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肩越しの青空  作者: 蒲公英
その空の色を
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その1

航空自衛隊の基地の隣に位置するその公園は、展望台から夜景を見下ろすことができる。

そろそろ、夜に出歩くにはコートが必要かも知れない。

暖かいコーヒー入りのポットを持って、あたしと昭文は展望台に立っていた。

冬のはじまりの空は澄んでいて、冷たい空気が気持ちいい。

体温の高い昭文が、あたしの身体を抱えるように歩く。


「綺麗。その場に立つと、ただの住宅街なのにね」

「違いないや。で、いつ引っ越してくる?」

「はい?」

なんですか、その脈絡のない話の振り方は。

「俺のところでいいだろ?とりあえず二部屋あるし、生活用品揃ってるし」

「・・・あたし、一緒に住むって言った?」

「言わなくても、もうわかってんじゃん」

はい、こういう理論の人でしたもんね。


いきなり手を掴まれて、左手の薬指に通されたのは、銀色に光るリングだ。

「何、これ。ブカブカなんですけど」

「親から回って来たもんだ。結婚相手連れて来いって」

親にも、もう話したんですか。

あたし、承諾の言葉は口にしてないと思うけど。

「サイズ直して、しとけ。虫除けだから」


こんな綺麗な場所まで来て、プロポーズらしきことをされてるのに、全然ロマンチックじゃない。

いつものジーンズ姿で、明日は友達と会うから、今日は家に帰るのだ。

どうせなら予告してくれれば、それなりの心構えで来たのに。

への字に結んじゃった口は、思いっきり不満を訴えてると思う。

優しくスイートにってのは期待できない相手でも、あたしもオンナノコなんだから、それなりに気分が・・・

「うわっ!」


これはいわゆる「お姫様抱っこ」ですね。

よくもまあ、ヒトの身体を、勝手に移動したり持ち上げたりするもんだ。

「決定事項に文句言うなよ。投げ落とすぞ」

「勝手なこと言うなっ!あたしにだって考えてることくらいっ!」

投げ落とされると困るので、首にしがみついたままの迫力ナシの抗議。

「ふうん?じゃ、何を考えてるのか聞かせてもらうことにしようか?」

「なんでもいいから、おろせっ!」

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