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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
323/505

EP323:伊予の事件簿「魔性の霊鈴(ましょうのれいりん)」 その7

影男(かげお)さんが真っ直ぐ前を見ながら


臺与(とよ)はもういい。やめにします。私には始終お守りが必要な姫がいるのでそっちを優先します。」


はぁ?

誰のこと?

まいっか。


単調な振動に、いつものように、眠くなってウトウトしてたら内裏に着いた。


馬から降ろしてくれる時


「また添い寝しますか?」


三白眼の黒目を大きくして、少し目を細め微笑みを浮かべた。


まだ寝ぼけてたけどウウン!と首を横に振り


「いい!一人で寝るから。じゃねっ!ありがとうございました!また明日っ!」


手を振って別れた。


ん?

結局、影男(かげお)さんは臺与(とよ)にフラれたってこと?

忠平(ただひら)様に負けて?

いいの?

臺与(とよ)に夢中になってたんじゃなかったの?

そんなに早く切り替えられるもの?

モテる女子(おなご)を好きになると大変だなぁ~~。

恋敵(ライバル)が多くて。


 それからまた数日は、いい意味でも悪い意味でも何事もなく過ぎた。

兄さまが逢いに来ることも無いって意味では最悪だけど。


一人で自分の(へや)で何度も寝がえりをうちながら御簾越しの月を見てた。


「伊予、お客様よ?通す?」


(さくら)の声に


「いいっ!出ていくからっ!」


素早く起き上がって、小袖(こそで)の乱れを直し急いで廊下に出ていった。

辺りを見回すと、直衣姿の背筋の真っ直ぐな殿方、

・・・・ではなく、女房姿の臺与(とよ)が立ってた。

ペコッと頭を下げ


「伊予さん?少し話しません?」


使われてない梅壺へ案内し、衝立と屏風で即席の(へや)を手早く作った。

中で向かい合って座り、話してくれるのを待つ。


臺与(とよ)が蓋を開けた文箱を差し出し、憮然(ぶぜん)とした表情で


忠平(ただひら)様からの贈り物です。」


中には薄紅色の房飾(ふさかざ)りと組紐(くみひも)がついた鈴が入ってた。


キョトンとし


「そう。よかったですね。手首にもつけてらっしゃるから、鈴がお好きだと思ったんでしょう?」


臺与(とよ)はタレ目をキッ!と吊り上げ、への字口で明らかに怒った表情で私を睨み付け


「ええそうね。これが私への贈り物ならね。文を読んでごらんなさい。」


剣幕におびえつつ、文箱から文を取り出しガサゴソ開いて読んでみる。


『愛しい伊予。

撫子(なでしこ)色のこの鈴をいつも身につけてくれないか?

いつでも私のことを思い出せるように。

いつでもそばにいられるように。

私は魔除けの鈴としてお前のそばにずっといたい。

 忠平(ただひら)


はぁ?

確かに伊予って書いてあるけど、そーいえば・・・・


「あのぉ、忠平(ただひら)様は単にそそっかしいんじゃないのかしら?先日も秋の七草の贈り物を間違えて私に届けたでしょ?あの文にはあなたの名前が書いてあったわ!これもきっとあなたの名前を書くべきところを間違えたんでしょ?内容におかしいところはないんだし。」


この前は身に覚えのないことを書いてたから間違いだって確信があったけど、今度のはどっちともとれる。

でも、そんな人だったかな?

過誤(ミス)が多すぎる!

疲れてるんじゃないの?大丈夫?


臺与(とよ)はもう少しで血管が切れそうなぐらい顔を真っ赤にして


「違うわ!彼には私が一番嫌いな色が薄紅色だって何べんも言ってあるし、好きな色は藤色だって知ってるハズよっ!花だって撫子(なでしこ)?が好きだなんて一度も言ったことも無いし!どう見たってあなたへの贈り物を間違えて私に届けたんでしょっ!!バカにするにもほどがあるわっ!!」


私だって、撫子(なでしこ)が好きって言った覚えはない。

けど、勝手に私を撫子(なでしこ)みたいだって歌で詠んでた気はする。


じゃあ今回は文の届け先を間違えたの?

私に贈りたかったの?


秋の七草も、『撫子(なでしこ)の君を添え、七つの花』って言ってた気がする。

じゃ、あれは宛名を間違えたの?

それとも・・・・私が妬くと思ってわざと臺与(とよ)って書いたの?

なぜそんなことを?


考えれば考えるほどよくわからない。


臺与(とよ)は気を取り直したように済ました表情になり、フフンと鼻で笑い


「でもいいわ!私の本当の狙いは上皇侍従じゃないものっ!彼は踏み台よっ!私が愛しいお兄様と結ばれるための!」


『お兄様?』

嫌な予感!

もしかして・・・・?

おそるおそる聞いてみる。


「あのぉ、それは、大納言様のこと?お兄様って呼ぶほど親しい間柄なの?」

(その8へつづく)

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