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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
332/505

EP332:伊予の事件簿「撫子の兵法(なでしこのへいほう)」 その6

忠平(ただひら)様が企む


借刀殺人(しゃくとうさつじん)の計』


はおそらくアレだけど・・・・。


ふんっ!!

こんなことで兄さまと私の仲を引き裂こうなんてっ!!

甘いのよっ!!

返り討ちにしてやるっ!!


怒りに燃え、直接対決すべく忠平(ただひら)様に文を書き、一対一の決戦(タイマン)を申し込んだ。


でも女子(おなご)一人で乗り込むと力づくでどうにかされても困るので、影男(かげお)さんを連れて行くことにした。


後日、指定された日に、その決戦の場所、枇杷(びわ)屋敷に乗り込んだ。

門のそばには堂々と枝を広げ、隙間なく葉を茂らせている枇杷(びわ)がそびえてた。

自信満々に計略の達成を誇ってるであろう忠平(ただひら)様の姿と重なって、枇杷(びわ)の木さえ憎らしく見えた。


さっそく主殿に通されると、高坏(たかつき)に紙をしいた上に、茶色い一寸(3cm)四方の四角い菓子があり、それをつまみながら忠平(ただひら)様が待ってた。

餅を油で焼いてカリカリにして膨らませたうえに、塩を振ったような見たことも無い菓子。

バリバリと音を立ててかみしめながら


「割と美味しいよ!食べてみるかい?」


一つつまんで差し出すけど、そんな呑気な事はしてられないっ!!


こっちは怒り心頭なのっ!!


竹丸がいればホイホイ頭を下げて受け取ったでしょうけどっ!!


頭に血をのぼらせ、プンプンしながら


「要らないっ!!あなたからなんて、びた一文受け取るもんですかっ!!」


兄さまそっくりの仕草で眉を上げ、面白そうに驚いた様子で


「何?何があった?なぜそんなに怒ってる?影男(かげお)まで連れてきたってことは体力勝負か?」


怒り散らかしてる私を冷やかす。


「あなたの企みなんてとっくにお見通しですからねっ!!兄さまと私の仲を引き裂こうとしても無駄よっ!!」


肩をすくめ


「あぁ、あの臺与(とよ)と兄上が逢引きして、目合(まぐわ)ってたのを目撃した件か?あれに私がどう関わっていると?」


私はエヘンと咳払いし、忠平(ただひら)様を指さし睨みつけた。


「あくまでシラを切りとおす気?じゃあ教えてあげる。

あなたはまず、私に


臺与(とよ)に恋してて将来妻にする』


と言って夢中であることを印象付け、私には気のない素振りをする。

そして、臺与(とよ)には


『お前が兄上を想っていることはわかっている。兄上との逢瀬を手引きしてやるから、長年の想いを果たせ。私は二番手でもいい。お前をずっと待ってる』


とかなんとかうまいこと言って臺与(とよ)と兄さまの逢瀬を準備した。

臺与(とよ)はもちろん兄さまが好きだから言うことを聞いた。


でも兄さまをどうやって操ったのか?が最大の疑問だった。

兄さまは幼いころから私に夢中だし、浮気すれば私の心が離れることをモチロン心配してる。

だから生半可な説得には応じなかったはず。


でも、私とあなたと兄さまの三人だけの秘密でもあり、微妙な権力バランスを握る鍵である宇多上皇を引っ張り出せば、兄さまの弱点を握り操ることができる。


あなたは、


上皇(とうさま)に私の居場所を教える』


と兄さまを脅したんでしょ?


もし、兄さまが臺与(とよ)と寝る事を拒否すれば、ただちに私が兄さまにずっと(かくま)われていたこと、今宮中で伊予と言う名の女房として仕えていることを上皇(とうさま)暴露(ばくろ)すると。


茶々(ちゃちゃ)のことを伊予と上皇に信じさせて(だま)したことも暴露(ばくろ)するつもりでしょ?


上皇にバラされ、私が上皇の妃にでもなれば、私と一生会うことはできないけど、あなたが私を慰めて、恋人(モノ)にしても最悪、恋人を共有するだけだと説得されれば、兄さまはその条件を飲むでしょう。


兄さまにとって最悪なのは私に他の恋人ができることではなく、一生、自由に逢う事ができなくなることだから。」

(その7へつづく)

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