もしも友達と呼べるなら。許して欲しいの。過ちを。
さて。女子会である。
女子といいながら、私とエリーフラワー様は既婚者で20歳を超えているが。
女子と言っていいのか。
女子寮や女子トイレとかは年齢関係ないからやはりいいのか?いい事にしよう。
そんな事をカフェの個室で、ブルーウォーター特製パフェを前にぼんやりと考えていた私。
「ねえ、エメリンさん。貴女アキ姫様と仲良くしてあげてくれるかしら。」
エリーフラワー様が切り出した声で我にかえった。
ブルーウォーター特製パフェは青い色のソーダ味のゼリーに、各種フルーツとアイスが乗っているここのホテルの名物スイーツだよ。
三人とも頼んだ。
「は、はいい?私が他所の国の王女さまとですか?」
「いつまでもリード様のお屋敷にいらっしゃるわけには行かないから。女子寮に入っていただくの。」
「なるほど?」
「では音楽の先生になられるのは決まったのですね?」
「ええ、レイカさん。本人も乗り気よ。何しろ少年合唱団がいるでしょ。すぐに指導してもらうわ。」
「ああ、コンサートで一緒に歌ってましたね。」
「再来年には高等科も新設するわ。そこでは、声楽コース、騎士コース、理系コース、文官コースにわけるつもりなのよ。ま、ざっくりだけど。」
「なるほど。」
そこまでは、なごやかに話が進んでいた。
「ねえ。エメラーダさん。アラエルは貴女に、何を言ったの?詳しく具体的に教えてくれないかしら?」
眉間にシワを寄せてエリーフラワー様は話を切り出すのだった。
「ええとでございますね、あの方は最初から偉そうでした。
そのメイクと服装を何とかしろ、と。」
「あ、それは覚えているわ。アクセサリーは私が作って身につけてもらってるのよ、といったらトーンダウンしたわね。
もちろん彼にはハッキリ言わないけど、派手なメイクや個性的なアクセや服は貴女の出自を隠すものですものね。」
私とエメリンも頷く。
彼女はグランディでは亡くなったことになっているのだ。
「確かに私が遅刻したのは良くないですが、ここは教育機関だ。貴女への教育も必要かもしれませんねえ。
なんて言ってくるんですのよ!
何様かしらっ!きいいいっ!」
「うっわ。嫌なヤツ。」
思わず口から出た。
「……へええ。アラエルは何を言ってるのかしら。
自分が副学園長になったから偉いと思ってるわけ?
同僚を教育?まああ。誰がそれを許可したかしらあ?」
エリーフラワー様の顔は怖くなっている。
「それで。いつもネチネチ絡んでくるんですの!鬱陶しいんです!
その服の色は何ですか。孔雀が求愛するときのイメージですか?とか。
今週はトータルで一分五秒遅刻です、とか。
へええ。こんなの食べるんですか?若い女性がニオイ気にしないんですかとか。職員食堂で豚キムチやニラレバ食べて何が悪いんですの!
金曜日の晩なんですよっ。明日休みならニンニク臭くってもかまわないハズ!」
まあね、遅刻はするし、ケッタイな服装。
注意したくなるのはわかる。わかるけど、
なーんかモラハラ野郎の匂いがするぞ。
「研究所にいる時はそんなでもなかったわ。メリイさんには心酔していたし。」
「ですよね、惚れ込んでいましたね。」
「ええ、ええ!いつもメリイさんは素晴らしい人だとほめていました。
それに比べて私はダメダメだと。
特に叶わぬ恋を追いかけてるところが良くないと。
というか、私の恋路がですよ、インケンメガネのアラエルさんに何の迷惑をかけてるんですか?」
なんやそれ。余計なお世話ではないかいな。
「…ふーん、貴女に家族や後ろ盾が無いと思って舐めてるのね。」
エリーフラワー様の笑顔が怖くなった。
「最初は気にならなかったけど、しつこくて。
振り切って逃げたのを追いかけて来て、ネチネチ文句たれて。
二言めには私のことを思って言いにくい事を言ってると。」
「ふーん。メガネをとって踏みつけてやりたいですね。」
「まあ、レイカさん。私も同意してよ。」
エメリンの話は続く。
「それで見かねた合唱団の年かさの少年達が、エメリン先生を侮辱するな!と言ってくれたのですわ。」
「ああ、それは私の耳にも入っているわよ。
揉めたらしいわね。影の人からも報告があがっているの。
もう声変わりして、めきめき背が伸びて、体格が良い子達だったから、ヒョロメガネのアラエルはビビって逃げたのよね。」
まあ。生徒達に愛されてるな。
「でもその後、彼等からも言われたんですっ。
ちゃんとレプトン様に振られて来いよって。決着をつけないからあの腹黒メガネにストーカー女だって言われちゃうんだって。」
あー、そうか。
「それで頑張って忍び込んだのですわ。」
何故そうなる。
「ピッキングも練習しましたし、壁紙と同化する布も取り寄せました。
公宮にはワタシにファンレターをくださる方が何人かいて、手引きをお願いしましたの。」
「凄い行動力ねえ。」
「…でも、エリーフラワー様。薄々わかっていたのですわ。望みはほとんど無いと。」
「そうね。貴女は頭が回る人だもの。」
「思いこみでも、全力で恋をするのは楽しかったのです。
何しろ、レプトン様は憧れの絵本の王子様の様な人。」
ポロポロと涙を流すエメリン。
「ハチミツ色の髪の色も。透き通った水色の目も。」
ハンカチを渡す私。
うん。レプトンさんはメリイさんと同じく透明感がある美貌を持つ。
今は体格はがっしりしてるけども、幼い頃は線の細い美少年であったろう。
「正義感溢れるまっすぐな性格。家族思いで。優しくて。」
「ええ。そうね。」
背中を撫でてやる。
彼はあのルートを最後まで気にかけていたと聞く。
サードさんより彼の方が人柄は良いと思う。
ちょっと優柔不断でツメが甘いけど。
「いつか恋人になれたら、どんなに幸せだろうと。
もう、夢から覚めなくてはいけませんね。」
ちーん。
ああ、私のハンカチで鼻をかみやがった。
「あ!すみませぬ!レイカさあん!」
「…いいの、それ。差し上げます。」
「でででも。洗って返しますからっ。」
「よかよか!持って帰んしゃい!
そしてそのまま使いんしゃい!」
説明しよう!私は気が動転したりすると前世由来のなんちゃって九州弁が出るのだ!
…心の底からハンカチのご返却はお断り申し上げます。
「はあい。お友達からのプレゼントとして、大事にしますっ。」
えっ。お友達だったっけ?
エリーフラワー様?肩が震えてますけど?
コホン。
「それよりもね、貴女の新作が読みたいわ。
レプトンさんに送りつけたやつ。」
「アレですか。はあ。
では後日、書き起こしてお持ちしますわ。」
顔をあげて瞬きするエメリン。
ふふふ。楽しみ。
ザブングルの(お笑いではない方)のエンディングの歌詞から。
誤字報告、ありがとうございます。訂正しました




