ラスト・ポテトを貴女と。
七月になったよ。私はね、寒がりだから夏が1番好きなのよ。
スイカ美味しい。かき氷美味しい。炭酸水美味しい。
今日は子供たちを母の家の前で水遊びをさせている。
(自宅が秘密のレストランだと色々不便だね。)
大きなタライに水を張って、おもちゃのジョウロで遊んだり。紙や木の船を浮かべたり。
おもちゃの釣りセットを釣らせる。磁石のついてる紐で魚の形をした木片を釣るのである。
エリーフラワー様に、前世のおもちゃの釣りセットの話をしたら、
「何!それ。詳しく!」という事で詳しくお話して作ってもらったのである。
そして売り出されてヒットしている。
売り上げの一部もいただいてますのよ、ほほほ。
「こんにちは、レイカさん。」
「おや、ハイド君?お久しぶり。」
困り顔のハイド君が訪ねてきた。
「実はメリイがツワリで食欲がないんです。」
「はあ。」
「なるべくリクエストに合うものを作るのですが。」
「うん。」
「話を直接聞いてあげたら?」
アンちゃんの助言もあり、会いにいく。
「あ、レイカさん。」
ああ、やつれてるぞ。
「こんにちは、メリイさん。水分取ってる?
まずポカ○もどきを作ってきたから。」
「グレープフルーツジュース?が少し塩っぱくて薄くて甘くて飲みやすいです。」
「これね、黄金の果実という柑橘系の果汁なの。先日キューちゃんがウチの実家と、母の家の前に植えてくれたのよ。それに砂糖と塩を少しね。」
あの実は時々ミノちゃんが来て、涙ぐんで齧っている。
「オズゾワケ、ダス。」
何個か取ってくれたんだよ。今日はソレを使ったものをお持ちしました。
「まあ、あの。話には聞いています。」
「それからうどんやそうめんや、フルーツとか?なんか食べられそう?」
「実は生物の匂いがダメダメで。魚が。うどんの出汁も生臭く感じて。」
「あー、ハイドくん。鰹節の出汁をやめて昆布のみにしてあげて。エリーフラワー様も昆布出汁のうどんで乗り切ったのよ。」
「はあ。なるほど。」
ハイドくんがメモる。
「後は、何でもいいのよ、無理して栄養取らなきゃって思わないで。」
「うう。レイカさん。そう言ってくれると気が楽になりました。」
おや?目の端に気まずそうに顔をそらすマリーさんに龍太郎君の姿が見える。
さては高栄養のものを食え食え、と押し付けたな。
良かれと思ってか。
「脂でコッテリしたものは食べたくないんです。
胃が弱ってる感じなので。
霜降りの肉とか。ウナギとか。」
「うん。まずはスイカとかどう?アイスとか。
それに龍太郎君のウロコ水は?あれは気分が良くなるんじゃ?」
「ソウカ!気がツカナカッタ!」
シャラン。
早速、身を捩ってウロコを落とす龍太郎君。
「お水に入れてきます!」
走りさるルシアさん。
「なんか食べたいもの、ある?人によってジャンクなものが、食べたかったりするのよ。」
「……少し、グニャッとした柔らかい形のポテト。」
「うん?」
「遊園地とかで食べるフライドポテトが浮かびました。何故かしら。」
「それがきっと貴女が求めているものだと思う。マッ○ポテトみたいなの?」
「えと、もう少し太くて。少し粉っぽい。」
「アー近所のスーパーのフードコートにあった奴かア。絞りダシテ揚げるノニ時間カカッタヤツね?
ヨク二人デ学校帰りに食ったナア。」
頷く龍太郎君。
「ラ○・ポテトね。ジャガイモの粉を練ったのを揚げたやつね。成型フライドポテトだわ。」
以前、冷凍ポテトが出回る前はそれが主だったよ。
「へえ、○ス・ポテトって言ウノカ。ソウイエバ、そうだったカモ。」
「そうです。マ○クとかのポテトは細くて、すぐシナシナになりますよね。そうじゃなくて、材木っぽい感じで。外はカリッ。中は柔らかい。ああ、揚げドーナツやカリントウの歯ごたえ…」
うん、わかってきたよ。
「ハイド君。乾燥のフレークポテトある?以前エリーフラワー様が離乳食用に開発されたと思うの。
乾燥してフレークにした野菜。
かぼちゃとかニンジンとか。そしてジャガイモね。」
「あると思います!マッシュポテト用に。」
「まあ、やってみましょう。片栗粉も少し入れてみる。」
とりあえず乾燥ジャガイモを水で戻した。片栗粉も入れた。練る。寝かせる。
「うーん、ジャガイモを茹でて潰してみる?」
その三つを混ぜて、柔らかいものを押し出し機がないから、包丁で切る。
そのまま油の中へどぼん。揚げて見た。
「どうかしら?」
「ああ!近いです!」
「本当はね、上から押し出して油に投入してたよね。」
出来上がりをひとつ口に入れて喜ぶメリイさん。
「美味しい!そういえば私、お惣菜のコロッケとか好きでした!
あんまり具が入ってなくて、お芋ばっかりの。
そしてスーパーのプラスチックトレイに四つくらい並んで売られてて、湿気で、しなしなになってるもの。
パン粉がガサガサついてるのは苦手だったんです。」
「なるほど。ちょっとチープなやつね。多分あれも乾燥ポテトのフレークで作られていたと思うわよ。」
ぱくぱくと食べるメリイさん。
そうそう、この子も健啖家だったわ。
「こんなにメリイが食べるなんて!良かったわ。」
喜ぶマリーさん。
「本当に。」ハイド君も涙目だ。
「ハイド君。今度はコロッケを乾燥ポテトフレークで作ってあげたら。油はキレイな物を使ってね。」
「はい。」
歯を光らせて微笑むハイド君。
相変わらず無駄に男前である。
「そういえばハイド君、今日はカツラしてないの。暑いから?」
「いえ、実は。私、今、男性の整髪料の匂いがダメで。」
メリイさんが口に手をやる。
「アラ。」
「レプトン兄なんかキレイに髪を撫でつけてオールバックにしてますでしょ。その匂いが。」
「ウン。レプトンサンのポマード?の匂いでリバースしちゃったンダヨ。」
「まあっ。」
おや、アンちゃんが後退りした。
…忍びのアンちゃんは余計なものつけてないでしょうに。
「カツラも整髪料がついてますから。今被ってないんですよ。」
ハイド君がスキンヘッドを、タオルで拭いている。
ツルピカである。
「それからレプトン兄さんを見ると思い出して、気持ち悪くなるのですわ。幻覚ならぬ、幻臭で。」
「ここ三日、レプトンはメリイに近づけてませんのよ。」
マリーさんも眉尻をさげる。
うわ。
あんなにシスコンのレプトンさんがメリイさんに避けられてるなんて。可哀想。
「ええ、部屋で忍び泣いてます。」
やはり。
「あとは?煮物なら食べれそう?」
「今は干し椎茸の戻し汁の匂いがダメなんですけど。
それを使わないものなら。」
確かに。アレは戻す時に匂うものね。
「ふうん。じゃあ肉じゃがなんてどう?」
「あ、いいですね。」
「あのね、肉じゃがにマヨをかけて粉チーズを振ってね、軽くオーブンで焼くとどう?
カルシウムも取れるし、お手軽グラタン風でいいよ。
パセリも振ったら鉄分やビタミンAも取れるよ。」
「レイカさん!ありがとう。是非やります。」
ほほほ。前世での子供達の弁当のおかずの定番でしたのよ。
夕飯の肉じゃがを取っておいてアルミカップに入れて焼くのよ。
そしてメリイさんはつわりをジャガイモで乗り切ったのである。
それから私は一階の使用人部屋にも顔を出した。
「オ・ツナさんは具合どう?」
「ありがとうございます、レイカさん。思ったより軽くて。少し胃がむかつくくらいかな。」
「じゃあ、貴女にも。黄金の実入りの飲みものをどうぞ!」
「え!私にまで?いいんですか?」
「龍太郎君のウロコ水も。」
ルシアちゃんもピッチャーに入ったウロコ水を飲ませてくれる。
「あっ、なんか胃もたれも治ってスッキリさわやか?」
うん。貴女も体調を整えて元気な子を産んでね。
ラストダンスは私に。ですね。
この歌をモチーフにした古畑任三郎のドラマもヨカッタです。




