6−2: 大探査2−2
探査機は夜の側へと移動した。途中、モニュメントの一つの上を通過しようとした。
「ちょっとそこで止めてくれ」
エズラが提案した。
「モニュメントのあたりを拡大してくれ」
何が見えた?
「ただの大気のゆらぎかもしれないが」
エズラの答えの間にも映像が拡大される。モニュメントの横に明滅する大きな光がある。大気のゆらぎではないように見える。モニュメントの横に火があり、その横には建物がある。火の上を布か板かはわからないが覆っている。その覆いが縦になり横になり、火の光を通したり遮ったりしている。その覆いは、横の建物に何本かの棒で繋がっている。
「これは何をやっているんだ?」
ラバル=エズラとして全員に訊ねた。
ヴェールコール人も繋がり、検討の結果出た答は光通信だった。
「問題は内容か」
エズラ呟く。
「どうやって覆いを制御している」
私が呟いた。
互いに、呟く内容はむしろ逆だったように感じた。
だが、ここの言語体系がわからなければ、解読は難しいだろう。それに、もし、二つのモニュメントの勢力が敵対している場合、片方のみに性急に接触を取ることは問題を引き起こしかねない。
惑星規模で、言語体系の収集と分析を行なう必要があるだろう。数日の時間が必要になりそうだ。
「やはり接続部分の調整が必要だと思うが」
ローガが唐突に言った。
「なぜだ?」
ラバル=エズラとして答えた。
「先程の疑問は、むしろ逆なのではないかと思う」
私たちは答えられなかった。
「とくにラバルだ。君が疑問を呟いた時、メカニズムへの疑問とともに、いくつかメカニズムが思い浮かんでいただろう?」
確かにそのとおりだった。
「いや、メカニズムと言っても単純なものが浮かんだだけだが」
「本当にそう言えるか? 何なら私の記憶から再生することもできるが」
「見せてもらおう」
単純な好奇心からラバル=エズラとして答えた。
再生された記憶の奥には、機械式計算機のイメージがあった。
「これはラバルにとって普通に思いつくものなのか?」
「テランの記録も知っている。それにテランとエランの共通の過去なんだ。思いついたとしても不思議ではないだろう」
ローガはしばらく沈黙した。
「それに、ラバルにとってはむしろ物珍しいものだ。印象に残り、想起されたとしても不思議ではないだろう」
エズラはそう言ったが、幾らかの疑念、あるいは不安もそこにはあった。
「その時のトラフィックを見てみよう」
ローガはそう言うと、データを感覚に割り込ませた。ラバルからテランの探査船への問い合わせが大きく増えていた。
「これは意識してやったものではないな? 君たちが共有感覚空間やサイバースペースを使う時に意識するのとは違うな?」
私は、ラバルは答えられなかった。
「君たちがなぜ接続部分の調整を拒むのか、その根底にある気持はわかるように思う」
今度はラバル=エズラとして黙るしかなかった。
「君たちはおそらく互いを理解しようとしているのだろう。それは必要なことだ。だが、急ぐ必要はない。むしろ急ぐのは危険だろう」
ラバル=エズラとして黙り続けた。
「君たちが地球で常に接続していた時期があるのは知っている。それがもたらしたものも。そしてそこから抜け出したことも。抜け出したことがもたらしたものも。だが、抜け出したことを過信しているのではないか? それはもうずいぶん昔のことなのに」
やはりラバル=エズラとして答えられなかった。
「βの探査の後、一旦ナブロスに戻ろう。そこで接続部分を調査し、調整しよう。いま君たちの船にあるものだけではなく、すべてを」
「わかった。君たちがそう言うのなら、おそらく必要なのだろう」
ラバル=エズラとしてやっとの思いで答えた。
数日が経ち、β-1における言語体系の分析が行なわれた。β-1は豊かな言語を持つ惑星だった。昔の地球のように。
また、複数の文化圏があった。
これらの豊かさはモニュメントが二つあることに由来するのだろうか。
だが、そこでまた疑問が浮かぶ。なぜこれまでは一つのモニュメントだったのだろうか。文化的豊かさが、モニュメントの数に結局は由来するのだとしたら、一つだけのモニュメントであったということはそれを意図的に制限していたのだろうか。
そして、β-1ではいつモニュメントからの最後の教えが読み出されたのか。
このような疑問を私はまた手に包み、共有感覚空間からしっかりと隔離した。
二つのモニュメントの両方から光通信と思われることが行なわれていた。光の明滅も同じだった。
私たち探査隊は、最初の接触をどう行なうかを検討した。ともかく、同時に接触すること。そしてテランとエランで手分けをしない方がいいだろうという結果になった。そこから、β-1の文明のありかたから、テランが接触に当たるのが適切だろうという結果になった。
しばらくの後、テランの母船から二隻の降下船が離れて行った。




