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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)
386/473

EP386:伊予の物語「噤口の大臣(きんこうのだいじん)」 その4~左大臣時平、連続窃盗犯の疑いをかけられる~

はぁ?

連行って??!!!!


「えぇっ!!なぜなのっっ?逮捕じゃないわよねっ!?連行ってなぜ?」


桜がゴクリと喉を鳴らして息を飲み込み、


縫殿寮(ぬいどのりょう)で聞いた噂によると、左大臣様に連続窃盗犯の疑いがあるんですって!」


「えぇ?疑い?その程度で連行できるものなの?要人(ようじん)なのに?」


桜がさぁ?と肩をすくめ


「詳しくは知らないっ!!私が聞いたのはそれだけよっ!!」


あっ!!

竹丸からの文っ!!

そのことについて書いてあるのかもっ!!


私の予想は的中し、文を開くと竹丸の急いで書いても丸っこい特徴的な文字が長々と書き付けてあった。


『伊予どのへ

あなたとは二度と口もききたくないと思っていましたが、若殿(わかとの)の失脚の恐れがある今、(わら)にもすがる思いで、あなたに現状を報告します。

若殿(わかとの)を救う手段があるなら教えてください!

もちろん私も協力しますし。

というか、若殿(わかとの)が失脚すれば食い扶持(ぶち)を得る手段がなくなるし、弟君に乗り換えるという手もあることはありますが、何たって若殿(わかとの)が一番の出世頭ですし、今や天下無敵の左大臣だし、この先、美味しいことだらけで人生楽勝っ!!ウハウハだ!って矢先(やさき)に、こんな事件が起きるなんて、全くついてないなぁ~~、ったく、何やってんだよぉ~~としか言いようがありませんっ!!・・・・・・』


って愚痴(ぐち)ってばかりで肝心の状況説明は?

数行に渡る不運を嘆く愚痴(ぐち)と、兄さまへの悪態を飛ば読みし、イライラしながら読み進めるとやっと現状報告になった。


『今朝、朝政(あさまつりごと)が終わった途端、朝堂院(ちょうどういん)応天門(おうてんもん)で待ち構えてた検非違使(けびいし)たちに若殿(わかとの)は捕えられ、検非違使(けびいし)庁に連れて行かれました。

逮捕ではなく事情聴取ということですが、若殿(わかとの)検非違使(けびいし)庁に勾留され事情聴取を受けてます。

知り合いの巌谷(いわや)という検非違使(けびいし)庁の役人に聞いたところによると、若殿(わかとの)が近頃訪問した三人の貴族たちの屋敷から、高価な品物が十数点盗まれたらしいです。

それも若殿(わかとの)が訪問した後の当日または翌日だそうです。

三人の貴族には若殿(わかとの)が訪問したこと以外の共通点は無く、盗難にあった品物はことごとく若殿(わかとの)に見せ説明した品物だったそうです。

なぜ若殿(わかとの)が貴族達を訪ねそれらの品物を見せてもらったのか?の理由は知りません。

ちなみに、盗難に遭った貴族は、源佐値(みなもとさね)源喜舞(みなもとよろこぶ)藤原有紗根(ふじわらありさね)です。』


えぇ??!!


源佐値(みなもとさね)って、昨日私も訪問したけど??!!!


じゃあ盗難に遭ったのも昨日ってことね?


まさか、あの、唐渡の陶磁器?

どれも高級品だし、兄さまも見せてもらってたみたいだし!


竹丸の文の続きを読む


『もし、帝の耳に入れば、若殿(わかとの)は左大臣の辞任を迫られるかもしれません!

疑いだけでも不名誉な事でしょ?

もし犯人だなんてことになったら、絶~~~~対っ再起不能でしょ?

あぁ~~~!転落人生一直線だぁ~~!!

私は何も悪くないのにっ!!

こうなったら宇多帝の姫が持てるコネを全部使って若殿(わかとの)を救ってくださいっ!!

四郎様に色仕掛けでも、宇多上皇に色仕掛けでも何でもいいからお願いしますっ!!


竹丸』


はぁ~~~~。

相変わらず自分の心配ばっかりで子供っぽい早合点(はやがてん)

確かに犯人と決まれば、左大臣はクビになる?か辞任を迫られるでしょうけど、兄さまはケチな窃盗をする人じゃない!

しかもバレバレのっ!!

やるならもっとバレないようにするでしょ?


って、それはさておき、兄さまは完全に無実なので、じゃあ、誰が、何のために盗んだの?

兄さまが疑われるように、わざわざ、訪問直後に盗んだの?

それとも偶然?


私で役に立つなら、忠平(ただひら)様でも宇多上皇(とうさま)にでも懇願だってするけど、

・・・いや!まず!兄さまの無実を晴らすべく、自力で窃盗の真犯人を捕まえるしっ!!

色仕掛けしろ?なんてっ!!

バカにするにもほどがあるわっ!!!

まぁ、最終的に、他に何も方法が無い場合、最悪、考えてみる、ことにして、


まずは、犯人の手掛かりを得るべく、思いつく限りの質問を書き出し、竹丸に送ることにした。


次の日の夕方、竹丸からの返事の文を開くと、


巌谷(いわや)や四郎様にあたって、できる限りの答えを入手しました。

まず、「訪問先の貴族の名前と役職、若殿(わかとの)との関係」ですが、


源佐値(みなもとさね)、信濃国守(くにのかみ)左近衛(さこのえ)(ごんの)少将(しょうしょう)(けん)五位蔵人(ごいくろうど)、関係は不明

源喜舞(みなもとよろこぶ)、越前国守(くにのかみ)、関係は不明

藤原有紗根(ふじわらありさね)、近江国権守(ごんのかみ)左衛門督(さえもんのかみ)、関係は不明

藤原仲平(ふじわらなかひら)、紀伊国権守(ごんのかみ)、兼中宮大夫、弟

源順充(みなもとよりみつ)、前肥前国守(くにのかみ)、関係は不明

藤原嗣影(ふじわらつぐかげ)、前伊勢国権守(ごんのかみ)、関係は不明

・・・・・・・・・』


こうしてみると、国守(くにのかみ)権守(ごんのかみ)(すけ)、などの国司を務めた経歴の貴族が多い。

なぜかしら?

兄さまとの関係は不明が多い。

文の続きを読む


『次の質問「盗品の目録(リスト)」ですが、

陶磁器、香木、薬草、茶、だそうです。』


源佐値(みなもとさね)さまの陶磁器は唐渡(からわたり)だったし、香木、茶、は異国でしか手に入らないし、高値がつく薬草は唐物がほとんど。

つまり、盗品はほぼすべて、異国産のものということね?


異国産の品物、と、信濃国、越前国、近江国、紀伊国、肥前国、伊勢国、との関係は?


越前国の名産品と言えば、(うるし)の木?と(うるし)塗りの工芸品。

紀伊国も確か、そう!

近江国は淡海(おうみ)(琵琶湖)で淡水真珠がよく獲れて名産品のハズ!伊勢国・・・と肥前国は海産物?

もっとわからないのは信濃国!なぜ?険しい山々の中に火山があるってことは知ってるけど!

(その5へつづく)

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