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ブルーウォーター公国物語(続グランディ王国物語のそのまた続き)  作者: 雷鳥文庫


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真夏の夜の夢のような。

誤字報告ありがとうございます

 「今までの不可思議な行動はメリイさんの為かい?」

とリード様に聞かれたレプトンさん。

「あ、ハイそうです。皆様にご心配をおかけ致しました。」

顔を赤くして応える。


「あの後私も湯船で話をしましたよ。

レプトンさんとね。

メリイさんはハイドのことは平気なんだ。何故なんだと。ぼやいてらしてね。ハイドに直接聞いたりしたんですって。」


アンちゃんがチラリとレプトンさんを見てジョッキを傾ける。


「ええ。聞きましたよ。

そしたら、【ワタシら忍びはね、元から香料はつけねえンですよ。ただ、料理の匂いはどうしても服につきますから、マメに着替えてるしシャワーも浴びてます。】と答えたんです。」

レプトンさんもゴクゴクとビールを飲み干す。


確かに。調理の仕事に従事した人にはわかるだろうが、仕事着にはかなり匂いがつくのである。

その下の服にも。

私の友人は集団給食の仕事をしていたが、ご家族に、

「厨房の匂い?がする。」と言われたそうだ。


私だって料理用のエプロンはマメに替えているが、下の服に匂いがうつってることもあるよ、特に袖口に。

ウチも忍びの若い子達に食べさせたりするし多量に作るからね。ハイド君とこも人数多いし、大喰らいの神獣いるしね。


「それにやはり仕事に行くと、タバコを吸う人とかいますよね。食堂とか。

公務で会う人の中には香水が強い人もいます。

そう言う匂いも落として帰ろうと。

それに湯船に浸かるとリラックスも出来ますし。」

レプトンさんが続ける。

なるほどねえ。分煙なんてしてないからな。

この世界。


しかし、妊婦の妹のために気を使う姿勢は立派である。

シスコンだけど、いい旦那様にもなるであろう。

「なるべくメリイに近づかないようにしてるのですが、うっかり至近距離に近づいても大丈夫の様に匂いを落としているのです。

だけど、メリイは何日も私と会わなくても平気みたいで。それも寂しいのです。」


ほろ酔い気分になったレプトンさんは愚痴る。

加齢臭で娘に避けられるお父さんの悲哀を聞いているようだ。


「あら、そうでしたのね。学園でね、マリーさんやミッドランド氏が難しい顔をしてましたのよ。

【いつもレプトンが風呂上がりの匂いをさせて帰ってくるけど、何故だろう。誰かと付き合ってホテルに行ってるのでは?】

【私達に紹介できないヒミツの恋人なのでしょうか、エリーフラワー様。】ってね。

ホホホ。取り越し苦労でしたわよね。」


「ええっ。」

思わず立ち上がるレプトンさん。その目は驚きのあまり見開かれている。


「ぷっ!ははは!」

吹き出すアンちゃん。


「そんな考え方があるなんて。汗をかいたらさっぱりしたいのは当たり前だ。」

マーズさんは目を丸くする。

彼の職場にはもれなくシャワー室があるそうだ。

動物園にサーカス、牧場。

筋トレしたらシャワーを浴びて仕事。動物と触れ合った後もシャワーを浴びるそうである。

どうしてもね、糞尿の匂いとか餌の匂いとかね。


「そうか、誤解が解けるといいな。」

リード様はにこやかにポテトを食べながらおっしゃる。

ひとごとだなあ。


「まあでもね、一人前の男性が誰と付き合おうと親が口を出すことではありませんよね。」

マーズさんは腕を組む。


「大丈夫ですわよ。私からミッドランド夫妻に言っておきますわ。」

エリーフラワー様がコロコロとお笑いになってその件はお開きとなった。


「そうだね、才女殿に任せておけば安心だ。

すまないが、レイカさん。もう少しポテトをくれたまえ。

いや、本当にビールに合うね!」


それは構いませんがお太りにならないで下さいませよ。


「レプトンさん、これ私が開発した無香料の整髪剤ですのよ。お持ちになってね。」

「エリーフラワー様!ありがとうございます!」


「うん、レプトン君。私とお揃いの香をまといたいのだろうが、しばらくはやめておきたまえ。」

リード様がパチンとレプトンさんにウインクをなさる。 


「あ、はい、ええ。」

――勘違いだが、ナルシストにつける薬はない。


あら。レプトンさんは戸惑いながらも赤面だ。

やはりお美しいリード様からの、ピンポイントでのウインクは効くのか。


想像してみるか。私がヴィヴィアンナ様にウインクを自分だけにされたら。

――うん。ぶっ倒れるな。




 その日は夜遅くまでみんなで楽しく飲んで食べた。

途中でスケカクさんやピーターさんに軽食を差し入れした。

「美味いな。」

「今度、一緒に飲みますか?」

アンちゃんが護衛同士の旧交をあたためている。


「そろそろツワリも終わるころじゃないか?」

「そうでしょうか、リード様。明日の朝、メリイに久しぶりに会ってみます。」


うん、大丈夫だといいね。


「レプトンさん、これレモンゼリー。メリイさんに差し入れ。」

「ありがとう!レイカさん!」


「私も帰ります。サマンサさんも帰宅されますか?送りますよ。」

「はい、マーズさん。」


「リード様、馬車をご用意いたしました。」

「ありがとうアンディ。レイカさん、ご馳走様。」


外に出たリード様をみんなでお見送りする。


ピーターさんがランプを持ってリード様を先導する。

その光に豪奢な金髪を煌めかせ、手を振りながら馬車にお乗りになった。

本当に妖精王もかくやとばかりの美しさだ。

ヴィヴィアンナ様が冴えた月の美しさならリード様は太陽のようだな。


「じゃ、みんなまたね。

……ところでレプトンくぅん?」

「はい?」

「もしキミにその気があるのなら、公宮で働く女官や侍女を紹介することはやぶさかではないよ。

キミにも新しい恋が必要じゃないのかい?

ま、考えて置きたまえ。」

「えっ!」

戸惑うレプトンさんを残して走りさる馬車。その横に黒い動物が寄り添って走る。


「黒豹のクッキーくんに護衛を頼みました。」

マーズさんが微笑む。

「ホワイトタイガーはヴィヴィアンナ様から離れませんからね。」

 

なるほど。


「では、参りましょう。サマンサさん。うちの馬車にお乗り下さい。

レプトンさんもお送りしますよ。」

「あ、そんなお邪魔では。」

「いえいえ、いいんですよ。」

マーズさん優しいな。


「うちの護衛は、スネちゃま軍団に頼みましょう。」


ピィー。


マーズさんが指笛を吹くと白いヘビの群れが現れた。

「うわああ。」

レプトンさんが後ずさる。

「あら、沢山いますのね。」

サマンサちゃんは動じない。

「やっぱりご遠慮…」

「さあ、乗って。」

馬車に押し込められるように乗せられるレプトンさん。


白ヘビに守られながら馬車は走り出した。


夜、口笛を吹くとヘビが来るって前世でおばあちゃんが言ってたけど、ホントなんだあ。




男性陣は帰宅したが、エリーフラワー様はお泊まりだ。

「もう少しレイカさんとお話したいわ。」

との事。


あと母も泊まる。遅くなっちゃったし。


マーズさん。母とサマンサちゃんは同じ家に住んでることを忘れてないかい?

送るならレプトンさんより母でしょ?


やれやれ。


タイトルはシェイクスピアか、ユーミンか。ですね。

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