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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
331/505

EP331:伊予の事件簿「撫子の兵法(なでしこのへいほう)」 その5

影男(かげお)さんが


吉備彦(きびひこ)はその公卿から阿波(あわ)を奪い取ろうとしてるんです。吉備彦(きびひこ)は女狐を篭絡(ろうらく)し、手中に収めているので手駒として使う事ができます。ついでに現在、吉備彦(きびひこ)阿波(あわ)には気のない素振りをし、女狐に夢中になっていると見せています。」


元佐(もとすけ)さんがポンと手を打ち


「ではまず吉備彦(きびひこ)阿波(あわ)に対して『声東撃西(せいとうげきせい)の計』を使っています。『東で声を発してそちらにいると見せかけ、実際は西を撃つ戦術。陽動作戦の一種。』です。吉備彦(きびひこ)は女狐を狙っているとみせかけ、本当の狙いである阿波(あわ)に悟られないようにしています。」


ふぅ~~~ん。

わざわざ名付けるほどの計略?


ハッ!

思いついて


吉備彦(きびひこ)が女狐を説得した方法が分かったわ!そもそも女狐はその公卿が好きだったの。でも吉備彦(きびひこ)と付き合ってるから、吉備彦(きびひこ)の前ではその気持ちは隠してたと思う。それを吉備彦(きびひこ)が知らないふりをして利用したんだとしたら?」


元佐(もとすけ)さんは私と影男(かげお)さんが、感心して傾聴してるのに気をよくしたのか、声を高くし一段と張り上げ、


「わかりました。吉備彦(きびひこ)が女狐に公卿と関係を持たせる説得に使ったのが、『明修桟道(めいしゅうさんどう)暗渡陳倉(あんとちんそう)の計』でしょう。これは『大々的に「蜀の桟道」を修理しながら、その裏で密かに軍に陳倉を経由させて関中の章邯を奇襲した韓信の故事にちなみ、偽装工作と奇襲をあわせる戦術』です。吉備彦(きびひこ)は女狐が公卿を想う恋心に気づき、『そこまで好きなら添い遂げさせてあげよう』とかなんとか言って女狐と公卿を二人きりにする機会を与えたんじゃないですか?吉備彦(きびひこ)はあくまで女狐のためを想って自分を犠牲にするという演技をしたのでは?でも実は、公卿の浮気を阿波(あわ)に見せつけ、揉めさせて別れさせるためだった。本当の目的は女狐にも知られないようにした。まさに大々的には涙を呑んで恋人の女狐を諦め、その裏で密かに公卿を浮気させ、阿波(あわ)から引き離そうとした。う~~ん。よくできてますっ!!」


なるほどぉ~~!

これはちょっと計略っぽいっ!


でも・・・・それだけじゃ、なぜ兄さまが臺与(とよ)と浮気したのか?がわからない。

だって、忠平(ただひら)様が臺与(とよ)を説得できたって兄さまにその気がなければあんなことできないし。


吉備彦(きびひこ)は公卿をどうやって説得して女狐と関係を持たせたの?だって、公卿には熱愛する恋人の阿波(あわ)が既にいて、将来は妻にするって誓って、少しでも傷つけないように十何年間も、まるで壊れ物を扱うように大事にしてきたのに!」


元佐(もとすけ)さんは目をキラキラさせ、勢い込んで


「それは簡単ですっ!『ある場所であなたを熱望する美女が待ってる』と伝えただけですっ!!公卿はそもそも好色で、阿波(あわ)の他にも恋人がほしかったんですよっ!!『英雄色を好む』ですっ!!身分も権力も銭もある公卿ともなれば、妻も恋人もたくさん持てますっ!!より取り見取りでしょっ!!っっかぁ~~~っ!!いいなぁ~~~!憧れるなぁ~~~~っっ!!」


ヨダレをたらさんばかり。


はぁ~~~~。

ため息をつく。

あっそっ。

あんたもそーゆー男性(ひと)なの。

あきれ果て、思わず白~~~い細目(ほそめ)で見てしまう。


影男(かげお)さんが腕を組み顎に手を添え


「なるほど。で、公卿に裏切られ、傷ついた阿波(あわ)を慰めることで親密になり、吉備彦(きびひこ)は見事、阿波(あわ)を獲得するというわけですね。」


元佐(もとすけ)さんがウンウンと頷き


「それは『趁火打劫(ちんかだこう)の計』です。『敵の被害が大きいときは、勢いに就いて利益を取る』簡単に言えば『火事場泥棒』ですねぇ!」


はぁ?

忠平(ただひら)様は兄さまの浮気現場を見て傷ついた私を慰めるうちに深い関係になろうと目論(もくろ)んでる?ですって?

確かに、過去に落ち込みすぎたり、凹みきったときには、慰めてくれた忠平(ただひら)様に口づけされるがままのこともあったし、兄さまを守るための証拠と引き換えに色仕掛けを(ほの)めかされたこともあったけど。


もしホントにそうなら、気をつけなくっちゃ!

よしっ!!

気を引き締めた。


結局、兄さまが臺与(とよ)と関係を持った理由がイマイチわからないまま元佐(もとすけ)さんの屋敷を去ることになった。


それ以外の計略?は理解できたので、適当に元佐(もとすけ)さんにお礼を言うと


「またいつでも相談に乗りますぅ~~~~っっ!!私を頼ってくださいねぇ~~!大学寮へも遊びに来てください!!普段はそこにいるのでっ!」


門まで来て、両手を振り回しながら見送ってくれた。

牛車は茶々(ちゃちゃ)只野(ただの)が乗って行ってしまったので、歩いて帰ろうと思ったけど、途中まで歩くと影男(かげお)さんが馬を借りてきてくれたのでそれに乗って大内裏へ帰った。


馬の背で揺られウトウトしながらも兄さまをその気にさせる方法を考えたけど、なかなか思いつかない・・・・ので諦めかけた。

う~~~ん。

敵を操りたかったら、敵の弱みを握ればいいのよね。

確か


(かれ)を知り(おのれ)を知れば百戦(ひゃくせん)(あやう)からず』


って孫子の言葉もあったわよね。


兄さまの『弱み』って何?

その弱みで兄さまを強請(ゆす)れば、無理やり臺与(とよ)と関係を持たせることもできる。


弱みって・・・私?

私と兄さまと忠平(ただひら)様が知ってる弱みになりそうなことと言えば・・・・・もしかしてっ!!!


決定的なその方法を思いつき、確かこれって兵法にあった


借刀殺人(しゃくとうさつじん)の計』


だよね?!と思い至った。

つまり、「刀を借りて人を殺す。自分の手を汚さない」ってこと。

(その6へつづく)

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