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異世怪談SIN魅深悔黒~アレストダレスの書~  作者: エイジGIREAL創龍鳳


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異世怪談SIN魅深悔黒~アレストダレスの書~1-3第一章「アバンの場合~Avant Accident~」③節

怪異に挑むは日常茶飯事

慣れた戦に手慣れた手段

気付けば背後に忍び寄る

己を挫く同類が証

怪異重なり憂鬱は常

ディーネ『またぁ・・・ぃらっしゃぁイ♪』

リュウレイ「…」





背後の大鳥居からではない。


頭の中に直接響く、”音”の様な声音。


舌先では無い、無機とも有機ともつかない、耳鳴りとも異なる忌まわしさの波形。


リュウレイ「……ふぅ」


リュウレイはまるで応えたくないと言った様子で、意趣返しめいた反応ためいきを返してしまう。

それからおもむろに振り返り、鳥居の内で歪む境界面に添えた手が、鍵を掛けるかの如くに、内向きへ九十度傾けられた。



ぴしっ



鈍いのか、甲高いのかも不明な、産声めいた”耳障り”が伝う、かいなに滲む汗。

次いで、周囲に噴霧されてしまう、灰色の霧状なナニか。


稲光が如き黒。

川の流るる旋律が舞い、周囲の色に悉くと染み籠む。


リュウレイ(慣れない景色…ですね

      コレも)


世界が反転している。


白と黒が滑る、モザイクの流動。


風のも、自身の動悸も届かない。


伝わるのは、骨身に伝う違和感。


リュウレイ「…ん」


異変が瞬く間に、眼下が一点へと吸い込まれた様にも思えば、いつまにか縮んだのかも解らない、二つ纏まりの小さなミニチュア。

鳥居の玩具匣がんぐばこと化した、【レガリア】とは異なる【呪具】に、リュウレイは手を伸ばして懐へと隠し仕舞う。


掴むを躊躇わなくなってから、ドレだけ経ったのだろう。


リュウレイ(目的の”モノ”は得ましたから…

      後はもう、向かうだけなのでしょうが)


今回の様な事例が、初めてなワケではない。


とはいえ、”対処法”はいつも、精神を磨り減らし、過度な集中を擁する【力技】。

侍としての研鑽が頼りな、死と隣り合わせの戦法を試みる事になる。

情報収集は心許ないが、だからこその用意に甘えるのも、侍の自立には遠い。


リュウレイ「せめてもう少し

ディーネ「ソンナときわぁ♡」

                    リュウレイ「っっ?!」


飛び跳ねるように反転しつつ、瞬の歩みで間合いを開く。

刀に手を掛け冷や汗に滲むも、相手の笑みは不敵に悦を示してしまう。


愉しまれ、弄ばれているかの如き状況。


おもしろくはない。


リュウレイ「いつ…出てきた?」

ディーネ「ダすのは・・・コ・レ」



鈴。



揺り動かされても、無音。

己が口調が排他的な厳しさを負っていると自覚する、奇妙に静寂な、間。


リュウレイ「……ナンですか、ソレ」

ディーネ「オマケ?かな~ぁ

     使ってみたら解るってゆぅ~かぁ~

     ”ャってみろ”・・・てかぁんじぃ?」


呪具に依る幽世カクリヨとの往来も無関係。

唐突なまでに現世うつしよへも自由自在。

リュウレイの【力技】も通じず、忍び這い寄る【混沌ウィッチオブ魔女テラカヲス】。


リュウレイ「…意味が分りません」


分別も糞もない。


ディーネに信頼を寄せたつもりも無いが、悪戯な行為で敵愾心を抱かされるつもりもないのだ。

譲渡に依って罠にハメるというのなら、彼女の”捜シモノ”とて円滑さを失われる以上、真偽は計りかねるも断る理由は薄い。


リュウレイ(さりとて…)


悪ふざけと呼ぶには不気味過ぎ、原理も道理も定かではない出没に、途方も無さを感ずれば警戒は余儀なくされる。

短くはない”付き合い”も、コノ様な意味不明が度重なれば、結果が伴っていようとも―。


ディーネ「味方の信用はシタマエ」


キリリとした貌に露骨な棒読み。


―頭を抱えるばかり。


リュウレイ「…今更、ですか」

ディーネ「ぱぁどぅん゛ぅ?」


信頼を口にするなと言いたい。


故に呟きも聞こえているディーネの態度を、遮るべく差し出された汗腺滲む掌。

鼻を擽られた愉悦に、ニヤリと歪んだ口の端と瞳孔で、竦まされそうになりながらも、掴むは悪質からの”譲渡物おくりもの”。


摘まんでは訝しみに覗き見上げて気付く、深い黒なる一境界線。


リュウレイ「中に何も……”居ません”、か」


くすんだ灰の鈴。


ナカにはナニもハイっていない。


確認で視界を滑らせればもう、隣には無人の草原くさはら

そもそも、先程まで話していた相手を、人の類いとは思えないのだが、今はソウ評するより、ない。


リュウレイ「……お借り致しますよ」


どうせ聴いているのだろう?―とでも気怠げに溢す疲労感。

唐突に現れた存在が、唐突に消え去るコトなど、不思議でもナンでも無かろうなのだ。


溜息を伴奏に爪弾く指先で、鞘の下緒さげおに結ばれた空鈴からすず


刀の固定を確かめてみても、傍らと同じで応えは鳴り響かない。


リュウレイ「はぁ……肩の力くらいは、抜いて頂けたのでしょうか」


覗き見も盗み聞きも、独り言を会話としてくれる。

遺跡の【怨霊】とやらへ、緊張する程の警戒心は、もう欠片かけらも無い。


ソレ以上に悍ましく、不可解な相手と、今を以て渡り合っているのだ。


飲み屋で酔って交わすかの、傍目に聞けば与太話がノリ。

S級クエストの上位モンスターよりも、余程油断のならない相手となら既に、十二分じゅうにぶんなまで慣らされてしまっているのだ―とも、言い切れる。


リュウレイ(ディーネさんを相手にするよりは、まぁ

      楽な相手と思いますけど)


警戒を余儀なくされる相手に、再三酷く驚かされっぱなし。


裏を返してしまえば、斯様に情けない姿も、反証的に安心材料が一つ。

コレまでもコノ後も、彼女ほど厳しい相手ではなかろうなどと思えてしまうのだから、少しは心の余裕も生まれてくれる。


半ば裏ボスとの前哨戦を済ませた状態。


一方的な対応後にも生きていられる事実は、抗い様のある普段の死線を、冷静に茶飯事さはんじと応じる糧ともなるのだろう。

強張りが適度に解れた肩は、刃を振るうのにも躊躇い無く動く。

コレ以上の強敵なら、次に訪れたりもしない。



さぁ…



大気鳴動。


瞬きの間に、振り抜かれたやいば


草が踊り、風が流れ、音が後から木々へと響く。


葉が奏でるは送り歌。


厳かに振るった刀身は、巨体と相まっては古典舞踊の所作が如く、煌めき纏う鉄扇を彷彿とさせていた。


リュウレイ「畏れへの一人舞台も…

      ”ここまで”と致しましょう」


後はもう、してすだけ。


”不条理な相手”には、パズルや推理ゲームが如き手順も、ノウハウも保障は無い。

事前準備をやっておいて損は無いが、固執しても効果は薄い状況など、稀に山ほどある。


幽世カクリヨからの土産は、むしろ過大な備え。


リュウレイ「いざ」




街を出て暫く―遺跡への道すがら。


リュウレイは黙したままに、厳格な足を運ぶ。


一日二日の調査より、頼るは積年の知識と修練。

怯む理由は、ソレ程無い。


リュウレイ「足跡…ですね」


高い視線からでも気付ける、複数の足跡。

Sランク冒険者の噂が、他の冒険者を焚き付けてしまったのかと勘繰る、功を焦った者達が痕跡は気怠い。

自業自得としかイイ様も無いが、目的地で遭遇したと言うのならば、助けなくてはならないのだろうか。


名声がもたらす義務には、どうにも致し方なし。


リュウレイ「”手遅れ”である方が楽にもなるのでしょうけど」


厳しい物言いをするが、牛歩にはなれない。

平静なままに一定のペースで、近付くは危険地帯。


情報を鑑みてしまえば、遺跡の外でも油断はできないだろう。


街中で断裂した勇者、アバン。

狂乱のままに暴れたアドンをも思い返せば、一度怨霊が影響下に及んだ男達は、間違いなくダンジョン外でも死に至らしめられているのだ。

臓腑を曝いたと思われるアデラインも考慮したなら、現地に赴いた他の女達が末路も、同様に無残なものなのだろうと推察できる。


リュウレイ(とはいえ…一度街まで送り返している様にも

      ”観え”ますからね)


遺体なども観察すれば、アーノルドの様に現地で死ぬ者だけでは終わらず、帰還してから朽ち果てる者も多いのは明白。

【怨霊】が”ソウである”以上、恨む目的に応じた何かが、街や教会に有ったのではないかとさえ思えてしまう。


遺体すら見つからない、”行方不明”も気になる。


リュウレイ(……望ましくはありませんが

      ”触れたら”解るのでしょうけど)


【力技】に依りがちな理由。

闘うコトもまた、”聞き取り”の一つ。


リュウレイ「此度も皮一枚で…済んで頂きたいですね」



きゅっ



捻るは取り出されし小瓶。


ナカにハイった液体を飲み干そうとすれば、喉に絡んだ甘苦あまにがさに―むせる。


リュウレイ(コレに頼るのも癪な味ですが…背に腹には代えられませんし

      …んくっ、

      ”使い捨て”る…にも、必要。ですから…ね)


【力技】に加えた、【備え】。

無くてもドウニカ対処が叶うなど、慢心する油断は皆無。


溢れそうな”水増し”に、酔わされてしまいそう。


アイテム便りが情けないが、己の自力のみを盲信などできはしないのだ。

自己の至らなさなど、考えを巡らせても、取れる手段を選択したイイワケは嵩む。

斯様にそぞろな悔しい呟きを、溜息とひたすら混ぜ重ねて行く合間に、辿り着いたる遺跡が手前。


リュウレイ「”やはり”…ですが」


廃虚と化した壁、柱。

墓標代わりに寄りかかるのは、動くことの叶わなくなった先行者ぼうけんしゃたち。


分かたれた断片程では無いが、個の数は思いの外多い。


文字通りに数の暴力で、強引に解決を図ったとでも言うのだろうか?

自身の命も捨て駒に省みないと言う、無造作に転がった顛末の束は、少々いびつな命令系統や、差し迫った強行軍をも感じ取りる由縁。

【怨霊】という怪異に付き合い続けていれば、近しい【前例】も無いわけでは無い以上、疑いは自身の依頼者にも当然向けておく。


報酬の取り漏れも、全く無い結末では無いのだ。


メインジョブではない【霊媒師】めいた活動故に、依頼自体にも信がおけないのは当然。

転がる骸と同様に、自身も捨て駒にされかねない事変。

常識の埒外とは常々、難儀な稼業でもある。


リュウレイ「…気配が無いのもイツモノコト。と

      倒れている方々も、暗殺者ギルドの方ばかりですか」


ターンアンデッド相当の量産品マジックアイテムも、複数の使用が散見されていた。

聖水、十字架、聖書に銀装備。

洗礼済の衣や、魔法石の類いもまばらに、手当たり次第と観られる複数の対処療法。


既に残骸に等しいが、僅かに無事な品だけは、貴重な収入源にもなる。


リュウレイ「終わったら頂きますので、拝むのはそのおりに」


骸達に向けた呟きは、前を見据えた視線のままに。

既に”コノ場”は死線である以上、首も手首も、戦闘態勢を解く事はまるで無粋。



ざっざっざっ


風が止めば、自身の足音が伴奏と響く。

心の臓は落ち着いており、さながら抑揚の無いドラムが如し。

呼吸は安定、定期的に鼻から溢す大気が、兜の中で繰り返した反響。



静かだ。


いつも通りの、戦前いくさまえに聞かされる、静粛はオーケストラ。


ストり”はメトロノーム。


鎧を撫でる度、囁く静かな明鏡止水。


衣擦れは微かな弦楽、低音軋む外殻よろいの継ぎ目。



リュウレイ「……」



入口まで、ナニもナシ。


ぽっ…   ぽっ…


曇り空から、消え入りそうな雨音あまおと


合わせるかの如くに、慎重な足運び。



階段が見える。


他の魔物すら居ないのは、生き残った者達が先陣を切り拓いた証なのだろう。

リポップにはまだ、間が有ろうと言うのが”とてもありがたい”。


余計な襲撃が無いのなら、集中力は全て【怨霊】へと向けられる。



ぴしっ…   ぽとっ…


湿気により、遺跡の何処かに亀裂が入った音。

暫くすれば、雨漏りの滴りも耳へと届く。

戦場に地獄耳は役立つが、過ぎれば情報過多。

要不要の選別には慣れているし、つま先は段差を下るべく、小気味良く石畳を軽く蹴る。



進めば浅い、地下階層。


”取りこぼし”の矮小なモンスターか、他からの”紛れ込み”か。

報告には無かった【ゴブリン】を数匹見つけ、叫ばれる前に刹那で通り過ぎて行ったリュウレイ。



瞬殺無音。



遅れて、噴き出す血潮の音だけが、微かな残響であろう。

和洋折衷フルプレートメイルに、あるまじき身のこなし。

刀を戻す音だけが、中身の見えない鈴の代わりに、結末を示す音色が狼煙。


リュウレイ「……スゥ」


血煙は薫る。


歯の隙間を抜けていく様に、静かで軽い脱力と、穢れを溢し祓った吐息。

複数並んだ”綺麗な断面”を見向きもせず、静止した”物”達を後回しに進む。


リュウレイ(血の臭いに迷い込んだのでしょうか、

      もしくは住処すみかを求めていたとでも

      言った所なのでしょう…)


考えを澱みと吐き出し、”余計”は脳細胞から削ぎ落とすのみ。



更に深く。


より深く。


深淵と呼ぶほどでは無いが、曲がりなりにも遺跡の様相。

奥まった場所は、荘厳さと、当時の宗教建築的要素も、確かに垣間見えてくる。

視線を感じてしまいそうな彫像。

灯りを点すべく燭台の痕。


命が芽吹くが如く再生するダンジョンも、”そうなってしまう”前は、古代の神殿だったのだろうか?


それとも、ソノ様にこさえた遊興のくせか、はたまたダンジョンという概念が、跡地を喰ろうて形態模倣した佇まいか。

学問として体系化されている噂は聞き及ぶも、西方の教育機関には付き合いが薄い以上、予測や推察は詮無きコトでもある。



今見据えるべきは、一つ。


リュウレイ「情報通りなら…次で最奥さいおう


すっ…   すすっ…


これまでよりも抑えた足運び。


音を立てぬ様に忍ぶも、煤払いめいて仄かに舞う埃は、流石に止めようも無い。


人の気付かぬ自然は摂理。


倣う左手は鞘。


無意識に抜刀の姿勢。




広い。




天井も、やたらと高い。




【A Ast】のメンバーが、水晶球越しの映像で”ボス部屋”と呼んでいた空間。

リッチのみならず、ドラゴンゾンビの目撃例もあるだけに、スペースは十分に有る。


崩れた瓦礫は、大型ボス相手に想定の上で、設えられたと思える程度におあつらえ向き。


天の采配が容易せしめたかに思える戦場は、常々違和感を有す程に人工物臭い。


リュウレイ(花道…からの、

      ”廻り舞台”ですね)


舞台装置レイドボス”の動きも無い。


さりとて、人の戦争に切っ先を向け合う以上の、緊張感を止めるのは悪手。




ただ、耳を澄ます。




”骸”は当然、喋らない。


教会関係者も眺めているのだろうか?


アーノルドだった定点カメラが、腐食に歪み掛けたレンズをこちらに向けている。


遮蔽の向こうも物音はs




いる。




空間の更に奥。

ボス部屋の最奥も端の端。

すきま風や雫にも劣る、力無きか細い呼吸。


「ぅ…ぁ…」

リュウレイ「…生存者?、か?」


霊的な気配は?



さわられた”のが解る程度の、薄らとした怖気。


リュウレイ「生きて…いま

「イヤアアアアアアアアア!!!」


声を掛けるも、遮るのは嘆き。

直後に全身を抱えた女アサシンとおぼしき相手は、初心うぶな乙女のように己を抱きかかえたまま、逃げるように這いつくばり沼田打ぬたうつ。



畏れに―沈んでいるのか。


藻掻き、足掻く、そのかおは、やや離れた場所に転がる”三つの肉片だんせい”に、縋るべく向けられたまま。


リュウレイ(”アレ”と…浅からぬえにし、か)


遠目にも解る、装飾品の類似。


PTパーティメンバーか、それ以上か。


気持ちは解らなくも無いが、こうまで叫び続けられていては、集中も削がれてしまう。


リュウレイ「すまない」

「っ……」


素早く組み付いて、締め落とし。

溺れる者に”深淵のミイラ”とされるのは、ミイラ取りには避けたい事態。

女アサシンには目立った外傷も無かった以上、手慣れた動きは躊躇いなく完遂される。



為れば、警戒は元通り。


生存者を運ぶのも、”終わった後”で十分な事だろう。

焦る必要が有るのなら、彼女も既に”終わった痕”の、筈なのだから。



リュウレイ(……静かだ)


喋る事の無い大きな肉片と、急に叫んで喚くばかりの命。

”見つかれば死”というルールで無いのなら、救出するのに猶予が残されていると推察できる以上、最低限の動きで周囲を推し量るだけ。

仮に【怨霊】が、生存者は後から来た者への”恐怖演出みせしめ”と、意地汚く陶酔を得る為の準備であったならば、恨みの程度も”それなり”であろうか。



待つだけの時間。


動き続ける仕事よりも、苦痛を覚えてしまうのは、鍛える悦びすら覚えてしまった、体躯と身の上だからとも言える。

腹筋に籠もる深層の血流は、蓄積された出力が裏付け。

表層彩りし、肌上の升目ますめも、引き締まった線で滲んだ汗を導く。



大きな呼吸。


気持ちを改めたからと言って、タイミング良く現れてなどくれない。



リュウレイ(……この人を連れて、一度引き返しましょうか

      いえ、それも油断が過ぎますね)


既に相手の懐―の、筈。


静か過ぎる物音ばかりが、徒労を嘲笑うかの如く耳奥へと残る。



リュウレイ(…アーノルド殿の視界、教会の方にも声をおかけしませんと

      ですか)


遺された鼓膜も利用が叶う、【遠見の水晶球】。

状況報告ができるというのなら、耳打ちに向かうも一つの手なのだろう。

向かうは”元”アーノルドの傍ら。

しゃがみ込んで囁くべく、顔を寄せんとかが

ちりん


「   」

                     リュウレイ「っ!!」


咄嗟の鈴の

嫌な怖気に飛び退けば、元居た場所には顔を寄せられていたであろう”痕跡いちどり”。

白いワンピースと髪の毛に隠された口元が、微かに開いているのも視界に窺える。


リュウレイ「空鈴からすずと思って…居たのですけれど、ね」


抜刀体勢を維持したまま、見据えるは空間の異物。

見えてはいるが、在るべき気配はまるで無い。

影も無ければ、僅かな灯りを遮蔽する様子も無い。

空気の流れも、滴る水の雫も、影響無く地を奏でて、小さく飛沫く、存在感のウツロ


リュウレイ(ディーネ…さんは、驚かせてくれますね)


初動が一番危うい。


大概は、気付かされた瞬間に、全てが遅いのだ。


だからこそ、事前に飲んでおく、力量をブーストする【備え】。




ディゾルディーネ=ビェスパリャドク曰く、白銀しろがねの蜂蜜酒―(かっこかり)。




とは言え、ソレでも不足となって、先手を赦そうモノならば僅かに、”痛手”をも伴う。

ソレこそが切迫せしめる戦の合図。


鳴る筈も無き空鈴からすずが用意してくれた、些細な猶予に感謝をも禁じ得ないが、先の挙動が後の余韻にも、相手が応じる様子は窺えない。


リュウレイ(重さも変わりませんし、”空洞は変わりません”か)


極僅かな異質への寒気で、鈴の感触に意識を向けても、”対象”の口元なら微かに開いたまま。

驚いて呆けているのかとも思いたいが、コトはソウ、簡単な”噺”でも無い。



反魂の魔法も効かない。



聖なる御業が加護も、影響を受けている様子は無い。



次に備えて待

「     」リュウレイ「っ!」


輝く空間の、”爆ぜ”。


瞬きをせずとも唐突に、目の前に現出した姿に半端な抜刀姿勢が盾を成す。


思考や観察どころか、観測さえも赦さぬ超反応。


飲んだ液体で加速して、鋭くした神経系の反射便りに過ぎない、リュウレイの【力技】。


リュウレイ(待ってはくれません…ね!)


鍔競り合いが如き制動を経て、残った片腕を警戒しつつ間合いを取る侍。

くうを切った【怨霊】が掌と、力無く項垂れし止まった姿勢に続く、互いの拮抗状態。

だらりと下げられた細腕と、肩を落とせし猫背気味。

半開きの口角は、呟きも吐息も溢れない。


だが集中力も覚醒している。


過去にこなした依頼と、喉の蘞辛いがらっぽさまで相変わらずの、互いに魅せる”突然”が押収。


リュウレイ(狡いな)


いつもいつも、噂に聞いてばかりの【チートスキル】とやらを彷彿とさせ、腹立たしさも胸の奥。

転移魔法も痕跡も、マナの香りの一つも無い。

レガリアの起動音も、大魔法の詠唱も無いのだ。


【呪具】の方が近しいと思える、”向こう側”を感じてしまいそうな身のこなし。


リュウレイ(ぃゃ……ソレは私も、か)


己の無事を保証してくれていたのも、エクトプラズムめいた”【呪具】っぽい”液体。

【怨霊】よりも卑劣な己を、嗤いに誹り、同類と嘲る。



最早思考はいらない。

必須なのはただ超反応のみ。

触れて、混ざれば、己は水泡。

努力も研鑽も、深い浸透で凌駕する―【敵】。


「   」


不気味だ。


薄気味も悪い。


毎回相手どる度に、稼業と選んだ己までも、恨めしく哀れに思えてしまう。


生き方は他にもあった筈なのかもしれないが、ドコか死線を愉悦と嗜む己も、否定し切れたりなどはしない。



頼りは―一刀。



リュウレイ「……」


力を示すは侍の矜持。

穏やかに、ただ、音も無く。

ゆるりと抜いた、大気滑りし霊刀が閃き。

関節が脱力も適度に、そっと離した左手の動きは、下緒さげおの鈴を揺らせど無音。


リュウレイ「ふぅ」


息を吐く音だけが、空間に優しく響く。


【怨霊】は動か


リュウレイ(消える…か)

「   」


思った直後、すぐ隣。

予備動作も、如何なる物理予兆も得られない。

寄る辺は”謎の汁にて拡大せし”、超常成り得た戦いの勘。

攻め手を著しく悟すのは、”ただのドーピング”と求道どりょくの末、得られし鮮烈な感覚センス


「   」

    リュウレイ「…」


ソウ思えば反対側。

既にリュウレイも、ソコには居ない。


      「   」

リュウレイ「……」

「   」


前に、後ろに、最低限の挙動が、迫る指先をすり抜ける。


「         」

               リュウレイ「…」


背後から両手もろてを広げた覆い被さり。

すり足と呼ぶには鋭い起動で、滑りかわしたリュウレイの体捌き。


消える。


現れて、また消えて。


緩急と、連撃を、不揃いに繰り返す、【怨霊】。


ふとした拍子に静止した時間だけが、苛立ちを示している様にも思えてしまう。




奇妙な一次停止。

動きはひたすら止まったまま。

消える気配は無く、ただ睨んでいる時間が費やされる。


BGMは廃虚の崩れ。

砂が遊び、湿気が爛れ、目薬の様に唐突な一雫が乱反射。


喉に、意思が嘔吐えずく。


リュウレイ「……貴殿あなたの”理由わけは”存じ上げませんが」


「   」


リュウレイ「コレも依頼」



エンチャント武器も届かぬ相手―を、防ぎたまうた一つのやいば


霊刀は、真っ直ぐに遮ったのだ。


構えは、正中線。






「ああああああああああああっ!!!」

リュウレイ「っ!?しまっ「…」  」


先の女アサシンが、絶叫。


気取けどってしまった意識を隙に、右後方より指先が浸食してクる。


リュウレイの頭蓋と重なり、脳へと届いた爪の先。


リュウレイ「っぅウ゛っ!?」バチィッ

                       「   」


次の瞬間、【怨霊】は弾かれていた。

リュウレイの懐より零れて落ちる、灰と化す途中の【札】とおぼしき小さな紙片。


ただ一度の使い捨て。


【チートスキル】まがいの【怨霊】に対し、【力技】にて挑める”裏付け”の一枚。

大量に持てばより強力な念にも効果的なカウンターとなるが、一瞬で全てが同時起動し、勝手に己の精神力をも浪費してしまう、諸刃の【チートアイテム】である。


もっとも、飲まされた液体にがみのおかげで、摩耗という程には負荷がかからない。


リュウレイ(くぅぅっ……ぁ、ぅ゛??)


だが、”感応が余波”は別問題。

”常備薬”が補うのは、体力と精神力の余剰のみである。

混ざり合ってしまった瞬間に、脳を蝕む苛烈な映像群。

見覚え有る者達に、歪な教会関係者の微笑み。


聖衣せいいを脱ぎ去った、醜く太ましい、老衰に崩れた腹のたるみも並ぶ。


リュウレイ(私は……ナニ、を)


見せられた景色から感じ取るのは、悲壮と憤怒。

まるで一時の歓びは仮初めでしか無かったのかと落胆させられ、薄汚れた世界でより一層の苦痛に、貶められてしまったかの様。

流れてきた感情は、即ち―。


「ゥ・・・ァ」


【怨霊】が呻く。


リュウレイ(―切っ掛け)


「ァァ・・・ィ゛ アアア゛アア゛」


女アサシンは倒れ伏したまま。

叫びは猛々しくも、泣き崩れている様にも思える。


手がかりは掴んだのだ。


今はただ、”一時凌ぎ”に、全てを賭ける。




からん




鞘が滑る。


遺跡最奥は鳴る。


空鈴からすず踊るるも、黙して語ラズ。


リュウレイ「……御神楽”流 霊”刀」

「ア゛ア゛ア゛ア゛」


掻き毟るソレが、指の隙間から見やる。

コレまでの唐突ではない、嘆く女のヒステリー。

走り出す前兆、腕も振りかぶる、露骨。


先の読める―ヒトの動き。



舞禍「魅魍みもう 舞禍まいか…参る!!」



崩れる体幹。

倒れそうな前傾。

掌をすり抜ける、【鎧飾りの毛(クレスト)】。



「ア゛・・・

    リュウレイ「すまない」     ゥ゛」


声が紡がれたときにはもう、ソレは二つの煙。


分かたれた半透明は、消えゆく霞の様におぼろ

       ―」

「―


ふぉんっ


一薙ぎの、”祓い”。


塵芥ちりあくたも、もう見えない。




もう、身体も軽い。




リュウレイ「……っ

      ん、終わりました…ね」


独り言は、確かめたい心情の表れ。

舞禍を名乗った瞬間の佇まいは薄れ、”リュウレイとして”鞘を拾う。


ずぬるっ


微妙に嫌な音を立てつつ、兜は頭巾コイフごと落ちてしまっていた。

固定部ベルヴェルの紐が緩んでしまっていたのも有ろうが、飛んでいったリベットもまた、哀愁を誘う。


ばらけたのは、飾り毛(クレスト)よりも芳醇な毛髪。

黒いポニーテールが描いた軌跡は、背丈以上の髪が長さを証明している。



もわっ



湯気が薫る、艶めかしい香ばしさ。


舞禍「……っと、しまらないですね

   これは」

「ぁ……」


気付けば、女アサシンが意識を取り戻したのか、こちらを呆然と眺めていた。

溜息を吐き、静かに歩み寄り、屈んだ196cmセンチメートル


空いた左手の人差し指を口元に、添えてほほえむ”麗しの面構え”。


舞禍「この事は、どうかご内密に」




そうして女アサシンを送り届けるべく、彼女を背に歩むフルフェイス。

”リュウレイとして”の出で立ちに還り、Sランク冒険者としての堂々たる歩みが、街への帰路を進む。


兜の紐はその場凌ぎ。


鞘の紐はほどく気にならないので、遺体から御拝借ごはいしゃくと至った、十字架ろざりおの細い鎖は頑丈な頼り甲斐。

ついでにちゃっかり”自発的な報酬も回収”し、教会に踏み倒された場合の備えも、万全となっている。


リュウレイ「……貴女も、見たのでしょうか?」

「……ヒッ……」


背負った女性に声を掛けてしまえば、少々失策だったのではと、己の考え無しを猛省せざるを得ない。

”思い出して”、怯えてしまっているのだろうか?

自身が垣間見てしまった絵面えずらを思えば、【怨霊】にさわられてしまったであろう、女アサシンが”疑似体験”に至っていたコトも、容易に判断がつく。


【札】への感謝も禁じ得ない―が。


リュウレイ「また…”貰いに行かないと”ですよね…」


どうせ見たモノも、説明を求められるのだろう。

せめてもの救いは、兜を被り直すまでの間は、アーノルドの方角を向かなかった事でもあるのだ。


教会が己の素性に、つぶさな認識を伴う事後なども、無い。


見せられてしまった”記憶”も、司教殿へと伺う義理はナシ。



ボールディ「おおお~い」


アサシン達を追ってか、どうにか待つだけなど耐え難かったのか。

息を切らし気味なボールディ達が、白みかけた帰り道の途中に、手を振っては駆け寄って来る。


当面いまは凌いだのだ。



”後のコトは”、いずれ【解決】も叶う。





ディーネ「コイツ・・・脳内に直接っ・・・」


気が滅入る。


舞禍「…」

ディーネ「は、ドウでしたかぁぁ~?」


真面目な事後報告も、逆撫でに弄ばれているのかの様。

とは言え、【札】を再装填したければ、ディーネに頼る外無い上、空鈴からすずの件も謝意を述べねばならない。


律儀か。


聞き取りは兜を脱いでから―などと指摘され、紅茶の一杯を出されながらで、語るは”その後の展開”。

深神楽流 霊刀―リュウレイとしての依頼は終え、今はディーネの腐れ縁、魅魍みもう 舞禍まいかとしての、会談を求められていたのだ。


舞禍「ドウもコウも…最悪なコト、極まりませんね

   ナンナンですか、アレは

   …そもそも、【遠見の水晶球】。

   アナタはソレで、ご存じだったのではないですか?」


問い質すは、【怨霊】が【記憶】。


ディーネ「ん~竿役がおっさんとか爺ばかりってのは

     性癖に合いませんのコトよ?オーッホッホ」


左手を添えての高笑い。


だからソノ仕草は一体ナンのマネか。


舞禍「……今回の、【方】は

   ”犠牲者”だった…と?

   ……はぁ

   先が思いやられますね。

   奴隷売買や娼館への売り飛ばし……挙げてしまえば

   【怨霊】に”原因”など、世の中に溢れかえって

ディーネ「卸せる程問屋に在庫は無い( ⩌⩊⩌)✧キリッ」




舞禍「東の言い回しを用いたつもりですか

   ソウは問屋が卸さないと言うなら

ディーネ「卸”せ”ないのよ

     絶対数が足りないもの・・・・・・まぁ

     増えないとは言わないし、匙加減次第なんだけど・・・ね♪」


嬉しそうだ。


コウユウ時―は、碌な返答が返ってこない。


教会や権力に、性的搾取された女性の恨み節。


今回の【怨霊】化の由来がソレだけでは無いと言うなら、他にナニがあるのだろうか?


ディーネ「そろそろ・・・教えておいてもイイのかしらねぇ

     私には一瞬だが!・・・舞禍ちゃんとはもう十年近い?シ?」

舞禍「……過ぎてますよ、もう」

ディーネ「よろしい、ならば解説だ」

舞禍「言い回しも統一頂けますか?」


ガン無視はお互い様。


『ドヤァ・・・』と心の中に直接言われた気がするが、構っていては時間が無駄になる。


ディーネ「で・・・【チート】臭いなぁ。とか

     思ったりなんかしちゃったりしてないどすえ?」


身体を折り曲げ、両手の人差し指でツンツンと舞禍を指差し、口調と裏腹に笑っていない視線。

混沌の態度で言い放たれた単語は、そもそもに”幽世カクリヨの外”が、世界の【異物】を想起させる。


舞禍「ソウ…ですね。

   転移魔法の様な痕跡も無い戦い方…常々、

   噂に聞き及ぶ【転生者】とか

   神や王権の采配で【異世界転移】させられたとか言う

   世迷い言めいた【チートスキル】なんかを、想記もさせられます…けど」


言ってから、舞禍はディーネをしげしげと見つめていた。

眉唾物な話題より、眼前のナニかの方が、珍妙不可思議で妖しくも思えてしまう。


舞禍「遭った事も…無い、”選ばれし者”…なん、て」

ディーネ「んっんー?”気付き”が有るのならぁ

     素直な方が・・・濡れる。わよぉ?」

舞禍「濡れるな、拭け……いえ、すみません

   ええと、です…ね

   持って回った言い回しも、いい加減に止めて欲しいのですが」

ディーネ「だが断・・・ハイソコカタナハナシテー」


語調はオタガイサマと割り切れない。

抜刀しそうな勢いに、カタコトで両掌を晒し振った苦笑いのディーネ。


ふと、頭上に猛烈な怖気を感じてしまっていた気もするが、緊張感を否するべく、舞禍は静かに抜刀の構えをほどく。


舞禍「…で。」

ディーネ「口調口調、キャラ崩壊・・・はいすみませんでした

     睨むのらめぇ」


大きな溜息が溢れる。


舞禍「単刀直

ディーネ「元【転生者】」

舞禍「……は?」


遮られて浴びた冷や水。

しかしながら経験則に、まるで予想が無かったというワケでも無い。

初耳だと態度を示せそうにも、今言ってやったという堂々とした腕組みが、まさに目の前の得意気。


舞禍「~~~~~っ」


さりとて、永い時を重ねた混沌の魔女には刹那に等しいとしても、自らと過ごした十年以上の年月としつきが合間に、言っておいてくれても良かったのでは無いかと、目眩さえ覚えた魂の言の葉。


ソレは、異世界からの来訪者が―【存在証明】。



”異界より招かれた魂だけが、【怨霊】に成り得る。”



行間を読んでしまえば、直前に否定しようとした結論。

古代文明や神の存在よりも、幽世カクリヨ外の現世うつしよ―”この世界”に過ごす者達には、異端にして異質なる異邦の源泉。

神々はソレを知りつつ、召喚を繰り返し続けているのだろうか?

【転移者】を招く国々とて、既知か無知かも推し量りかねる。


舞禍「【怨霊】全てが…【異世界転生者】、だと?」

ディーネ「舞禍ちゃん達ぃ~、東国の【呪具】だってぇ・・・

     ソレと同じ、”アッチ”の由縁よん♪」


幾度とない”出遭い”も、都度対処に用いていた”寄る辺”も、ソウ。

少なくとも霊刀が故郷ふるさとは、知らぬ存ぜぬとは決して聞き届けられない。


生業なりわいは、精通せいつうの証。


自身の出自までも、向こう側に近しいと気付かされてしまえば、己が眼前の魔女とも、無慈悲な同類に思えてしまう。

ああ無常、コトココに極まれり、度し難し。


ディーネ「んっんー?・・・なーんかぁ

     変なトコ・・・っていうかぁ

     ダイブ度し難ぇクッソむぅかつくコトぉ、

     考えとりやがりませんのコトですわゾイっ!」

舞禍「だから…統一、してくれ…」


口調も怒気も表情もまばら。


目と鼻の先の態度が如く、世界も空間も統一された一つなどでは―無い。


隣り合う異世界の数は?


”外なる神”は事態を知り得ているのか?


与えられた断片だけでも、酷いおぞましさを感じてしまうと共に、”捜し物”の契約にも改めて、愚かな蓄積と虫酸が走る。



コレでは―道化。



舞禍「……ならば、【アレストダレスの書】―オマエが求めるモノは

   世界すら

ディーネ「ソレは使い方次第よん?

     神にも悪魔にも・・・じゃなくって

     神を越えて悪魔を統べて、ケモケモしくって四騎士を越える?

     みたいな・・・まあ




     【悪霊】ぜんぶ、元の世界に還すのも簡単よ?」




舞禍「   」


普段なら咎めるオマエ呼ばわりも、平気な”ディーネちゃん”が憎らしい。

悪霊が引き起こす問題だけでも、存分に頭を抱えさせられる事態。

挙句に情報も不確かなモノを、探し続けさせられていたとネタ晴らしされた現状ピエロに、”脳が痛い”程殺意が湧きそうにもなるが、巡る思考は混沌かをすの極み。



全てが万事、”塞翁が馬”なら、ソレは―。


ディーネ「もろちん、溢れかえるコトもできちゃうんやけどぉ

     ソレはちょーっと、面倒過ぎてぇいやん♡なのよねぇ」

舞禍「……面倒。ですか」


ディーネがソウ言うのなら、ウソでは無いのだろう。

混沌の魔女がワガママに面倒がるなら、下手な誓約や宗教的教義より、国家の法が遵守される事よりも遙かにずっと、信用には足り得る言質。



ディーネ「―アナタの稼業も、お役御免。」

ぴくっ


ディーネの一言に、一瞬―舞禍の眉間が歪む。

思っていた、答え。なのだ。


舞禍「……

   確、かに…”契約内容”にも、一致しますね

   解りました。以降もお約束通りに」


打って変わって、静かに平静を繕われた、侍道の所作。

長年騙されていたかの様なショックも、滲み染みていた断片情報パズルピースからの微かな心構えと、目的に叶う算段が重ねられたのだ。



納得とは言い難いが、落としどころには必要充分。



下げる頭は和の嗜み。

今更断る理由など、舞禍―彼女には全く無い。

怪談よりも忌わしい気配が募れど、フォークロアや与太話以上の禍々しき力も、求めて彷徨う理由は潰えない。


リュウレイ(然らば)


旅は、続けるべきだ。

ソウする理由は今、強い楔と結ばれている。



ディーネ「Sランク冒険者、リュウレイ―魅魍 舞禍の旅路は今

     真の始まりを告げる              のじゃロリっ?」


舞禍「…胡散臭い吟遊詩人ですか」

ディーネ「おひねり手ぇ厳ぃし、いィィィィィ・・・イーッ

     ・・・・・・アヒャ」


罵っても悦ばれるだろう。


付き合ってはいられない鬱陶しさ。


だが、今後の”ドが過ぎたツキアイ”も、きっとずっと永くなる。



「スルースキルを覚えよう」「・・・ヨシ!」



ソウシテ、コトの顛末を伝えたのちに、リュウレイが街をあとにした頃。





ボールディ「なんだって!?アンスロポウセント子爵が?」

                        ・・・1-4へ、続く

| ˙꒳˙)ノ<やぁ

第三話、一章第三節やでぇ

今回はホラーバトル

BGMは軒並み環境音だと・・・『イメージしろ!』くだしゃい|ΦωΦ)✧

さぁて、PIXIVのエロ小説執筆に戻るのよん|∀゜ヘ)コッショリ

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