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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
322/505

EP322:伊予の事件簿「魔性の霊鈴(ましょうのれいりん)」 その6

手を横に振りながら、キッパリ言い切ったけど、踏まれた指がジンジン痛い。


牛車へ向かって再び歩き出し、三人の後ろをついていこうとしたけど、痛みで片足を引きずるハメになったので、竹丸に耳打ちし、


「肩に捕まらせてね!杖替わりに。」


ちょっと嫌な顔をして頬をゆがめ、最後は諦めたように


「いいですよ。」


しばらくそれで進んだけど、前の三人に後れを取りドンドン差が開いた。

ある程度差が開くと追い付く気力もうせ、


「ちょっと休みましょっ!!」


竹丸が自分のヒョウタンを逆さにふりながら


「姫っ!水が残ってるなら下さいっ!飲みつくしてしまいました。」


私のヒョウタンを手渡すとグビグビ飲み干した。


飲み終わった後、ふと前を見ると先に進んでた三人がいつの間にか振り返ってこっちを見てた。


竹丸がコソっと耳打ちし


「あの~~、なんか男性二人に睨まれてる気がします。」


確かに忠平(ただひら)様も影男(かげお)さんも不機嫌な表情。

待たせたから?

トロイなぁ~~ってイラついた?


「ごめんなさいねっ!足が痛くて速く歩けないのっ!!行きましょ竹丸っ!!」


慌てて何とか追いつき、その後は無言で牛車の泊めてある場所まで歩いた。


牛飼童に帰り道を指示して、また臺与(とよ)忠平(ただひら)様と私が後簾(うしろすだれ)を上げて乗り込んだ。


で、ここまでは、まだマトモだったんだけど・・・・最悪だったのはここから!!!


臺与(とよ)胡坐(あぐら)をかく忠平(ただひら)様の前に背中を寄せて座り、胸に体ごともたせかけた。

顔を上げ、うっとりと忠平(ただひら)様を見つめ、鼻にかかった声で


「楽しかったわ!あなたがいつも贈ってくれる、趣味(センス)のいい流行りの贈り物のように、高貴な(おもむき)のある遊山でしたわね?あなたは今までの恋人の中で何もかもが最高の殿方だわ!ねぇ・・・・今夜も枇杷(びわ)屋敷にうかがってもいいかしら?あなたと一晩を過ごしたいの。」


忠平(ただひら)様の顎に息がかかる距離で吐息交じりに呟く。


はぁ?

『恥』の概念どっかに落とした?

それともはじめから持ってないとか?

進行方向を向いて座る私の目の前で繰り広げられる、イチャイチャ雰囲気(ムード)に、イライラがピーク!


忠平(ただひら)様は臺与(とよ)のお腹に手を回して包み込むように抱きしめ、私にチラッと視線を走らせたあと臺与(とよ)を見つめ


「もちろん!いつでも歓迎するよ。あの夜みたいに二人で楽しもう。」


聞いたことも無いような甘い、優しい声で囁く。


ハイハイ、勝手にしてくださいっ!!

うんざりして後ろ向きに座り、(すだれ)越しにゆっくり流れる景色を見てた。


こっちは必死で吐き気をこらえてるのに、後ろから


「やんっ!!だめっ!たらっ!・・・こんなところでっ!フフフッ」


とか、ガサゴソいう衣擦(きぬず)れの音とか、荒い息遣いとか、想像できる限り最大の、神経を逆なでするような気に(さわ)る音が聞こえ続けるので、怒りがピークで我慢できなくなり、


「私も歩くっ!!止めてちょうだいっ!!」


牛飼童に叫んで、牛車が止まると同時に素早く飛び降りた。

バカじゃないの?

他人の前でイチャつくのが楽しいの?

忠平(ただひら)様がこんなに恥知らずな人だと思わなかった!

完っ全に、幻滅したわっ!!


私も他人に不愉快な思いをさせないよう気をつけよっ!!


履物をはくと、歩くのに疲れ切った表情の竹丸が


『物好きだなぁ、無駄な努力を進んでするなんて!』


と言い出しそうなのを無視して歩き始めた。


一緒に歩いてた影男(かげお)さんが、京の都に入ったあたりでどこかへ走り去った。


「まだ大内裏までは半刻(一時間)ほど距離がありますから、ゆっくりボチボチ歩きましょう!」


竹丸がつぶやく。


従者だからいつもお伴は歩きのハズなのに、竹丸がムキムキにもガリガリにもならずムッチリボディをキープしてるのは何気にスゴイ!


すぐに影男(かげお)さんが馬に乗って現れ、


「知り合いの屋敷で借りてきました。伊予殿、乗ってください。内裏へ送ります。

いいですねーーーっ?!上皇侍従殿ーーーっ?!」


最後は牛車の中に大声で話しかけた。


私が鞍にしがみついて這い上がったところで、後簾を横にずらして顔をだした忠平(ただひら)様が


影男(かげお)っ!お前っ!この裏切り者がっ!!」


何だか怒ってる。


影男(かげお)さんはそれを無視して馬を駆けさせた。


わ~~~い!楽ちん!

じゃなかったーーーー!

今日は単衣(ひとえ)を壺装束にしてたから、足を開いて鞍にまたがることができず横乗りしかできないんだった!

身体が前後にグラグラして安定しない!

影男(かげお)さんの片腕にガシッ!としがみつくしかなかった。

必死でしがみついてグラグラに耐えてると


「そう。しっかりつかまってくださいよ。危ないですから。」


これって、見ようによっちゃイチャついてる?んじゃない?

恋人の臺与(とよ)に見られちゃマズイ?

気になって


「あのぉ、ごめんね。もし臺与(とよ)に見られたら不快にさせたかも。影男(かげお)さんとの仲にひびが入るかも?」


「いいんです。臺与(とよ)は上皇侍従の恋人であって私のではない。」


「そうなの?忠平(ただひら)様にとられたの?さっきまで三人で仲良くしてたように見えたけど?腕組んだり手をつないだりして。」


(その7へつづく)

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