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ブルーウォーター公国物語(続グランディ王国物語のそのまた続き)  作者: 雷鳥文庫


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44/211

カッコ悪い振られ方をしたなら、二度と会えないのかしら。

誤字報告ありがとうございます

 レプトンさんはエメリンと会うことについて腰が引けていた。

「ええ。頭ではわかっております。彼女にしっかりと引導を渡さなければいけないとは。

距離を置けば良いと、中途半端に避けてきたのがいけないのですね。」

メリイさん家のリビングのソファにゆっくりと身を沈めている。

その膝の上には猫のチャチャが乗っている。

癒してあげてるんだね!お利口さん。


おお、高速でチャチャを撫で回すレプトンさん。

「ううっ。チャチャちゃーん。お兄ちゃん。ドキドキするよおおっ。」

「うにゃあ。」

そのまま猫の背中に顔を埋めるレプトンさん。


そんなのは自室でやりなはれ。

大の男が人前で猫に顔を埋めてるのは、何だかなあ。

猫カフェでもなかなか見ないぞ。


「ああっ、落ち着く。スーハー。フフハー。」

「にゃあおん?(何してんですか?)」

うわあ。猫吸いまで始めた。


何となく遠巻きにするワタシたち。


「メリイ。サード兄貴に追っかけまわされてたカレーヌ様もこうだったんだよね。気の毒なことをしてしまった。」

顔を上げて、潤んだ目でメリイさんを見つめるレプトンさん。

みんなが引いているのに気がつきましょう。


「レプトン兄さん。サード兄さんがやり過ぎたのを貴方が気に病む必要はありませんわ。」

目を伏せるメリイさん。

「ソウダヨ。お部屋に無理矢理訪問するエメリンが悪いンダヨ。住居侵入罪と言う犯罪ダヨ。」


「ここで会うのは嫌でしょ。エメラーダさんに自宅の場所がバレるから。

ネモさんがホテルの一室を貸して下さいます。

移動しますよ、さ、レプトンさん。」

アンちゃんが起立をうながす。


「みにゃおおおん。」


「エッ。ソウナノ?えれえ!

レプトンサンが心配だから、ツイテ行くってよ!

チャチャちゃん。」

「まああ!そうなの?健気ねえ。」

アンちゃんの目が潤む。

本当。良かったね、レプトンさん。

……吸われても怒ってないのねえ。


レプトンさんと龍太郎君。アンちゃんと私とネコちゃん、ミッドランド氏とで出発だ。


メリイさんは、

「妊婦が、そんな修羅場にいくものじゃないわ。」と

マリーさんとお留守番だ。


ホテルの部屋についたら、リード様とネモさん、エメリンにエリーフラワー様がいた。


ふううううっ!シャアアアアアアア!ガアッ!


いきなりエメリンに威嚇するチャチャちゃん!

身体膨らんでるぞ!耳は水平だぞ!

「ま!なんですの。怖いっ。茶色の悪鬼ですわあー!」

びびるエメリン。


「猫にゃんちゃん。ちょっと落ち着いてね。」

ネモさんがなだめる。

「ううう。ありがとう。キミのおかげでチカラが湧くよっ!」

チャチャを抱きしめるレプトンさん。


そして、エメリンを睨みつける。


「エメラーダ嬢。僕は、キミが大嫌いだ。寄るな。触るな。近づくな。」

マイナス196℃の冷たい声だ。

「え。」

固まる一同。


いや、そうだろうけどさあ!あまりにストレートじゃないか?


「レプトンくぅぅん?いきなりだねえ?

まあ、みんな席につきたまえよ。」

リード様が声をかける。


「……取り乱してすみませんでした。」

「まあなア。落ち着けよ。」

「アンディ様。ミッドランド義父さん。エリーフラワー様。レイカさん。龍太郎君。

それに何よりリード様、ネモ様。

今回私の為に集まって下さってありがとうございます。

でも、もう限界なんです。だってほら、」

レプトンさんが手を前に出す。

「こ、こんなに手が震えてる。彼女が近くにいるだけで。体が受け付けない。」


ポロポロと涙が落ちていく。


「にゃ。」

チャチャがレプトンさんの頬を舐める。


これは立派なカウンセリング案件である。

無理だな。レプトンさんはエメリンを受け付けない。


「オイ、しっかりシロ。」

龍太郎君がレプトンさんの肩に乗る。


エメリンは石のように固まっている。


「…キミは何をしたかったんだ。何故、俺の部屋に忍び込んだ。

その前だって。トイレに行くふりをして俺の部屋に入ろうとした。」

地を這うような低い声。下からじっと睨みつける。


「ひっ。」

「レプトン様。落ち着いて。エメリンさんの話を聞きましょう。」


「そ、そんなに嫌われていたなんて。

どうしてそんなに嫌うんですか。」

エメリンの目も真っ赤だ。

「エメラーダ先生。貴女ならどうですか?

夜中に異性が押し入ってこようとしたら。

それにせっかく引っ越して距離を置いたのに、留守の間に入り込んできたとしたら。」

ミッドランド氏が静かに諭す。


「…はい、本当にただお話したかっただけなんです。

後でみんなに叱られて、夜に異性の部屋に行ったらお互いの醜聞になると、やっと気がつきました。」


はあ。

「貴女にはそういうことを教えてくれる家族がいなかったのだもの。

仕方ないかもしれないけど色んな意味でまずかったの。」

「レイカさん、ええ。今なら深夜の訪問は乙女のピンチだったとわかります。」

「何を言う!こっちがピンチだった!あと少しで結婚に持ち込まれるところだったんだぞ!」


わめきたてるレプトンさんだ。


「だから反省しました!それで訪問は昼することにしたのです!」

「いや、それも違うぞ。普通ご令嬢はピッキングして壁と、同化しねえって。」

アンちゃんの突っ込みだ。


「君ねえ。思い込みで突っ走ったらダメだよ。

相手がレプトン君で良かったものの、

不審者はその場で切り伏せられてもおかしくないんだよ。」

リード様はため息をつく。


「だけど!引いてダメなら押してみろ!と押して押して行けば真心は伝わると。

アドバイスをいただきまして。」

「え?誰から?」

「エリーフラワー様。アラエルさんです。」

……へええ。


私とエリーフラワー様は目を合わせる。


「チッ。あの腹黒メガネめ。振られたところにつけ込む魂胆か。」

アンちゃんの顔が怖い。


「ねえ。エメリンさん。よく聞いて?」

エリーフラワー様が立ち上がって、

エメリンさんの手を取る。

「私はね、以前、リード様に夢中で追いかけ回していましたのよ。ねえ?リード様。」

「あ、ああ!才女殿。そ、そんなこともあったね?」

リード様の目が泳ぐ。


「だから何というか、貴女のことが他人事に思えないんですのよ。

ただ、私のリード様への愛は勘違いでしたの。

そうでしたわよね?アンディ様、リード様。」

「まあ、そうだね。」

リード様は頷く。

アンちゃんは口元を緩めて下を向く。


「 ? 」

目をパチクリするエメリン。

「私がずっとリード様だと思って恋焦がれていたのは、リード様の影武者をしていたエドワードですのよ。」

「ヘエエ。ソウダッタノカ。」

龍太郎君が素っ頓狂な声をあげた。


ネモさんや、レプトンさんや、ミッドランド氏も目を見開く。

「だからね、貴女が恋してるレプトンさんは貴女の、思い込みの彼であって、本人では無いと思うのよ。」


エリーフラワー様は、静かに告げた。

「ねえ。憧れの人の幻を追いかけているのは、楽しいでしょう?」

そしてエリーフラワー様はエメリンを見る。

「でも貴女も、気がついているはず。彼は貴方の王子様じゃない。現実の彼は貴女を拒んで震えているの。」


エメリンは下を向いてくちびるを噛み締めていた。



大江千里さんの歌ですね。

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