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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
307/505

EP307:伊予の事件簿「完璧の至宝(かんぺきのしほう)」 その5

藤原元佐(ふじわらもとすけ)は頬を赤く染め、早口で

「これは我が家に代々伝わる宝のありかを示した古文書ですっ!!おそらく遣唐大使を務めた曾祖父が漢語で書き記したものです。実は、つい先日解読に成功したので、明日、探しに行こうと思いますっ!!」


ぽっちゃりとした赤い頬が桃みたいだなぁと見つめてると

「で、あなたに相談とお願いというのはですね、そのぉ、一緒に宝探しについて来てくださいっ!ってことなんですっ!」


照れながらも結構な大声でまくし立てたので、茶々(ちゃちゃ)たちにチラ見されてる。


ワケがわからず、あっけにとられて

「なぜ?私がついていくの?」


藤原元佐(ふじわらもとすけ)(うつむ)き、自分の膝を見つめてモジモジしながら

「あのぉ、初めて貴女(あなた)を見た時から、妻になるのは貴女(あなた)しかいないと思ってました。貴女(あなた)は、容姿だけでなく、知性と人格もそなわった理想的な女性ですっ!今回で会うのはまだ三度目ですが、人となりも充分理解できました。貴女(あなた)は私の妻にふさわしい人ですっ!!『和氏(かし)の璧』のように、私はまだその価値を世間に認められず、ただの石ころ扱いですが、近い将来、貴重な玉として見いだされ朝廷で重要な人物となるはずです!そして、その『和氏(かし)の璧』に匹敵する貴重な宝が、現にこの古文書を解読した私の、すぐ手に届くところにあるんです!明日、それを発見し、貴女(あなた)に贈ります!ですから、一緒に探し出し、そして発見した(あかつき)には結婚してください!」


は??

唐突(とうとつ)すぎて二の句が()げない。


結婚?

恋人の段階も踏まずに?

和歌(うた)のやり取りもなく?

三回会っただけで決めるの?

早すぎないっ?!!


それに加えて、モチロン!

私には兄さまがいるしっ!!

結婚なんてできるわけないしっ!!


どーーーーーやって断ればいい??



**********



漢文勉強会がお開きになり、茶々(ちゃちゃ)麻葉(まよ)と三人で、帰りの牛車に揺られながら、突然の求婚(プロポーズ)について思い返した。


ええと、何と答えたんだっけ?

確か、

「あのぉ、結婚は無理です!友達になりましょ?文を交換するような」


藤原元佐(ふじわらもとすけ)は面白い人だし、宝探しにも興味がある。

でも、恋人とか結婚相手とは考えられない。


でも古文書の解読結果の宝物を見つけに行きたいっ!!

だから

「その古文書の宝は欲しくないけど見てみたいから、明日は一緒にいくわ!何時にどこにいけばいい?動きやすい服装で行くわね!」


ってことになったんだった。


牛車が大納言邸に到着すると、茶々(ちゃちゃ)

「伊予、ここでいいのよね?大納言様とどうなってるの?別れたって聞いてたのに、藤原元佐(ふじわらもとすけ)の屋敷に突然現れたりして!」


「う~~ん、難しいのよねぇ~~~、イロイロあって。でも今日はここに来るって言ってあるから、ありがとう!降りるわね!じゃあね!」


ヒラヒラと手を振って牛車の後ろから御簾をまくって飛び降りた。

ホントは牛を外して、御簾を巻き上げてもらって前から降りるとか、手順はあるけどまぁいいよね?無視しても。

履物をはいて、裾がつかないよう衣を引き上げながら大納言邸の東門から入ると、すでに人が寝静まってるのかひっそりとしていて、ぱっと見た感じでは、どの殿舎の格子も戸も閉め切られていた。


空を見上げると半月が澄んだ夜の闇に白い光の環を広げ輝いてた。


庭を通って主殿に続く東透廊(ひがしすいろう)に上がり、足音を立てないよう静かに主殿に渡ると、柱の陰に誰かの肩が見えた。

廊下の柱に寄りかかって座る背中だけが見えてる。


ドキッ!


忍び足で、気づかれないようコッソリ近づく。


兄さまが柱にもたれかかって座り、月を眺めながら、銚子の酒をあおっていた。


私の気配に気づかないのか、気づいても無視してるのか、こっちを見ない。

怒ってるのかな?

兄さまのすぐそばに立って、両手を組んで握りしめモジモジする。

怖気づきそうになったけど、勇気と声を絞り出し


「思ったより遅くなってしまって、ごめんなさい。寝ててくれてよかったのに!」

(その6へつづく)

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