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ForeRunner  作者: 宮沢弘
出会い
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3−1: 交流

 ナブロスからの帰還の後、銀河は騒ぎに包まれた。

 出自不明の若い二つの種族が一つの種族であるというヴェールコール人による情報開示は論争を呼んだ。

 その可能性はこれまでにも指摘されたことがなかったわけではない。DNAとRNA、酵素群、そしてそれらのメカニズムが二つの種族で同じだったからだ。だが、それは知性化を行なった者がそのような処理を行なったにすぎないとも考えられていた

 二つの種族が実は一つの種族であるという情報をこれまで開示しなかったことは、ヴェールコール人の企みであろうとも考えられた。二つの文明を持つもう一つの種族を作り出そうという企みだと。

 更には、私たちがオリジン不明であることも問題となった。それはヴェールコール人への疑いそのものと合わさり、ヴェールコール人が私たちを知性化し、しかもその途中で廃棄していたのではないかという疑いにもなった。

 現在の慣習では、知性化を行なった者は、知性化を受けた者に対して何らかの責任を持つ。少くとも恒星間航行技術を与えることと、他種族への紹介という程度の責任は。知性化を受けた者は、知性化を行なった者にしばらくの間は従う義務も持つ。数千年から一万年程度は。

 この慣習も、またヴェールコール人への疑いを強めるものとなった。ヴェールコール人はテランとエランを意図的に廃棄することで、自らの責任を負わず、またテランとエランの義務も生じないようにしたのではないかとも言われた。更にはテランとエランの本当の母星を廃棄せざるを得ない状況に追いやったとして、その責任についての疑いも強めることになった。生態系の破壊、そしてもしかしたら星系の崩壊など許されることではないのだから。ヴェールコール人が意図的にテランとエランを廃棄していたのだとしたら、生態系の破壊、そして星系の崩壊についても責任を負うことになる。

 だが、ヴェールコール人がテランとエランを知性化したのであり、かつその途中で廃棄扱いにしたという証拠はどこにもなかった。

 ヴェールコール人の公的な、あるいは慣習的な地位に変わりはなかったものの、疑いは多くの種族の間に深く広く浸透した。


 対して、テランとエランはそれらの論争に関わる暇もなかった。私と、テランのケリーが結局は交渉の代表となり、両文明圏の通商、外交、交流のありかたを決めなければならなかった。テランとエランの中にも、両者が一つの種族であるということに疑いを持つ者はいた。だが、地球で起きたことをもう一度繰り返すわけにはいかないという意見が主流であった。

 統一評議会が設定され、ヴェールコール人からの技術提供により、エランの共有感覚空間とテランのサイバースペースとの接続も可能となった。

 統一評議会はヴェールコール人の助言もあり、ナブロス星系の、モニュメントの一つ外側の惑星の衛星軌道に設置することになった。テランとエランが出会った場所なのだ。それだけでもそうする理由にはなる。その惑星はガスを汲み取られた巨大ガス惑星――いまだに巨大ガス惑星ではあるが――だった。

 このことも他種族の間では問題となった。特異な遺跡を、ヴェールコール人とテランとエランが秘匿しようという企みだと。ヴェールコール人はどういうつもりで薦めたのかを明らかにはしなかった。だが、誰かが目の届く場所にいる必要があると考えていたことは確かだろう。


 だが、ヴェールコール人もテランもエランも、高共振性結晶の特定の配列が、これまで知られていなかった効果をもたらすということについては口外することはなかった。それはナブロスの調査隊だけの秘密だった。それが一体何なのか、それすらもわからない。その研究に調査隊は継続して当たることになった。

 教えをもたらした者についてもヴェールコール人は沈黙を守っていた。

 それらが明らかになるころ、私は最期を迎えようとしていた。


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