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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
328/505

EP328:伊予の事件簿「撫子の兵法(なでしこのへいほう)」 その2

顔をのぞかせた臺与(とよ)は、少なくとも上半身の肌は(あらわ)で、形のいい、茶碗のように盛り上がった、白い、片方の乳房が、兄さまの背中越しに見えた。

臺与(とよ)が開いた脚の間に、兄さまが、さっきまで抱き合っていたかのように膝をついている。


何?

私は何を見てるの?

何が起こったの?


二人で?

何をしてたの?

嘘でしょっ???!!!!


茫然(ぼうぜん)として何も言えず立ちすくんだままの私を見た臺与(とよ)


「あら?伊予さん?フフフッ!いいところにいらしたわね?ご一緒にどう?あなたも大納言様の元恋人でいらしたでしょ?もちろん忠平(ただひら)様も一緒に楽しみましょうっ!!フフッ!!」


上気した表情で、潤んだ唇に微笑みを浮かべ、艶っぽい声で話しかけた。

ほの紅く染まった頬と、目じりの下がった瞳にかかる睫毛が、官能の余韻をおび濡れたような漆黒に輝き、二人の情事が濃厚で親密だったのを物語っていた。


はぁ??!!!

一緒に?って・・・・

どーゆー意味?


兄さま?

嘘でしょ?

そんなことしてないわよね?

もし・・・そうだとしても、

何か理由があるんでしょ?


言い訳してくれることを祈りながら必死で見つめると、兄さまは眉根を寄せて目を伏せ、蒼白で、硬い表情のまま、床の一点を見つめ続けている。

目を合わせてもくれない。


忠平(ただひら)様が吐き捨てるように


「伊予っ!ここから出ようっ!!汚らわしくて気分が悪いっ!吐き気がするっ!!昼間から?信じられないっ!!何を考えてるんだ!まるで畜生だなっ!!」


私の肩を抱いて、地獄のようなそこから連れ出してくれた。


大内裏へ帰る方向へ、トボトボ歩く私に、忠平(ただひら)様が苛立ったように


「全くっ!!なんて奴らだっ!!臺与(とよ)があそこまで放埓(ほうらつ)女子(おなご)だとは思わなかった!!昼間から、人の屋敷で、だなんて!しかも呼び出しておいて、他の男と目合(まぐわ)うだなんてっ!!あんなにふしだらな女子(おなご)だったとはっ!!信じられないっ!」


さっきからずっとこの調子で怒りを吐き出し続けてるけど、私はまだショックから立ち直れず、一言も発せず、黙ったまま歩き続けた。


「なぁ?伊予?大丈夫か?兄上にも困ったものだな。まだ女遊びの癖が抜けて無いようだ。伊予と付き合う前はあれが普通だったらしいから、昔を思い出したんだろ。まぁ好色な(たち)の男なんてあんなもんさ。一人に期待しすぎると酷い目に遭うってことがわかっただろ?」


ムッ!


としてキッ!と睨み付け


忠平(ただひら)様っ!!何か企んでるでしょっ!私が兄さまに愛想をつかすようにっ?!あなたが仕組んだのねっ!!」


そーよっ!!

兄さまがあんなことを私に見せるわけないっ!!

おかしいと思ったのよっ!!

絶ーーーーーっ対!忠平(ただひら)様の悪だくみよっ!!


「秋の七草だって、私が嫉妬するようにってわざと臺与(とよ)の名前を書いて私に送り付けたんでしょ?撫子(なでしこ)色の鈴だって、『魔除けの鈴としてずっとそばにいたい』とか言って、まだ私をどうにかしようとしてるんでしょっ!!だからっ、兄さまをだましてあんなことをさせたのねっ!!」


忠平(ただひら)様が心底驚いたような表情で、口をポカンと開け


「はぁ?そんなわけないだろっ!!薄紅色の撫子(なでしこ)は私が好きな花だから、好きな女子(おなご)ができるといつもそれに(たと)えるんだっ!!伊予だけを撫子(なでしこ)(たと)えたわけじゃないっ!!勘違いするなっ!うぬぼれもいい加減にしろっ!!お前のことなんてとっくに忘れてるさっ!!

それよりも臺与(とよ)に裏切られたことがやり切れないんだっ!彼女ははじめて生涯を共にしようと誓った相手だったのにっ!!彼女の悲惨な過去も、男癖(おとこぐせ)が悪いところも全て受け止めて許し、愛したのにっ!!!こんなにも、こんなにも早く裏切られるなんてっ!!!」


泣き出しそうな、切なそうな表情で吐き捨てた。


そうだったの?

まだ私のことを好きだと思ったのは勘違い?

恥ずっっ!!

うぬぼれが過ぎたわっ!!

反省。


「じゃあ、信じた恋人に裏切られたという立場は同じね?でも、臺与(とよ)の本当の狙いは兄さまだって知ってた?それでもいいの?好きなの?」

(その3へつづく)

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