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彼女の帰還  作者: Tro
#4 青い山脈
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#4.2 雪合戦

冒険団一行は、森の中に侵入した。だが、まだまだ道は続く。

ヒロが方角を確かめようと周囲を見渡すと、何となく歩いて来た道が消えているような気がした。


森の中は丁重にも人が通れるように小道がある。まだ準備中なのだろう、草木は生えているが、森に生息する動物や昆虫類は存在しないようだ。


気のせいだと思っていた、いや、思いたかったことが現実になる。通ってきた道が薄っすらと消えていくではないか。マリアの魔の手は早い。気が短いとも言える。


それに気づいたのか、ヒロは歩みは早める。

だが、これは罠だ。

遠くに視線を向けさせ、実は近くの木々が冒険団一行に向かって倒れこんできた。倒れた木は大きな音を立て、足元を揺らす。


ビビったヒロが駈け出すと、ココナ、エリカも走り出す。

ヒロの頭の中には、既に後ろ二人の存在は無い。助かりたい一心で走っている。ヒロとは、そういう男だ。しかし、また木が倒れた時の振動で、ココナ、エリカが悲鳴を上げた時、ヒロは我に帰る。守るべき存在を思い出したのだ。


ココナ、エリカが悲鳴ついでに同時転倒。

ヒロはココナに手を差し伸べ、エリカには『早く立て』と応援した。ヒロはココナの手を握り走り出そうとする。


(おい、待て)


ヒロは有頂天だ。

どさくさに紛れてココナの手を握った。それは、小さくて柔らかい。出来る事なら、ずっと握っていたい。それは可能か。


ヒロの足は軽くなった。

これなら何処までも走って行ける。君となら虹の向こうだって行ける。あの空を越えて行こう。僕らの未来が、そこに待っている。


ヒロは隠す。

そのニヤついた顔と心を隠すため、天を仰ぐ。いい空が広がっている。これが新世界。俺達の新世界。新世界、万歳。


「出でよ、狐火」


エリカが呪文を唱えた。

すると、エリカの右手人差し指から炎を纏った子狐が現れ、一目散にヒロの尻に噛みき、すぐに消えた。


それを見ていたココナはビックリ、噛みつかれたヒロもビックリ。ヒロが振り返ると、右手を差し出すエリカがいる。ヒロは思考停止のまま、エリカの手を掴み、エリカはココナの手を引きながら走り出す。


ヒロはココナの感触は確認済みだ。エリカも同様のはずである。だが、痛い。エリカの復習だ。我を置き去りにしようとした罰を与えている。爪を立てたエリカがヒロの手を襲う。


冒険団が逃げ惑っている間に、ここまであまり役に立っていないココナの話をしよう。マリアの陰謀を察知したココナは例の白い猫を使って、マリアのパソコンから情報を抜き取った。ちょっと覗こうとしただけだ。


その後、それがエリカを嵌める罠であることを知る。

それに責任を感じたココナがエリカの救出を考えたが、一人では心細い。そこでエリカのストーカーをしていたヒロを引き込み、”青い山脈”にやってきた。そこでさっさとエリカを回収して脱出するつもりだっが、ヒロが山小屋を建て始めた。その隙に出口はマリアによって消失。そして現在に至る。


ということで、ヒロを連れてきたことが逆に仇となった。ヒロとは、そういう男だ。諦めるしかない。あとは、エリカに対して責任を感じたことだが、それについては後ほど話そう。



災難を振り切った冒険団に、更なる試練が待ち構えていた。マリアの気は短い。冒険団の頭上に雪が降る。それも、サラサラ、フワフワではない。ドカっと降る。すぐに辺り一面がスキー場と化す。


(雪だるま作りたい)


ドカ雪から這い出た一行はゲレンデを目にする。マリアの仕事は早い。早速ゲレンデに向かうが、準備中のため人はいない。


ヒロは、せっかくのスキー場なのだから、スキーで山を降りようと考えた。しかし冒険団には、スキー経験者はいない。そもそもスキー場に来たのも初めてだ。ヒロがスキーの真似をすると二人は首を横に振る。


エリカが首を振ったついでにソリを発見する。発見したらそれに駆け寄る。駆け寄ったら、それに乗る。一連の動作に迷いはない。


かなり大型なソリだ。大人でも4〜5人は余裕で乗れる。

だが、どうやってそれを引っ張る?

ヒロは降りるようにエリカに言おうとしたが止めた。何故なら既にココナも乗っていたからだ。おまけにエリカはムチのようなもので、何もない前方をパシパシ叩いている。


”あれを俺に引かせるつもりじゃないだろうな”とヒロは身構える。早急に代替え案が必要だ。大型ソリがあるくらいだから当然、あれもあるだろうと探すとあった。ヒロはスノーモービルを駆り、ソリと連結した。


準備が整ったところで出発の合図をしようとヒロが振り向くと、雪玉が顔面に直撃した。投げたのはエリカだ。中に石が入っていないだけ幸運と思え。


「あのな〜」


ヒロが言いかけてところで、2回目の攻撃を食らう。投げたのはココナだ。当たるとは思っていなかったようで、驚いた顔をしている。


「さあ、行きましょう」


冒険団一行は緩やかな坂を下っていく。

ヒロはスピードが出過ぎないよう蛇行して進むが、時々、雪玉が飛んできては、時々、頭や背中に命中する。だが、誰が投げているのか確認する余裕はない。投げていたのはエリカだけだ。


◇◇

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