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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
338/461

EP338:伊予の事件簿「応天門の彗星(おうてんもんのほうきぼし)」 その4

そういえば思い出した!

蝋山(ろうやま)さんの顔はしわが多い褐色なのに、鼻の頭と頬だけは赤かったなぁってそこが印象的だった。


途中おしゃべりしながら歩いてると、蝋山(ろうやま)さんが


「宴の松原を探検しようだなんて、深窓(しんそう)の姫君にしては活発だねぇ。」


「ずっと屋敷の奥に閉じ込められて育ったんです。

幼いころから屋敷が私の世界の全てだったので、今、広い、未知の世界を自由に歩き回れることが嬉しくて!思う存分楽しんでるんです!」


ウキウキして答えると、蝋山(ろうやま)さんは微笑みながらも真面目な顔で


「好奇心は大事だが、行き過ぎた好奇心は命取りになるよ。宴の松原は十年前に鬼がでて、女性が殺された場所だと知っていたかね?」


知らなくてビックリして、それ以来、無知な冒険心をちょっと引っ込めよう!

って教訓になった。


その蝋山(ろうやま)さんが応天門で何者かに殺されたの?

バラバラ殺人事件?

身元を隠すために死体を切り刻むことが多いのよね?

それなら真っ先に顔を持っていくと思うけど

顔は残ってたって言うし。


う~~~~ん・・・。

あっ!!!

重くて運べないから小さくして少しずつ運ぼうとした?

まず上半身だけ運んだ時点で、誰かに見つかったのかな?

それなら犯人は非力な女性?


謎が多いっっ!


でも、知ってる人が殺されるのって(へこ)む。

人はいつか死ぬんだって思い知らされる。


その日から数日間は何事も無かった。

蝋山(ろうやま)さんの死因についての噂も聞かず、青い光の原因も分からないまま。

それよりもっと気になることがある!

応天門の事件以降、影男(かげお)さんの姿がずっと見えないこと!


もし、応天門の変で首謀者とされた(ともの)善男(よしお)の子孫?で、蝋山(ろうやま)さんの殺害にも関係してたりしたらどうしようっ!!!


心配なのに姿を見せてくれずヤキモキしてた。


 お昼頃、お使いで内膳司(ないぜんし)にお願いして作ってもらったお菓子を、取りに行こうとお使いに出かけた。

その途中、内裏を北側の朔平門(さくへいもん)から出て、西へ向かって歩いてると、突然、後ろから襲われた。

頸に腕を回され、首を絞められ、気を失ったっぽい。


まったく!

同じ手に何回引っかかるの??!!


自分に突っ込みたくなるけど、気が付くと、辺りは真っ暗で、冷たい風が頬にあたる。


ここはどこ?


塗籠(ぬりごめ)のような屋内だとしても、窓や扉は開いた場所だってことは分かった。


目も口も解放されてるけど後ろ手に縛られてて足も(くく)られて、座らされてて立ち上がれない。

辺りを見回すと、真っ暗でよく見えないけど、壁も天井も柱も床も木目の残った加工されてない板でできてた。


「あっ!!ほら、あそこをみてごらん。」


声が聞こえた方向に体ごと(ひね)ると、少し離れた横に泉丸の姿があった。

もう一回体を(ひね)って、モゾモゾと足を動かし体ごと後ろに振り返り、開け放された妻戸から夜空を見上げる。

灰色の筒袖から伸びる白い手の指さす方を見ると、上方に扇状に広がった光の尾を持つ星が輝いている。


「わぁっ!!尾がついた星?ほうき星ね?!凄いっ!!!キレイッ!!!」


あ?!

これを夢で見たのね?

パチパチ!と手を叩けなかったけど、心の中はそーゆー気分。


拉致され、全身を拘束されてる状況なのに、見るとテンションが上がる彗星(すいせい)の威力ってスゴっ!!


筒袖の持ち主が誘拐犯・泉丸だったことにショックだけど。

幻想的(ロマンチック)な彗星を一緒に眺める相手が、よりにもよって最大の敵だなんて!

信じられない!

最っっ悪っっ!!

大舎人(おおとねり)に変装したのか泉丸は灰色の直垂(ひたたれ)括袴(くくりばかま)姿だった。


縛られたまま膝立ちで、空中に張り出した廊下にでて、欄干(らんかん)から下を覗くと、瓦屋根がまっすぐに続く、『夢で見た光景』が広がっている。

ってことは


「ここは応天門の二階?私を拉致って連れてきたの?いつもの兄さまへの嫌がらせ?」

(その5へつづく)

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