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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
306/461

EP306:伊予の事件簿「完璧の至宝(かんぺきのしほう)」 その4

答えを聞く前にズカズカと入ってきて、私と藤原元佐(ふじわらもとすけ)の間に割って入ろうとするので、私が立ち上がって横に動き座り直した。


麻葉(まよ)の彼氏が慌てて立ち上がり、どこかへ行って円座(えんざ)を取ってきて、兄さまに差し出し、ご機嫌な兄さまがそこへ座り直した。

藤原元佐(ふじわらもとすけ)がキョトンとした顔で

「伊予殿と大納言様はお知り合いですか?」


兄さまのあっけらかんとした傍若無人(ぼうじゃく)ぶりにイラっとし

「はい!大納言様が帝のお伴で雷鳴壺によくいらっしゃいますので、そこでお会いするのです。

でも顔見知り程度の関係ですわ!」


トゲトゲしく言い放った。


茶々(ちゃちゃ)がそれを聞いて苦笑いしてる。


兄さまは一瞬、不機嫌な表情を浮かべ、黙り込んだ。


藤原元佐(ふじわらもとすけ)が何かを察して焦り

「で、では、え~~~、続きを議論したいと思います。伊予殿が飛ばした一文は、私が書き下し文と解釈を付け加えます。えぇ~~とぉ~~・・・」


兄さまは話し始めた藤原元佐(ふじわらもとすけ)の方を見ず、私を見つめ、口だけを動かし


「た・の・し・い?こ・れ?」


フンッ!!


怒ってソッポを向く。


藤原元佐(ふじわらもとすけ)が話し終わったのを機に兄さまがスクッと立ち上がり

「大変よくできておられたと思います。できれば唐国の発音で白文(はくぶん)(原文)もお読みなさるともっと勉強になるでしょう。では、若者だけの(つど)いに年寄りはお邪魔でしょうからサッサと退出するとします。」


皆に会釈をして、私を振り返りもせず、スタスタと歩き出した。


急激に不安が押し寄せ、焦って立ち上がり

「ちょ、ちょっと、失礼します!」


言い捨てて、兄さまの立ち去った東透廊(ひがしすいろう)方向へ追いかけて行った。


庭への階段を降り、履物をはいたばかりの兄さまの背中に

「待って!」


ピタリと止まったけど振り返らず

「何?」


冷たい声で言い放つ。


弱気の虫が頭をもたげ、オドオドした声で

「あの、このあと、勉強会が終わったら、大納言邸に行ってもいい?」


首をちょっと動かし横を向いて

「ああ、もちろん。・・・・待ってる。」


ボソッと呟いて、スタスタと立ち去った。


ドキッ!!

二人で過ごせるっ?!!

思わず鼓動が速くなる


期待のあまりソワソワ落ち着かなくなりながら自分の席に戻ると、一気に緊張が解けた雰囲気でみんな好き勝手におしゃべりしてた。

私が帰ってきたのを藤原元佐(ふじわらもとすけ)が見て

「では、今日の勉強会はここまでで散会!していいんじゃないでしょうか!この後はいつものように引き続き、月を眺めながら和歌(うた)を詠むなどの酒宴といたしましょう!」


高らかに宣言した。


確かに、過去二回とも勉強会の後は軽い膳とお酒を(たしな)みながら和歌(うた)を作って評価しあったり、おしゃべりしたりでワイワイ楽しく過ごしたけど。

今回は、早く帰りたいっ!!

兄さまとできるだけ長く一緒にいたいっ!!


「あのぉ、私、今日はこの後・・・」


藤原元佐(ふじわらもとすけ)に話しかけるとぽっちゃりとした頬をすぼめ口をとがらせ

「実は、伊予殿に相談とお願いがあるんです!一生に一度の一大決心ですから、ぜひこの後も同席してくださいっ!!一生のお願いですっ!!」


手を合わせて懇願するので、断り切れず

「・・・・じゃあ、はい。わかりました。」


ウンと頷いてしまった。

ま、いっかぁ~~。

話を聞いてできるだけ早く帰れば。


酒宴の膳の一品に出された(うろこ)の大きい魚を梅酢とショウガで煮付けた料理をつまんでると、藤原元佐(ふじわらもとすけ)がやっと本題に入った。

「これを見てください。」


一枚の紙を渡され読んでみると


『倭宝在京之中、依青銅爲光。

從朱雀至倭宝、循二条路行、歷長屋、乍北乍東、到其西岸東大、七餘坊。

始度南一行餘坊、至元興。

又西行四餘坊、名曰四条、至仲麻呂。

西陸行四餘坊、至唐招提。

北東陸行四餘坊、歷朱雀、到倭宝。


(倭宝は京の中にあり、青銅に()って光を作る。)

(朱雀から倭宝に至るには、二条に沿って路行し、長屋をへてあるいは北へあるいは東へ七余坊進み、その東大の西岸に到着する。)

(初めて南へ一余坊行き、元興に至る。)

(また西に四余坊行くと、四条という名である。仲麻呂に至る。)

(西に陸を行き四余坊行くと、唐招提に至る。)

(北東に陸を四余坊行くと、朱雀をへて、倭宝に到着する。)』

と書いてあった。


「何これ?どういう意味?」

(その5へつづく)

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