初めて会った時から、思い出のような人なのか。温かくて愛に帰りたい。
リード様がレプトンさんに話しかける。
「まあ、座りたまえよ。」
「はい。」
ガタガタン!
まだ動揺しているレプトンさんだ。
コントの様にひっくり返ったぞ!
「ああモウ。大丈夫ゥ?」
アンちゃんが助けおこす。気のせいかオネエ言葉になってるぞ!
「は、はい。すみません。」
「落ち着きたまえよ、レプトン君。
話を続けるよ。」
リード様は深く座り直す。美しく髪をかきあげられてじっとレプトンさんを見つめられる。
あらら。こんな時でも赤面してるよ、レプトンさん。
「もともとね、アアシュラ様がアキ姫をブルーウォーターに嫁がせたいとお思いになったのさ。
何かと物騒なマナカ国よりね。」
「それはわかりますが。」
そこでリード様はチラリとヴィヴィアンナ様を見る。
「まあ、自分の娘が我が国にいれば常にヴィーに会いに来れるだろう?
アアシュラ様はヴィーが大好きなんだ。」
「ふふ。仲良くしていただいてますわ。」
大輪の薔薇のように微笑まれるヴィヴィアンナ様。
どっくん。
こんな時でもときめいちゃう。レプトンさんのことは言えないなあ。
本当に貴女は素敵です。
「はあ。」
まだ混乱しているレプトンさんだ。
「レプトン兄さん。兄さんとアキ姫さまはお似合いだと思うわよ。」
「ソウダナ。すぐ結婚ジャナインダロ?まずは婚約者候補とシテ、ユックリ付き合えバ良いジャン。」
「龍太郎君。良い事言うねえ。
ま、とりあえずお付き合いしてみたまえよ。」
「リード様。ここのところお顔を合わせる機会が多いなあとは、思っておりましたが。」
困り眉のレプトンさんだ。
でも、その頬は赤い。
「ふふ、レプトンさん。貴女は情熱的な恋愛に憧れているのかも知れませんね。
ご両親も長年の恋を実らせた。」
美しく微笑むヴィヴィアンナ様。
そこでチラリとメリイさんを見る。
「龍太郎君とメリイさんの前世からの恋。とても素晴らしいです。まるで物語のよう。」
「おほほほ。私とダーリンもビビビ婚ですものね!」
「そうでごわすな!」
ええっと。私も何か恋バナを言うべきか。
…アンちゃんが顔を赤くしてそっぽを向いている。
チラリとよこしたその視線に(黙ってて、お願い。)のサインを読みとる。
うん。とりあえず黙っておくか。
「だけどね、穏やかに始まる愛情物語も良いものですよ。」
「そうだね、ヴィー。」
ああ、そこに話が落ち着くのか。
ゆっくりとホットミルクを飲むヴィヴィアンナ様。
真面目な顔をして正面からじっとレプトンさんを見据えるリード様。
「周知のように私とヴィーは燃え上がる炎のような大恋愛ではない。」
「だけど暖炉のように常に暖かいのです。」
「もちろん、激しい波のような激情でもない。」
「小川のせせらぎのように穏やかな愛情が常に流れていますわ。とても落ち着くのです。」
まるで、枯れた老夫婦のような日常を語ってらっしゃるが、美しい陶器の人形のようなお二人が、頬を軽く染めてらっしゃる。
惚気てるんですね。ご馳走様です。
「人生のパートナーとしてこれ以上の人はいないと思っているよ。」
「ええ、運命を共にする人だと思っています。」
なるほど。よほどレプトンさんはお二人に好かれているんだな。
あのグランディの第二王子夫妻が、レプトンさんに説いている。――結婚生活のしあわせを。
「あの、例えばですが、お見合いとかでしたらとても良いお話だと思います。
しかし彼女の気持ちは?それが一番ではないでしょうか。」
おっ、偉いぞ。レプトンさん。
ちゃんとアキ姫さまのことを考えている。
「見たところ彼女もキミに好意を持っているよね。少なくとも嫌ってはいないよ。
キミとの縁が無ければ他のブルーウォーターの有力者に嫁がされると思う。
だけど少しでも好ましいキミの方が良いと思うよね。」
「は、はい。そうなんですか。」
「うん、そうだよ。彼女はとっくにこの縁談を知っているんだよ。」
「えっ!」
驚くレプトンさんだ。
知らないうちにまわりを埋められてたことにやっと気がついたんだね。
遅いぞ!
「最初に私がすぐに打診したら断れなかったろ?すぐに決まっただろう?
それもあんまりだよね。
だから、少しずつ距離を詰めてもらったんだ。
アアシュラ様のご希望だからって、大事な側近の縁談をホイホイ決められないよ。相性だってあるんだからね。」
レプトンさんは、目を見開く。
「リード様がそんなに私を気にかけて下さってたなんて!」
そこでリード様は手を上にあげて肩をすくめられる。
「何を言うんだ。大事なキミの為じゃないか。一生の問題なんだからね?」
「…リード様ああ!」
うわぁ。感動のあまり泣きだしたぞ。この人。
「感激ですうううう。」
「うん、わかったよ。」
あっさりだなあ!
アンちゃんはやれやれと言う顔をしている。
まーた、たらし込んでるなあって顔だ。
アラン様は腹黒のところが施政者に向いてると思ってたけどリード様の、このみんなに好かれるカリスマ性はどうだ。
この方が本気で王になろうとしたら止められないのではないか。
「もう少し交流を持ってから、キミに話をするつもりだったけどね。
サード君がアキ姫さまを気に入りそうだからね。
もうここで固めてしまおうと。」
リード様が爆弾を落とした!
「はああああい!?」
レプトンさんに直撃だ!
「そうなのよ。サード兄さんは思い込みで突っ走るタイプでしょう?」
「メリイ。否定出来ないところが何とも言えないが。
ええ?本当に?」
「ウン。あのクサッタ魂の女、ルルゥに辟易シテタ所にサ、あの優しいウタが染み込んだのサ。
雨後の筍ミタイに恋心もニョッキニョキってとこだ、てやんでい、チクショウメとクラァ!」
龍太郎君、わかる様なわからない様な例えです。
「コホン。ではこの話を進めてもいいかい?」
「リ、リード様。勿体ないお話です。でもあの、突然なことなので少しだけ考える時間をいただけますか?」
「ああ、そう。」
リード様が纏うオーラが冷たくなった。
そして目を閉じて腕を組んで考えこまれた。
あら。怒っちゃったのかしら。
「リード様。」
ヴィヴィアンナ様がそっとその腕に手をそえる。
ふっ。
目を開けたリード様からは冷気は消えていた。
「――わかったよ。キミ、カレーヌにまだ未練があるんだね?
いいとも。……しっかりと振られて未練を断ち切っておいでよ。」
タイトルネタは原田知世さんの「愛情物語」ですね。




