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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)
387/505

EP387:伊予の物語「噤口の大臣(きんこうのだいじん)」 その5~伊予、真犯人を捕らえる作戦を思いつく~

竹丸の文の続きを読むと


『最後に、若殿(わかとの)の近況を報告します。

相変わらず検非違使(けびいし)庁に勾留されて、事情聴取されているそうですが、質問に答えず黙秘しているそうです。

このまま窃盗犯にされても何も言わないつもりでしょうか?

宇多帝の姫と別れて落ち込んでたのは事実ですし、もう何もかもどうでもよくなって、自暴自棄になってるんじゃないでしょうか?

もしホントに若殿(わかとの)が、黙ったまま犯罪人として裁かれ、自分の将来や家族を見捨てたりしたら、私は姫の事を一生恨みます。

ただでさえ、若いころの若殿(わかとの)を苦しめ、姫を手放す決心を固めたってときに、たぶらかして(もてあそ)んだ上に、最後は傷つけて捨てましたよね?

それに加えて、若殿(わかとの)の輝かしいこの先の未来まで奪ったとなれば、あなたのことは絶対許せません!』


ズキッ!!


いつにもまして、鋭い(やいば)のような言葉が刺さる。


そんな風に思われてたのね?


傷つけるつもりは無かったって言っても信じてくれないかな?


兄さまが勧めるままに、大人しく左中将(さちゅうじょう)さまと結婚していればよかったの?


いいえっ!

そうだとしても、落ち込んでる暇はないわっ!!

今は凹んでる場合じゃないっ!!

私のせいで、兄さまが無言を貫き、状況が悪くなるなら、私が何とかしなきゃっ!

兄さまの無実を証明する手段を考えなきゃっ!!


う~~~ん、・・・・・・


ハッ!


もしかして?!!

それなら、・・・・


ある考えがひらめいた。


竹丸に


『こんな作戦はどうかな?まず・・・・・』


と作戦の内容を記した文を送ると、すぐに返事がきて


『よさそうですね!早速、巌谷(いわや)と相談してその手で行きましょう!』


数日後、竹丸からの文で


『全ての手筈(てはず)が整いました。いよいよ今日、(とり)の刻一つ(17時)に計画を実行します。』


との知らせがあったので、私も水干、括り袴、に後ろで一つに髪を束ねた少年風従者姿で、計画実行場所へ出かけることにした。

(もみじ)更衣へ報告し、外出の許可をもらうと、検非違使(けびいし)庁に寄り道し、巌谷(いわや)さんを呼び出してもらった。

待ってる間、周りをキョロキョロ見回し


『この建物のどこかに、まだ、兄さまが勾留されてるのよね?大丈夫かな?体調崩してたりしてない?食事とか睡眠とかちゃんととれてる?計画が上手くいけば、兄さまの無実は証明できるから、それまで待っててね!』


意気揚々、やる気満々で意気込んでたけど、


ん?


でも、私が気づいたのに、兄さまが気づかないってことは無いよね?


もしかして、兄さまは全て知ってて、黙秘してるの?

犯人を知ってて黙ってるの?


そうだとしたら、なぜ?


巌谷(いわや)さんが姿を見せ、私が同行すると告げると、太い眉を上げ驚いたように目をギョロッとさせ


「まぁいいでしょう。」


巌谷(いわや)さんは、田舎から出てきた富豪の豪族が着るような、ちょっと流行おくれの色柄の狩衣・烏帽子姿。

部下の検非違使(けびいし)たちも田舎豪族の従者のいで立ちに扮装して現場の西市へ出かけた。

巌谷(いわや)さんの馬の後ろに乗せてもらって私も同行する。


西市の西端の大通りにつくと、商品を一時保管する倉庫や休憩のための茶屋、食事処、が立ち並ぶ東側に比べて、西側は枯れた雑草が生い茂る野原に面していた。

その大通りの中間あたりのちょうど茶屋の真向かいには、柱と屋根だけがある、臨時販売場所(スペース)があり、誰でも売りたい品物を持ち寄って売ることができた。

取引現場の販売場所の真向かいにある茶屋は、軒下に長椅子を出して、そこで客に茶を飲ませたり、中では茶葉を販売してたけど、『茶葉』は全て唐渡(からわたり)で高級品。

もちろん庶民は簡単に飲むことはできないハズ、だけど、その茶屋には、それぞれ別の長椅子に座り茶を飲む女性客が二人もいた。

一人は二十代半ばの壺装束(つぼしょうぞく)市女笠(いちめがさ)の裕福そうな女性でこちらは納得だけど、もう一人の小袖(こそで)姿の庶民の若い娘で、辺りを見回しながら、チビチビ茶を飲んでる姿は違和感たっぷり。


私も茶屋でお茶でも飲んで現場を見張ろうかしら?と一瞬思ったけど、辺りは薄暗いし、茶屋は店を閉める準備を始めてた。

だから、その茶屋の北側にある軒下の(たきぎ)の山の後ろに隠れて現場を見張ることにした。

取引時間まではまだ四半刻(30分)ほどある。


「ここで見張るんですか?」


間の抜けた声がし、竹丸がいつの間にか、後ろに立ってた。


竹丸はいつものヨレヨレの水干・括り袴・萎え烏帽子の従者姿。

ぷっくりした頬に、細い二重の目、餅のように白い肌、をチラ見しつつ


「あんたは犯人逮捕に協力・・・・できないよね?腕力がアレだし。」


さんざん恨み事を言われたせいでついつい言葉がキツくなる。


竹丸も(たきぎ)に身を隠すようにし、


「不幸の元凶の姫には言われたくないですねっ!!喧嘩(けんか)してても仕方ないのでとりあえず、作戦の成功を祈りましょう。」


ムッとしたように呟く。


ウンと頷いてひとまず同意した。

(その6へつづく)

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