、変装後の自分に嫉妬する~

おっかなびっくりの私は、オズオズと立ち上がり、畳の上の兄さまが指さす場所に真正面は恥ずかしいので、横を向いて座った。

頬に、酒の匂いのする息が、かかりそうな距離に顔を近づけ


「私()子が欲しいのか?そ()ためにここへ来たのか?」


ギクッとして息をのんだ。


そーだけどっ!!

ってゆーか、そーじゃなくてっ!!!


真っ青な顔で押し黙っていると


「さっきの女子(おなご)を見ただろ?彼女は私の子が欲しいらしい。そうすればおそらく一生食うに困らないから、当然だな。今までそんな女子(おなご)はた~~~くさん寄ってきた。」


兄さまが(ささや)くたびに、酒の匂いの混じった熱い、湿った息が頬にかかる。

(かぐわ)しい薫物(たきもの)と官能的な体臭の混じった匂いが強く漂う。


思わずウットリと兄さまの動く唇を見つめた。

唾液で潤んだ、桃色の、愛おしい唇。


ハッと気づいて、


『もしかして、兄さまはいつも、どの女子(おなご)にもこんなに近くで話すの?それともお酒に酔った時だけ?近すぎない?「左大臣さまは私に気がある!」って女子(おなご)が勘違いしても当然よね?』


兄さまと出会った見知らぬ全ての女子(おなご)にムッ!と嫉妬した。

キリッ!と顔を引き締め、睨み付け


「いいえ。私は左大臣さまのおそばに仕えて、お世話をしたいだけです!子なんて望んでません!」


至近距離で睨みつけられたことに、驚いたように、スッと顔を後ろに離して、


「ふぅん。そっか。じゃあ、まず、そこの酔い覚ましを飲ませてくれ」


立ち上がり酔い覚ましの煎じ薬を持ってきて、(さじ)(すく)って口元へ運ぶと、兄さまは少し口を開き、(さじ)を待ってる。

その間、ずっと私から目をそらさないので、何だかやりにくい。


なぜジロジロ見てるの?

もしかしてバレてる?


カチャ!


ドキドキする!

緊張していつもより不器用になるっ!!


焦りつつ、(さじ)で茶碗から苦そうな茶色い薬を(すく)って何度も口へ運ぶ。


その度にニヤケながら少し口を開き、真剣な目で見つめる。


全部飲ませ終わると


「ウッ!苦い薬だった。阿波(あわ)も味見してみた?」


「いいえ。私はお酒を飲んでませんから。」


茶碗に(フタ)をして盆に戻し、顔を上げると、また頬の近くに顔があった。


「味見させてやる」


グイッ!


頬を鷲掴(わしづか)みにされ、引き寄せられたと思ったら、顔を斜めに傾け、兄さまの唇が唇を覆った。


っぅぅんっっ!!


思わず快感の声を漏らしそうになり、


ダメッ!!

反応しちゃっ!!

バレるっ!!


阿波(あわ)は初めてなんだから、口づけに反応しちゃダメっ!!


自分に言い聞かせる。


なのに、体の芯は潤み、ゾクゾクとした快感が広がる。

できるだけ、舌や唇を動かさないように、されるがままにしてる。


口の中を隅々まで、愛撫するように、荒々しく舌が動き回った。


ぅぅんっっ!!


気持ちいいという感覚と、初対面の女子(おなご)にこんなことするの?という不信感で、複雑な気持ちになった。


唾液を、舌を、何度も飲み込まれたような、長い口づけが終わり、兄さまが唇を離した。


ふぅっと息を吐き


「文はどこに出せばいい?内侍司(ないしのつかさ)阿波(あわ)宛てでいいの?」


えぇ??

文?・・・は、


「あ、あの、内侍司(ないしのつかさ)の女儒に(こずえ)という子がいるんですけど、彼女と仲が良いので、私はその、内侍司(ないしのつかさ)にいなくて、お使いで外出が多いものですから、(こずえ)宛てに文を送ってください。」


口づけの余韻でぼ~~~っっ!としてたけど、とりあえず思いつくままに答える。

苦しい言い訳だけど・・・。

大丈夫だよね?

バレてないよね?


それにしても、兄さまのいつもの女子(おなご)の口説き方ってこれ?

いきなり口づけするの?

バカなの?

粗野で、下品で、好色な遊び人の方法?


他の男性なら許せないし、一番嫌いなタイプ!!

手あたり次第の女子(おなご)を物色して一夜の遊びを楽しむ、好色浮気男!

信じられないっ!!


なのに、久しぶりの口づけに、ウットリとして、全身がとろけそうな快感に痺れた自分に腹が立った。


もっとして欲しい!!


とか、考えた自分が悔しい!


変装した自分である、阿波(あわ)にすら嫉妬した。


初対面のくせに!

あんなに愛されて!

私はずっと無視されてるのにっ!!

阿波(あわ)なんてキライっ!!


阿波(あわ)になんて二度とならないっ!!


一刻も早くここから立ち去らないと、兄さまに不満をぶつけて正体がバレそうなので、早々に立ち去ろうとスクッと立ち上がり、


「では、失礼します。また機会がありましたらその時は・・」


語尾を濁して、ペコリと会釈し、背中を向け、歩き出そうとすると、


阿波(あわ)は、男を知ってる?」


はぁっ??!!!

何その質問?

知ってるって何?


男性経験のこと?


えぇっ??!!

って、どう答えれば正解なの??


「えぇっと、二十歳(はたち)ですから。当然、知っておりますわ!」


そうよね?

阿波(あわ)は妖艶な大人の色気のある女性という設定だったし。

兄さまから頼りにされて相談されるような、しっかり者の女子(おなご)

だから当然、乙女じゃおかしい!


「何人?」


はぁ?不躾(ぶしつけ)ね!

(ちょー)個人的(プライベート)な事でしょ?!!


二十歳なら何人が正解?

わからないなぁ~~~!!!

グルグル考えを巡らせ


「さ、三人?ですかしら?」


振り向いて、兄さまの顔を見つめながら答えると、ニヤッと口をゆがめて笑い


「ふ~~~ん。そっか。じゃあ遠慮しなくていいんだな。また文を出す。(こずえ)宛てだね?」


「はい」


ゆったりと余裕の微笑みを浮かべて答え、しずしずと優雅に?大人の上品な仕草のつもりで、立ち去った。


雷鳴壺についてから


『あっ!!茶碗と(さじ)と盆を置いたままだった!』


大人の優雅には程遠い?って誰か言った??!!!

(その5へつづく)


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