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二つの道を一つに。

随分久しぶりですね。


ロッカがお弁当箱を突き返して出ていくと、教室はざわざわとした異様な雰囲気に包まれる。

「な、なんだったの、さっきの子………………」

「えと、アーちゃんの知り合い?」

「えぇ、まぁ………………」

どうしたらいいのか分からなくなって、とりあえず手の中のお弁当箱をじっと見つめる。………………普段はジャンクフードに埋もれているだろうロッカの為に、今日は一つ多く作ったお弁当。きっと喜んでくれると思って作ったのに、私ったら預けるだけ預けて放っておいて………………はぁ。これをキッカケにもっと仲良くなれると思ったのに。

「………………ちゃん、アーちゃん?」

「………………っと、シオンちゃん、何かしら?」

「えと、良かったの? あんなこと言わせっぱなしで。………………なんだか逆ギレみたいだったけど」

「あぁ、うん………………いいのよ、私がロッカのこと放置しちゃったのが悪かったんだし。」

「そうなの? ならいいけど………………アーちゃん、なんか眉間にしわ寄せて物凄い顔してたから………………」

「あら、そう?」

顔に手を当ててむにむにと動かしてみせる。………………うん、今日もバッチシ。

「とりあえずロッカのことは、私の問題だからみんなは気にしないで。」

私のことを心配そうに見つめるみんなにひと声かけると、腕時計をチラッとのぞき込む。

「さぁみんなっ、もうすぐお昼休みも終わりだから次の支度してっ」

そう声をかけると、みんな思い思いに散っていく。さてと、私も次の授業の準備をしないと………………

一旦は頭の中からロッカのことを追い出した私だけど、なかなか簡単には割り切れないみたいで、その後の授業では教科書の読む場所を間違えたり、提出するプリントを出し忘れたりと散々なことになった。


放課後になってから、改めてロッカに会いに行くことにする。確かロッカは2組って言ってたはず………………いや、ロッカのことだから教室にいるとは考えづらいし、だとすると屋上のアジトかしら? ………………でも、あの様子だと………………

とりあえず、まずは2組の教室から当たってみることにする。二つ隣に足を運んで、教室の入口からのぞき込んでみる。………………居ないわね、だとするとアジトの方かしら?

階段をてくてくと登って屋上下のアジトをのぞき込む。………………いた。隅っこの方で、どこからか持ってきた掛け布団に包まってふて寝してる。

「ロッカ。」

そっと声をかけると、びくりと肩が震える。息をためてもう一度呼んでみる。

「………………ロッカ」

「………………なんだよ」

ごろんと寝返りを打ってこちらを向く。影になってよく見えないけれど、多分今のロッカの顔はひどい事になってると思う。

「………………お昼の続き、しよっか」

「………………いい」

あ、スネた。ごろんとまた壁の方を向く。

「そんなこと言わないで。ほら、クッキーも持ってきたし。私の手作りよ?」

少しだけ響いたっぽい。身じろぎしたかと思えば、取り繕うように咳払いする。

「………………そ、そんなんで誤魔化されると思ったのかよ………………」

強がってる。けど、その言葉尻は震えていて。

「………………ロッカ、拗ねてるの?」

「………………当たり前だろ、せっかく誘われたから来てやったのに………………ボクのことほっといて他のやつと話すとか………………ボクをコケにしてんの?」

「そ、そんなわけじゃ………………」

いつにも増してロッカの言葉が鋭い。

「………………………………凛、お前一人になったこと無いだろ。………だから分からないんだろ、一人ぼっちの気持ち」

「い、いきなり何を」

「………………ボクはねぇ、ずっと一人ぼっちだったんだよ? ご飯を食べるのも、授業を受けるのも………………だからこそゲームに居場所を求めたのに………………そこに凛が入ってきてくれて、少しだけ期待してたのに。所詮、凛も他のみんなと同じだった。ボクのことは、その他の人Aぐらいにしか考えられてないんだなって………………ボクにとっては、凛は『友だち』なのに………………」

「ロッカ………………」

ぽろぽろと零れていくロッカの言葉を、私は全部拾えずにいた。………………私は、ロッカの苦しみに気がついてあげられなかった。………………ロッカの近くにいて、助けてあげられるポジションだったのに。………………そして私もまた、『一人』だったのに………………

「………………気が済んだら出てってくれる?」

いつも通りを装うロッカの声に一歩踏み出すと、積んである椅子がガランと崩れる。振り向いたロッカの目の前に膝をつくと、いきなり手を伸ばす。

ぎょっとしたようなロッカの眼差しを正面から受け止めると、そのまま頭の後ろに手を回して抱き寄せる。

「………………ごめんロッカ、私はロッカのことに気がついてあげれなかった。………………私だって、昔は一人ぼっちだったのに。」

「………………凛が、一人ぼっち?」

「………………うん。私って見た目もこれだし、名前だってみんなより二つも多い。だから、星花に来る前は怖がられてたの。………………ここに来てからは、みんな寛容で受け入れてくれて………………私は、演じてた『黒咲凛』から、本物の『Armaghan Jamileh Rin Kurosaki』になれたの。」

「………………嘘だ、そんなの。だって凛は、みんなに囲まれて………………」

「…………それも、ここに来てから。…………あ、みんなへの餌付けは本心からのものだからそこは勘違いしないでね? 」

「………………益々信じられないんだけど。元が一人ぼっちなのに、なんでそんなに、周りに溶け込んでいけるの………………?」

「仲良くなりたいって気持ちがあれば大丈夫。」

ロッカが疑いの目を向けてくる。

「んな事言われてもなぁ………………」

「あら、ロッカにだって出来るわよ。だってほら、私と仲良くなれたじゃない? 出会いはアレとしても………………」

「そ、そう、かなぁ………………」

ロッカの視線が宙をさまよう。………………なんでこう、ロッカは自身なさげなのかしら………………

「………………とりあえず、そのまぶたどうにかしましょ?」

ロッカの手を引いて秘密基地から引きずり出して、水道でハンカチを絞ってからロッカのまぶたに当てる。

「………………どう、落ち着いた?」

「ん、まぁ………………」

伏し目がちなロッカの頭を、手持ち無沙汰にぽんぽんと撫でる。

「………………なんだよ、人の頭で遊ぶなよ」

「ごめん、なんとなく………………」

と、言いつつぽんぽんは止めない。

「………………なぁ、凛」

「なに、ロッカ?」

「その………………凛は、ボクのことどう思う?」

「どうって………………うーん、カワイイ?」

「疑問形かよ………………まぁそれは置いておくとして。その………………友達だと、思うか?」

「今更何を言い出すのよっ、私はロッカのことを、出会った時から友達だと思ってたわ。」

「そう。………………そう、か。うん、分かった。」

ロッカは一つ頷くと、そのまま黙り込んだ。しばらくして口を開くと、

「………………友達、作ってみるよ。凛以外の。」

ボソリとそう呟いた。

「そう。」

「そう、ってなんだよ………………こっちはけっこう悩んで決断したのに………………」

ロッカが不満げに口を尖らす。

「いや、ちょっと言葉が見つからなくて………………………………」

むぅ、とそっぽを向くロッカ。しばらくしてから、そっと指を差し出す。

「………………頑張るけど、最初っからうまくいくわけないし………………しばらくは友達は凛だけになりそうだから、今約束させて。………………ボクは友達をつくる、そして凛は、ボクとご飯を食べる。………………いい?」

「もちろんよ。」

一も二もなく、私はロッカの指に自分の指を絡めた。

ロッカと私の道は、今始まったばかり。

いきなりで申し訳無いのですが、二人の物語は一旦ここで筆を置かせていただきます。

この続きは、作者にロッカと凛を扱う技量が付いてからになります………………(おい)

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