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ForeRunner  作者: 宮沢弘
ν隊
19/26

10−2: 大探査 4−2 ν隊 1−2

 エランの降下船にテランとヴェールコール人が何人かやってきた。

「もし、これも出入口が必要なのだとしたら……」

 ンオガはそう言い、彼のブロックを研究室の台に乗せた。

「あぁ、そうか。助かる」

 ンオガは小さく微笑んでいた。だが、少し距離があるようにも思える。

「結晶は小さくてもかまわないんだな?」

 研究室の中で小さな高共振性結晶が生成されるのを見ながら、ケナムが訊ねた。

「昔、結晶の研究がされた時の記憶だと問題はないようだ。それにこのブロックに乗せるには小さくするしかない」

 そう言いながらンオガを見た。ンオガは未だにエランとテランが言ったモニュメントの破壊検査にわだかまりがあるように見える。ヴェールコール人に限らず、モニュメントや教えをもたらした者については一種の信仰があるように思える。

 そう思えるのは、他の種族によるエランとテランへの対応があるからかもしれない。

 もちろん、それをヴェールコール人に向けるのは適切なことではないことはわかっている。だが、ヴェールコール人にだからこそ向けられる事柄でもある。他の種族であれば、こちらの言葉を聞きもしないかもしれない。

「ブロックにもモニュメントにも、τ-1のナノマシンにあったような構造も組成もない。そうだな、ンオガ?」

 私は生成された二組の結晶を手に取り、二つのブロックとτ-1のサンプルが乗っている台に向き直った。

「あぁ」

 ンオガが静かに答えた。

「まずは、結晶とモニュメント、あるいはブロックのインタフェースが問題になるか」

「そうだな」

 ケナムがブロックの表面の模様を凝視しながら答えた。

「モニュメントには結晶が埋め込まれている」

 私は古い記憶から、ナブロスのモニュメントの内部のデータを取り出し、目の前に広げた。テランとヴェールコール人にもその記憶を回した。彼らも記録を探り出し、こちらに重ねてきた。

「モニュメントに綺麗に包まれているな」

 記憶と記録を見ながらそう呟いた。

「アズル、さっきの突飛なことといい、何か考えていたのか?」

 ンオガの声からは、少し機嫌をなおしてくれたようにも感じられる。

「あぁ。昔の研究では、結晶に注目していた。実際に結晶だけで転移窓が実現された」

 研究室の面々がうなずいている。

「だが、反面モニュメントと結晶が何か影響する可能性は見落とされていた」

 ンオガとケナムに目をやった。彼らの目に、何かが映っているであろう様子が見て取れた。こちらの記憶を覗いてもみたが、その記憶はない。


 何かがあるとすれば、マーグたちが残さなかった記憶であり記録だろう。なぜマーグは記憶を残さなかったのか。それについての噂はある。だが、実際に知っているであろう人からも、それが何なのかを聞くことはできなかった。ただ、ラバルはν(ニュー)隊が結成された時にブロックを託してくれた。そしてラバルは何かを知っていると噂される人物だ。

 ブロックを渡された時に、それを聞いてみようとも思った。いや、そもそもなぜブロックを私に渡すのかも。あるいはなぜラバルがν隊に入らないのかも。

 だが、ラバルは静かに言った。

「それをどうするかは君たちが決めればいい。私は探査の方が好きだよ」

 「それ」とはブロックのことだったのだろうか。それとも今、行き当たっている現象についてだったのだろうか。

 どちらだとしても、マーグたちはこの現象を知っていたのではないかと思う。なら、なぜ記憶に残していないのだろう。


「ただ埋め込まれているだけではなく、相互作用を媒介する何かが一層くらい入っているんじゃないかとも考えたんだ」

 そう私は言葉を続けた。

「それがないということは直接作用するのか。そんな記録は……」

 ンオガが、私と同じ疑問に辿り着いたようだ。

「知っていたのかもな」

 ケナムはブロックの表面を撫でながら言った。

「ならブロックもモニュメントも結晶も何なんだ?」

 そう言いながらケナムはブロックの一つを手に取った。


 私たちはブロックと結晶の配置をいくつも試してみた。ブロックを壊せない以上、転移によって結晶をブロックの内部に配置するしかないのかもしれないと思いつつ。

 だが、その必要はなかった。ただ近くにあればよかった。さらに言えば、結晶は一つあればよかった。一つでは転移窓は開かない。少なくとも見えるような転移窓は。だがそれでも物理の4つの力を転移させるには充分だった。結晶だけでは、そのような現象は起きなかった。

 そこから考えられるのは、ブロックもモニュメントも通信機か、少なくともアンテナのような役割を果たしている可能性だった。

 そして、そこで終っていればよかった。

 研究室内の照明が赤くなった。

「何だ?」

 ケナムが大声を挙げた。

 私が船の共有感覚空間に接続すると、船の免疫システムが研究室に対して警報を出していた。

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