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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)
389/505

EP389:伊予の物語「噤口の大臣(きんこうのだいじん)」 その7~黒幕の逆襲に遭い、伊予と竹丸は窮地に陥る~

全て上皇(とうさま)と伊勢が仕組んだのね!


「でも、商人たちは検非違使(けびいし)に捕まったわ!彼らがあなたのことを話せば、あなたは終わりよっ!」


伊勢はへの字口をもっと曲げ、口角を下げ、目を見開き『何て無知なの!』とバカにするような仕草で


検非違使(けびいし)庁が上皇に逆らうつもり?そんなことができるのかしら?」


「品物と商人という証拠があるわ!あなたと、商人と、密貿易貴族達のつながりが明らかになって、裁かれるわっ!!」


「たった四人の商人と唐渡の品物が証拠?ですって?フフンっ!消してしまえばおしまいよ!本当に証拠になると思っているの?」


ハッ!!


だから兄さまは口をつぐんだの?

証拠があるからって、上皇を裁く事なんてできないって知ってるから?

伊勢を脅し、密貿易をとめることしかできなかったの?

(おおやけ)にして捕まえれば証拠は消されるから?


最高権力がどんなものか、ようやく身に染みて分かった気がした。


「分かった。あなたのことは誰にも話さないから、竹丸を解放してちょうだい。」


伊勢は今度は口角を無理やり上げ、目を細めて張り付いた仮面のような作り笑いを浮かべ


「あら?なぜ私がそんなことをするの?商人たちと証拠とあなたと竹丸を殺してしまえば、時平も失脚し、思い通りに事が運ぶのに?」


言い放った直後、伊勢が突然


「・・・っう゛っっあ゛ぁっっ」


(うめ)いたと思ったら、伊勢の背後から太い腕が伸び、頸を絞め挙げた。


頸を絞め挙げながら、刀子を頬に当て、影男(かげお)さんが伊勢に


「竹丸を放せ。さもないとお前の自慢の顔に傷をつける。」


ガッチリ後ろから抱え込まれ、腕で頸を絞められつつも、身じろぎし


「わ、分かったわ。竹丸を解放しなさいっ!!いいのっ!早くっ!!」


頸に押し当てていた刃物をどけ、伊勢の従者は竹丸を解放した。

と同時に影男(かげお)さんも伊勢の頸から腕を放した。


喉を押さえ、影男(かげお)さんを睨み付けながら伊勢が


「どこから現れたのっ!お前は、何なのっ!」


影男(かげお)さんが肩をすくめ


「伊予殿の護衛だ。これからは手を出す前に、伊予殿には強力な後ろ盾があることを思い出すといい。」


悔しそうに睨みつけながら従者に向かって


「行くわよっ!」


命令すると、伊勢と従者は立ち去った。


ホッ!!


として、急に全身から力が抜け、足がガクガク震えだして、座り込みそうになった。


影男(かげお)さんが素早く肩を抱いて、支えてくれ


「あなたの新しい護衛、(こずえ)が知らせてくれたんです。」


影男(かげお)さんのそばに、茶屋で見かけた小袖・腰布の庶民姿の十二歳ぐらいの若い娘が立ってた。


あれ?

この子、どこかで見たことがある?!


あっ!!!


内侍司(ないしのつかさ)女儒(めのわらわ)っ!!ねっ!!?

私をずっと見張ってたのはあなただったのねっ!!!」


(こずえ)と呼ばれた少女がペコリと頭を下げ


「よろしくお願いしますっ!!あなたを見張って、危険があると判断したら、影男(かげお)さんに知らせる役目を仰せつかっております!普段は女儒として内裏に勤め、あなたのそばにいますっ!!」


ハキハキと答えた。


目がクリっとして丸く、目と目の間が広くて、小さい団子鼻が真ん中にチョンとあり、そのすぐ下に小さい口がある。

そう言えば肩幅も広く胸板も厚く、手足はガッシリして、力持ちで身のこなしも素早そう。


「こちらこそよろしくっ!!ありがとう!影男(かげお)さんに知らせてくれてっ!あなたのおかげで助かったわ!」


ペコリと頭を下げてお礼を言った。


 影男(かげお)さんと(こずえ)が一緒に内裏に戻り、竹丸が馬の後ろに乗せてくれて、内裏まで送ってくれると思ったのに、堀河邸に到着した。

不思議に思って


「なぜ?朱雀門で下ろしてくれればいいのに」


竹丸は不機嫌そうに口を尖らせ


「無事、表向きの窃盗犯を逮捕できたので、若殿(わかとの)を迎えに検非違使(けびいし)庁に行きます。牛車を出しますから、牛車に乗って待つなら、二人きりで会わせてあげます。」


ツンと顔を背けながら言い放った。


ドキッ!

二人きりで会えるのっ?


胸を高鳴らせ、用意してくれた網代車に乗り込み、検非違使(けびいし)庁への道を揺られながら、


何を話そう?

もう一度恋人にして?

あなたが好き?


ううん。

まず、『傷つけてゴメンナサイ』だよね。

あなたと付き合ったことを後悔なんてしてないし、

この先もずっと、あなただけが好き


ちゃんと言わなきゃ!

(その8へつづく)

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