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14 胸を張れる男に

 レーシアが封具を起動したことにより軍を振り切った彼らは、目前に見えていた町に駆け込んでいた。

 樹国の者たちとアジャットたちがこぞって、財力に物を言わせて宿屋を一つ貸し切りにし、怪我人をそこへ運び込む。


 その際に判明したことだが、レーシアは封具の効力を、ゼーンのみならず馬車にいた重傷者にまで及ぼしていた。馬車にいた意識不明の者たちは皆意識を取り戻している。

 特にリリファは、火傷の痛みが消えたことで立ち上がれるようにまでなり、オリアに支えられてはいるものの、レーシアの近くにまで来ていた。


 レーシアは宿の帳場がある広間の暖炉の前に陣取り、少しでも身体を温めようとしている。アトルはその傍に付き添って、アジャットたちが語調激しく議論しているのを聞きながら、ひたすら彼女の背中を擦っていた。


「――怪我人は全員ここに置いて行く。その上で馬車にレーシアさんを乗せて――」

「あと十日以内だ」

「こんなときに何なんだけど、宝具が無事に見付かった後はどうするのよ」


 周囲は怪我人を運び込む作業で忙しい。呻き声や、怪我人を励まそうとする声がひっきりなしに聞こえてきていた。

 レーシアが、暖炉の炎に手を翳し、薔薇色に染まった頬をアトルに向けた。


「ねえ、アトル」


「なんだ?」


 こんなときだというのにアトルは、レーシアがもう一度彼を傍に寄らせてくれるようになったことが堪らなく嬉しい。


「さっきのあの、アトルのオヤジさん。顔を見に行かないの?」


 アトルは首を振った。


「死なないって分かってるだけで十分だ」


 レーシアは不思議そうにアトルを見た。その薄青い双眸に暖炉の炎が映り込んで、蜜色の光沢が踊る。


「でも――大切な人なんでしょ?」


「そりゃあ――」


「アトル」


 レーシアはやや難しげな顔をした。


「アトルは私にちゃんと謝ってくれたけど、それは私に酷いことを言ったからでしょ?」


「あ、ああ」


 レーシアの肩からずり落ちそうになった、彼女が外套の上から羽織るストールを掛け直してやりながら、アトルがそう答えると、レーシアはぎゅっと眉を寄せた。


「それなのにアトルはお礼は言わないの?」


 アトルは数回瞬きし、そのことにはっと思い至った。


 極度の混乱と焦燥で、そのことが頭から抜け落ちていたのだ。確かに指摘されてみれば、人として最低なことである。


「レーシア」


 アトルは慌てて呼び掛け、「はい」と真面目くさって答えたレーシアをじっと見た。


 暖炉の明かりが彼女を暖色の光で照らし、髪が僅かに橙色の光を帯びて透けている。頬も輪郭を金色に照らされて、大きな目がこちらを見ている。唇がほんの僅かに弧を描いていて、その全てが一幅の絵画のように美しい。


 アトルが余りにも凝視するものだから、レーシアは段々と戸惑った顔になり、ぱっと手を挙げてその掌を合わせた。


「――ご、ごめん。お礼はやっぱり要求するものじゃないよね……」


「あ、いや、違う」


 アトルは手を振って、レーシアが手を挙げた拍子にまたずり下がったストールを掛け直した。


「何て言おうか考えてたんだ」


 レーシアは合わせていた掌を下ろし、ほっとした顔をした。


「そ、そう」


 アトルはレーシアの手を握った。


「――本当に……ありがとな、レーシア」


「うんっ!」


 満面の笑みで頷いて、レーシアはアトルの手を握り返した。


「だから、オヤジさんの顔を見に行っていいよ」


 そう繋げたレーシアは少しばかり複雑そうに目を伏せた。


「あんなに動揺してるアトル、滅多に見ないもの」


 渋る顔をして動かないアトルに、目を上げたレーシアは苦笑した。


「大丈夫、まだ死なないよ」


 アトルはストールを掛け直し、レーシアが指先までしっかりと温まっていることを確認した。


「――すぐ戻る」


「うん」


 のんびりと頷いて、レーシアは宝具を呼び出す歌を口ずさみ始めた。



 ゼーンは宿屋の一室に既に運び込まれており、予想に反して他の〈インケルタ〉の面々はそこにはいなかった。


 アトルがそっと寝台に近付くと、その微かな足音に、ゼーンと相室となった、全身を包帯で巻かれた男が呻き声を上げた。


 ゼーンは寝台の背板(ヘッドボード)にもたれかかっており、アトルを見て顔を顰めた。


「なんでぇ、アトル。てめえも他を手伝って来いよ」


 アトルは、やはりゼーンのしっかりとした姿に安堵を抑えることが出来ず、寝台の傍までの僅かな距離を走ると、ゼーンの目の前で立ち止まった。


「……レーシアが、顔見て来いって」


 しかし口に出したのはそんなことで、ゼーンは呵々と笑う。


「ああ、あの子なあ」


 腹を撫でて、しみじみと言う。


「ほんとに不思議な子だな。――アリサが言ってたぞ。この奇跡のせいでその子が死にそうになってるって。――大丈夫なのか?」


 アトルは顔を伏せ、そのことから答えを察したのだろう、ゼーンが溜息を吐いた。


「アリサが真っ青になってたわけだ。――で、おまえは?」


 アトルは顔を上げる。


「――俺?」


 ゼーンは、からかうような慈しむような表情をしていた。


「俺が気付かないとでも思ってたのかよ?

 ――惚れてんだろ?」


 アトルは思わず、泣き笑いのような表情を浮かべた。


「あんた、ホントに俺の親父だな」


「今更かよ」


 鼻で笑って、ゼーンは「で?」と促す。

 アトルは寝台の支柱に手を触れながら、真っ直ぐにゼーンを見て、些かの迷いもなく言った。


「――俺さ、あいつに胸を張れるような男になりたいんだよ」


 へえ、と呟くゼーンの声に、馬鹿にする響きは欠片もない。誠実に耳を傾けようとするときの、真摯な響きがそこにあった。


「あいつをちゃんと守ってやりたい。あいつを自由にさせてやりたい。――あいつに、頼りにしてもらいたい」


 訥々と落とすその声が、アトルの本心を彫り出していくように響く。


「あいつの傍にいたい。あいつがいつか、世の中を今よりもっと自由に見て回れるようになったときに、ちゃんと付いて行きたい」


 あいつ、と綴るアトルの声音に、ゼーンが滅多に見せない優しげな微笑を零した。


「だからちゃんと生きていけるようになりたい。犯罪紛いのやり方じゃなくて、ちゃんと真っ当に稼いで、その金であいつを食わせていってやりたいんだ」


 別に〈インケルタ〉が悪いってわけでもねえけどさ、と言い訳のように付け加えたのは蛇足だろう。

 ゼーンはアトルを手招きし、傍に寄ったアトルの胸倉を掴んで頭を傍まで持って来ると、その亜麻色の髪をくしゃくしゃと掻き回した。


「言うようになったじゃねえか、えぇ?」


 まるで夢が叶ったかのようにそう言って、ゼーンはアトルを放した。アトルは腹の打撲と脇の傷に響いたのか、微かに呻いたが、ゼーンはそんなことを気にしない。


「最近まで刃物を持たしゃあ手を切ってたような餓鬼が、男になったもんだ」


「オヤジ、それ十年くらい前の話――」


 思わず突っ込んだアトルの胸板を叩いて、ゼーンが笑う。


「おまえ、魔術師になったんだろ? いくらでも食っていけるだろうさ。帰って来ても寝床はねえと思って、ちゃんとあの子に付いて行け」


 アトルは目を見開いた。


「オヤジ――」


 ゼーンは裏表のない笑顔を浮かべた。


「おまえのやりたいことをちゃんとやれ。そのために俺たちはおまえらを拾ってやったんだからな」


 にやりと笑って、ゼーンは続ける。


「ま、それもあの子を口説き落とせたらの話なんだろうけどな。玉砕したらそのときのおまえを酒の肴にしてやるよ」


 アトルは鼻で笑う振りをした。


「言ってろよ」


「上手くいったらそんときは、」


 ゼーンはアトルの顔から視線を外し、天井を見上げた。


「孫の顔を見せに来るときくらいは帰って来ても構わねえ」


「…………」


 言うべき言葉が見付からないアトルを一瞥して、ゼーンが嘆息する。


「何してんだよ。とっとと惚れた女のところに戻れ」


 アトルは息を吸い、呟いた。


「――ああ」


 踵を返し、傍から離れようとしたとき、ゼーンが唐突に彼を呼び止めた。


「なあ、アトル」


「なんだよ」


 振り返ったアトルに、ゼーンは投げ渡すように言ったが、その口調は誠意を紗に包み、息子に弱みを見せるまいとするためのものだった。


「あの子に礼を言っといてくれ」


「おう」


「それと、アトル――」


 僅かに変わった口調に、アトルがもう一度ゼーンを振り返る。

 彼はアトルを、紛うことなき父親の眼差しで見ていた。


「――あの子のための男になれよ」


 アトルは頷いた。


 身分も持たない戦災孤児が、〈器〉のためにしてやれることなど高が知れているだろうが、それでもそれを覆すほどに、アトルはレーシアの傍にしがみ付こう。

 レーシアが離れて行こうとするならば、それを追えるだけの速い足を手に入れよう。

 誰かがレーシアを連れて行こうとするならば、それを阻めるだけの強さを手に入れよう。

 そのために努力することが、アトルにとっての独り立ち、そして彼女への、最高の愛情の示し方だ。

 他の者全てがレーシアのことを〈器〉と呼ぼうと、アトルだけは彼女を名前で呼び続けよう。

 誰がレーシアのことを、宝具や封具に付随するものとして扱おうと、アトルは宝具でも封具でもない、レーシアのことを見詰め続けよう。

 そのために何が敵になろうが、後悔しようはずはない。


「おう。――言われなくたってそうしてやらあ」




 アトルがレーシアの傍に戻るのとほぼ同時に、怪我人の搬入が終わり、代わって出発の運びとなっていた。


 レーシアを再び馬車に乗せ、十日以内になんとしても宝具まで辿り着く。


 レーシアに同行するのは、アジャット、リーゼガルト、ミルティア、ディーン、オリア、ディアナ、他に無傷の樹国の魔術師が三人、そしてアトル、それからアリサだ。

 非魔術師であり、レーシアとも関係があるとは言い難いアリサが同行する理由はただ一つ、口は利けても満足に身体を動かせないリリファがそれを強硬に主張したことだ。


 その意図は明らかだ。

 いざレーシアが宝具と〈糸〉を繋いだとき、もしもアトルたちがレーシアを連れて、ここに残ることになるグラッドや他の〈インケルタ〉の面々を見捨てて逃亡しようとしたとき、人質に取れる人間が必要であるためだ。


 この宿屋に残る人間がほぼ怪我人であるからには、ここに残った〈インケルタ〉の人間やグラッドを人質に脅すというのには無理がある。


 アリサはかなり不満そうだったが、アトルをはじめ全員の目が殺気立っているので、それを口に出すことはなかった。


 馬車に食糧と、熱を生み出す系統の術式が仕込まれたアルナー水晶を積み込む。


「馬は? 要るのか?」


 樹国の者が尋ね、アジャットが端的に答えた。


「速度を出すとなると」


 御者台にリーゼガルトが乗り、他の者が馬車内に乗り込むと同時に、馬車は出発した。


 車内にはまだ血の匂いが残っており、アトルはレーシアの表情を気にしたが、レーシアは幸いにも血の匂いで吐き気を催したりすることはないようだった。


 レーシアの魔力は磨耗し切って、垂れ流されている魔力など皆無。ゆえに慣性に流されることはないが、それは取りも直さずレーシアの命の危機を示している。


「頑張れ、レーシア」


 アトルは呟いて、外套とストールに包まり、保温のアルナー水晶を抱えてうつらうつらと舟を漕ぐレーシアの頭を撫でた。




 うたた寝から目覚めて、目が覚めたことにほっとした顔をしたレーシアは、アトルから宝樹玉を一つ受け取り、砕くことはせずに口に入れ、飴玉のように舐め始めた。


「砕かないのか?」


 尋ねたアトルに、レーシアはもごもごと答える。


「こうする方が、効果が薄く長くなるの」


 納得し、アトルは残る一つを道具箱に仕舞う。

 レーシアは寝台の上に膝を抱えて座っており、彼女と背中合わせになって、自分の背中を彼女の背もたれにするようにして、アトルが片足を寝台の下に下ろして座っている。

 馬車の速度の緩急に合わせて、重くなり、軽くもなるその背中の温かさを感じながら、アトルは周囲に視線を向けた。


 魔術師たちは例外なく、窓の外を血眼になって見ている。敵影を警戒してのことであるのと、宝具が近くにある兆しがないかを捜しているのとが半々だろう。

 アリサはアトルたちが座っていない、もう片方の寝台に腰掛け、レーシアをぼんやりと見ていた。


 馬車は考えられない速度で走っている。裸馬が一切の重りを着けられずに疾駆する速度と同じくらいだ。景色は目まぐるしく後方へと流れていき、一刻も早くレーシアを宝具の下へ連れて行こうとしている。


「あ、待って」


 レーシアが唐突に言い、座り直して身を乗り出した。必然、アトルの背中から彼女の背中が離れ、アトルはレーシアを振り返る。


「どうした?」


 レーシアは慌てた顔をして、早口で言った。


「今、ちょっと宝具から離れた感じがしたの。もうちょっとこっちに向かって進んで」


「こっち」と言いながら、レーシアは斜め右を示した。

 ミルティアとアジャットとディーンとオリアが同時に、御者台に座るリーゼガルトに向かって柘榴石の耳飾りに溜められた魔力を用いて通信し、レーシアの発言の旨を伝える。リーゼガルトからすれば、さぞかし騒々しかったことだろう。


 馬の進む向きと、アルナー水晶が生み出す推進力の向きが調整され、一同が伺うようにレーシアを見る。

 レーシアは一瞬目を閉じ、すぐに笑顔になった。


「あってるわ。こっちでいい」


 周囲は徐々に殺風景な荒野へと景色を推移させていた。


 窓の外を見て、こんな所のどこに宝具があるのかと、気を揉んでもどうにもならないことに気を揉むアトルの背中側で、ごそごそとレーシアが姿勢を変え、窓の方を向く形でアトルの背中に半身を預けてもたれ掛かった。


 ん、とそちらを横目で見るアトルを見上げ、にこりとレーシアが笑う。


「やっぱりアトルはいいなぁ」


「――へっ?」


 アトルは思わず目を瞬かせ、素っ頓狂な声を上げた。レーシアは他意もなさそうににこにこする。


「ディーンって、優しいんだけど会話が弾まないのよね」


 そう続け、はっとした顔をした彼女はひょいとディーンのいる馬車後方を振り返り、


「悪口じゃないんだけど」


 と補足する。ディーンは何気に二人の会話を聞いていたのか、それを受けて微笑み、会釈した。

 姿勢を戻したレーシアは、ぬくぬくと毛布と外套とストールに包まりながら、嬉しそうに目を伏せた。


「やっぱり遠慮されると話題もなくなるというか」


「おい」


 アトルはレーシアに背中を貸しているので振り返れはしなかったが、横目でレーシアを見下ろして半眼になった。


「俺はおまえに遠慮してないと?」


「してるの?」


 目を上げ、心から驚いたという風にレーシアが口元に手を当てた。アトルは嘆息する。


「いや、別にしてるって程もしてねえが」


「でしょ? それでいいのよ」


 満足げにそう言って、レーシアは息を零した。肺の奥から吐き出したような息に、彼女は呟く声を混ぜる。


「――それにしても、思ってたより大変。こんな状態でも、まだもうちょっと余裕はあると思ったんだけどな」


 ぐ、と息を呑んで、アトルは声を絞り出した。


「――ごめんな……ありがとな」


 レーシアはアトルを見て、やや慌てた顔をした。毛布の中でばたばたと手を振ったらしく、毛布の形がぼふぼふと変わる。


「違う、それは私が自分でやったことだから、えっと」


 視線を泳がせる彼女に苦笑して、アトルはしかし表情を改めた。


「――けどマジで、二度とするなよ」


 レーシアは真面目くさって頷いた。


「うん、二度としない。――けど、この先にある宝具と〈糸〉を繋いだら、もうこの世に〈糸〉を繋がれてない宝具も封具もなくなるから、二度と起きないことだけど」


 アトルは、ああ、と声を漏らす。


「そっか。もう二組の〈糸〉をサラリスって人が繋いで――」


 そこで、背中に触れるレーシアの身体がびくりと震えたのを感じて言葉を切る。

 見ると、レーシアは緊張した面持ちでアトルを見上げており、アトルはその原因に思い当たる。


 アトルが「サラリス」のことを嫌いだと言ったことを、レーシアは気にしているのだ。


「あ、レーシア――」


「サラリスは、」


 アトルの言葉を遮るようにして、レーシアが早口で言った。


「確かに私に、私は化け物だと教えてくれたけど、すごく優しい、いい人なの。料理も上手いし、服も縫えるし、計算も早いし、値引き交渉も上手だし、ええと、美人だし」


 なぜか最後の一言を、レーシアは悔しげに口にした。


「だから、アトルがサラリスに会ったときに失礼なこと言ったら、私も怒るから。でも、出来れば仲良くなってほしいし――ね?」


 アトルは顎を引くようにして頷いた。


「おう」


 彼の視界の隅に、偶然そこにいたオリアが映った。

 オリアはレーシアの言葉を聞いていたとみえ、こちらを見ている。


 アトルは僅かに顔をそちらに向け、彼女の表情を見た。

 ――そして、不穏な予感に眉を寄せた。


 オリアは微かに俯いて、唇を噛んでいたのだ。――何か痛ましいことを聞いたかのように。


 だが、位置関係上それが見えていなかったレーシアは、アトルが自分から顔を背けたと思ったのか、「ねぇねぇねぇねぇ」と彼の背中を指先でつつく。


「聞いてる? 会ったら仲良くしてって言ってるんだけど」


「お? ああ、聞いてる聞いてる。分かった、分かったよ」


 アトルの返事に、溜息を零しながらレーシアが彼の背中に額をつけた。


「また子ども扱いを……」


「してねえよ」


 思わず真面目に言ったアトルだった。



「仲睦まじくしているところ恐縮なのだが、お二人さん」


 アジャットに声を掛けられ、アトルが面倒そうにそちらに目を向ける一方、レーシアはむくれたようにアトルの背中に、身体の横側で体当たりするようにぶつかってきた。

 が、そもそも距離をそれほど開けずにぶつかってきたのと、アトルがそれなりに頑丈なのとで痛くも痒くもない。だが、アトルからすれば可愛い。


 取り敢えずレーシアの方へ少しだけ背中を傾けることで無視していないことを示し、アトルはアジャットに顔を向けた。


「なんだよ?」


「食事だ」


「やった!」


 アジャットの言葉に、レーシアがアトルの背中から跳ね起きて、アジャットの方へ満開の笑顔を向けたのだった。






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― 新着の感想 ―
[良い点] ケンカの後離れて色々考えたのだろうな、そして仲直りできて何より
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