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念願の異世界転生したら、勇者じゃなくて聖剣(幼女)でした  作者: きびだんご
1章 私、勇者に会う
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1-8 聖剣だってお勉強が必要です が疲れちゃうのです

最近、必殺技を覚えました。


幼児の操る必殺技、その名は「イヤイヤ期」。その絶賛イヤイヤ期真っ只中の私が繰り出すのは、ある日突然始まった、私の口ぐせ「やじゃ。」という名の全否定。


「お昼寝の時間ですよ〜。」

「やじゃ。」


「お夕食に響きますから、おやつはあと1枚にしましょうね。」

「やじゃ〜。」


「坊ちゃまはあちらで訓練ですから、危ないですからこちらで待っていましょうね。」

「や〜じゃ〜〜〜。」


ついたあだ名は「シヤジャ姫」。

うまい、一本、と名付けのカイルに言いたくなりましたとも。


なんかね〜。お勉強、始まったわけよ。

お勉強、といっても、初めは聖剣相手に何教えるんだ?って話になったらしい。

そりゃそうだ。

歴代の聖剣といえば、伝説上の存在で、勇者を見守り導く存在。当然、聖剣を指導しました、なんて文献が残っているはずもない。なんなら逆に教えを請いたいレベルの存在。


ただ、歴代聖剣さんたちは、勇者以外にはほとんど姿を現すどころか、声を聞かせることもなかったらしい、というのはパパ上の話。

剣から飛び出た私みたいなのが、ずっと出っぱなしでいる今の状況が今までとは全然違うんだそうです。


そう言われても、私、「出っぱなし」っていう感覚ないしねぇ。聖剣の中に閉じこもる、というか入り込む?感覚もよくわかんないし。


そもそも、聖剣だって勇者以外の者は扱うどころか、触れることすらできなかったとか、自分のものにしようと欲を持った者が触れたが最後、その人は一瞬で塵となって燃え尽きたとかっていうなんとも恐ろしい話まである始末。


私が聖剣ナイフをアレンだけじゃなく、パパ上やカイル、果てはロナルドからお姉さん方にまで持たせてみようとしていたことを知った新しい魔法使いの先生は、「そんな軽々しく聖剣を扱うものではありません!」みたいな感じでめちゃくちゃ怒られました。


いやだって、ホントに他の人には使えないのかとか気になるじゃない?


さすがにお姉さん方は手にすることは断固拒否られましたけど、そんな嫌がらなくても、と思ったけど、そりゃ塵にはなりたくないもんね、その話を知ってからは持たせようとなんかして申し訳なくなったわ。


結論としてはパパ上もカイルも持てた。でもなんか、すっごくゾワゾワモゾモゾしたらしい。

私もすっごくゾワゾワモゾモゾして

「やじゃやじゃやじゃ!」ってなったもん。


パパ上が言うには、「聖剣の中には青い色の線が丸を描いて流れている。アレンの中にも青い色の線が丸く流れている。だから2つが触れても青色同士で同じだから混ざったところで何も思わない。だが恐らく、パパ上やカイルの中には黄色や緑、違う色の線が流れているから、混ざるとぐちゃぐちゃするのだろう。」って。


青がいいのに、触ったところから絵の具みたいに混ざっていっちゃうから嫌な感じがするのかな、って思った。


あ、パパ上ちゃんと自分のこと話す時、「パパ上」って言ってくれるようになりました。ステキすぎる。真面目なイケメンボイスで紡がれる「パパ上」。いい。


ロナルドの時は、持つこともできなかった。というか、ロナルドに持たせた瞬間、子泣きジジイみたく聖剣が激重になったとかで、急にがくってロナルドの手が地面に落ちてロナルドがぶっ潰れてびっくりした。


「うおおっ?!!」って言いながらロナルドが地面から起き上がれないどころか、両手で聖剣を支え持とうとしたままの手が、だんだん地面に沈み始めて、アレンが慌てて聖剣取り上げなかったら、それこそ史実みたいに恐ろしいことになりそうで、あれはさすがに怖かったわ。

ロナルドにはあとで何度もごめんなさいはしたけれど、ロナルドも笑って許してはくれたし、私への対応は変わらずにいてくれているけれど、聖剣自体とは距離をとって近づこうとはしていない感じがある。


そんなことしていたもんだから、そりゃ先生にも怒られるってもんだよね。


とてもじゃないけど、聖剣使って果物むきました、なんて絶対言えないわ、とアレンと2人だけの秘密にしようと誓いあった。


非常に良い切れ味で2つに切り分けられたリンゴが、あっと思った時には皮がきれいにむかれた状態で8個に分かれていたときは、いったい何が起こったのかさっぱりわからなかったけど。


多分あれは、聖剣も、まさかリンゴを剥くことになるとは思わず不服だったものの、聖剣の威信にかけて一瞬にして皮を剥いて切り分けてくれたんじゃないか、と思うことにして。

「でも多分らもうやらないほうがいいかもね…。」

とやっぱりこれも、アレンと2人、秘密にしようということになり。

「聖剣、ごめんちゃい。」

と私も言葉に出して謝ったのはつい先日のことだ。



屋敷の図書室で、魔法の授業は行われる。

カイルは参加せず、生徒は私とアレンの2人。

魔塔の魔法と、神殿の神聖魔法は、同じく魔法という名前で一緒のようにされているものの、成り立ちや効果、歴史的背景の何から何まで違うものだから、一緒に学ぶことはないから、らしい。


魔法使いの先生、エルランド先生という名前の若い男の先生だ。まっすぐサラサラの翠色の長い髪を緩く三つ編みにして胸の前あたりで細めの銀色のリボンで無造作にまとめています感がこなれた感じの学者系イケメン。


いやもうなんなの?この国、イケメンしかいないの?ってくらいイケメン率高いんだけど。なんなのここは芸能界なの?それも今までなかった脳筋系(失礼)じゃないイケメン!!いい!!


翠の髪とかなんて、アニメとかのイケメンしか似合わない、現実にいたらひくわ〜、とか思っていた以前の私に言ってやりたい。

イケメンは、何色だろうがイケメンに変わりない!と。


なんていうの?この、今までのムキムキマッチョな、筋肉モリモリミチミチっとした、熱気のある、陽気なイタリア系?なマ行の活用形みたいな人たちとは打って変わった、物静かな、夜っぽい不機嫌そうな感じ。

マッチョの反対がなんていうのかも、マ行の反対がなんなのかもわかんないけど。そもそもマ行ってなんだ、初めて使ったわ。あ、夜っぽいから、ヤ行?


そんなまとまりのないことをあれこれと考えていく。

イケメンに関しては妄想広がりとまらない。


まさにやめられないとまらない、だ。

私ってこんなキャラだったかしら、とか嫌だわレディが恥じらわなきゃだめよ、とかも思うけど、いやもう私の想像を簡単に超えてくるこのイケメン率に、フィーバーが止まらない感じなのよね。


マッチョ、ミチミチ、ムキムキ、モリモリまみむめも行に対し、や…痩せてて、憂鬱げで、夜っぽいやゆよ行!

言っててわけわかんなくなってきたけど、とにかく今までにないタイプのイケメンクールビューティーエルランド先生。


思わず私もアレンに頼んですぐにあの気だるげ三つ編みヘアにしてもらっちゃったわ。かわいいリボン付きですぐに対応できるアレンのスキルの高さにも軽くおののいたけどね。

イケメン率も高いけど、こっちの将来有望イケメン8歳児個人のスキルの高さも侮れない。


魔塔というところから来たエルランド先生は、週に三回、お昼ご飯の後位の時間に来てくれる。もともとは魔塔主補佐室(という名の何でも屋だ、と先生は言う)の副室長という、なかなかの立場なんじゃないのかな、という地位の学者さん?魔法使いさん?でありながら、自身も研究に明け暮れているのだけれど、突如降って湧いた「聖剣の教師」募集というパパ上からの要望に、今年で116歳になるとかいうご高齢な魔塔主閣下が「ワシが行く!」とか言い出して、どっちにも何かあったらエライコッチャと上へ下への大騒ぎとなり、最終的になんで自分が指名されたのかわからぬまま、魔塔主に「授業後必ず聖剣様が仰ったことを報告するように」と厳重指令を下されてここに来ているんだそう。


なんか、不憫。


イケメンで仕事もできそうなのにそこはかとなく不運っぽいエルランド先生は、愛想も愛嬌もまるでない堅物イケメンぽいけれど、授業はわかりやすいし、言葉の端々にクスッと来る何かを持つ隠れお茶目さんだと私は思っている。


だってそもそもここに来ることになった馴れ初め話がなんだかすでにお茶目さんだ。

大丈夫なんだろうか、その魔塔主おじいちゃん閣下は…。うん、なんて呼べばいいのかわかんないわ。


どんな授業にすればいいか、初めはエルランド先生も困っていたけれど、まずはアレンに合わせよう、ということになったようで、アレン向けの内容で、歴史とかを教えてくれた。


私もほら、見た目はこども、中身は大人ってやつじゃない?あの超有名フレーズそのままなもんだから、本当に子供向けか?その内容、ってツッコミどころ満載な難関授業だったけれども理解はできた。

いや、大人じゃなかったらまずかったと思うレベルだったけれども。


ただ、理解はできるんだけれど、どうやらその理解することで私の体力的には精一杯で、どっと、疲れちゃうんだよね。


結果、疲れ切った私は余計にイヤイヤ、言うようになり、わがまま全開シヤジャ姫が爆誕することになっちゃったわけで。


わがまま全開っていったって、所詮は子どものグズりだから可愛いもんではあるのだけれど、申し訳ないと思っていてもこれがなぜか私では止められないんだよね。

理性とか関係なく、感情というか、成長過程というか、このままならない感じがなんとも面映ゆく、それが余計にシヤジャ姫が怪獣のように暴れ回るという。



もぎゅもぎゅ、もぎゅもぎゅ…。


今日の授業が終わり、お姉さん方がお茶の用意をしてくれるので、勉強していた私とアレンが二人で使うには広すぎる机に置かれた教科書ノートはそのままに、自分たちだけ移動する。


ま、ノートを取っているのはアレンだけだけど。私はまだ文字書けません。


そうして用意されていた、色々な木の実が使われて甘くて香ばしいタルトみたいな激ウマケーキを口にしてもぐもぐもぐもぐする私。


その目はほとんど閉じかけていて、そのままいつでも寝ちゃいそうだ。


美味しいから口はちゃんと動いているけど、頭の中は今日習ったことでパンパンだ。


聖剣と勇者が現れると、時を同じくして魔王も誕生するのだとか。


今回はまだ魔王の誕生は確認されてはいないけれど、魔物による被害件数は確実に増加している、という不穏な話から始まって、またその一件一件が深刻化しているなんて心配になる話もあったけれど、でもまだいよいよ魔王降臨か!みたいな動きや深刻な瘴気の発生とかは発見されてはいないとか。


先代の魔王は魔竜だったとか、先代の勇者が聖剣もろとも魔竜を封印して今の平和が訪れたとか。


魔竜が封印された洞窟は今もなお瘴気がすごい勢いで発生し続けていて、なかなか浄化しきれていないとか。


この国のお姫様が代々巫女姫様として瘴気を浄化する力を持っているけど、現在巫女の力を持つ姫様はまだ幼い王女様一人しかいなくて、王女様が巫女姫様になればすぐにでも、魔竜の洞窟は浄化されることになるんだろうとか。


瘴気を打ち払うことは聖剣でもできるけど、穢された土地を浄化するのは巫女姫様にしかできないとか。


浄化という行為自体は魔法使いにも可能だけど、そもそも瘴気自体も色々あるから、それぞれの瘴気にあわせた対応で浄化をしなくてはいけないのだとか。巫女姫様はまるっと全部どんな瘴気も浄化できちゃうすごい方なんだとかかんとか。


いやもう色々新しい情報がありすぎて、私の頭はオーバーワーク。

熱持ってプスプス湯気まで出そうな勢いで、睡魔まで襲ってきて頭がゆらゆら揺れてしまう。


いつもは「報告せねばなりませんので」とすぐに帰ってしまうエルランド先生だけど、アレンが質問があるとかで、今日は珍しく残って一緒にお茶をしている。


でもなんか、2人が話している内容がまた小難しい感じでね、ぼんやりしている私の頭に届いてくる言葉がなんか瘴気がどうとかマソのノードがどうとかこうとか、


ぱくり、もぎゅもぎゅ…


おーじょ様がいればいいんじゃないの?あ、でもおーじょ様まだ小さいのかぁ…。小さいってどれくらいなのかなぁ、おーじょ様っていうくらいだから可愛いんだろうなぁ…。いいなぁ…可愛い女の子…。ふわふわしてるんだろうなぁ…


難しいことを考えていたような気がするけど、そのあたりで私は容量オーバー。

薄紫色のキレイなフワモコ高級クッションに体をうずめ、口の中も美味しい幸福に包まれたまま至福の時を迎えるのでした。







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