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第20話 【テレシウス・エーレント編】国一番の剣士は 猫族の王を守るためにやってきた

物語の登場人物・世界の【総まとめ】はこちらの短編をご覧ください:

https://ncode.syosetu.com/n3739lz/

挿絵(By みてみん)




気が付いたときは、ガタガタ揺れる幌馬車に鎖付きで転がされていた。


テレシウスは生きているのか…?


なぜこんなことが起きたか、

俺には大体分かる。


80を超えた爺さん大王が、ちょうどあの時死んで、

テレシウスが神鼠(しんそ)を継承したのだ。


そして、そこにいた俺が獣化した…

こういうことなんだろう。


俺…猫族(フェリス)の王が神鼠を襲ったのだ。


ただでさえ、迫害されていた猫族が、今後どうなるのか。


それに、猫族(フェリス)が、神鼠を襲った場合、

例外なく処刑される。


軌道に乗った煙草産業はどうなるのか。

俺が処刑された後、誰かが新しい猫族(フェリス)の王を継承するが、

その王のもとで存続できるのか。


テレシウスは…

俺を処刑しても、この煙草産業に…猫族(フェリス)に手を貸してくれるんだろうか…


俺を処刑しても…


処刑…?


…ああ、そうか。

俺は、俺自身はダチと思っていた奴に、

遠からず処刑されるのだ。


(貴様はダチじゃない)


不意に思い出されたテレシウスの言葉に、

心臓が切り裂かれた。


処刑されることより、

テレシウスの「ダチじゃない」宣告の方が余程こたえるとは…



飼われていたのは、

俺の方だったのかもしれない。


********


こうなったら、いっそテレシウスも死んでいればいい、と思えてきた。

俺は転がったまま声を上げた。


「テレシウスはどうなった?生きているのか?」


すると、俺が転がされている荷台の隅から、低い声がした。


「生きている。」


俺は顔を上げた。

黒い長髪の、ガタイのいい男が、荷台の隅に座って俺を見ている。


「…ロベルトか?」


「お久しぶりだね。」


「テレシウスは…?」


「大怪我も大怪我。

普通の人なら死んでるよ。

でも、あの人は、国一番の剣士テレシウス…

すぐに治るさ。」


俺は安堵すると同時に、驚いた。


テレシウスが、国一番の剣士…

しかし、妙に納得できる。


「ところで、長い間、テレシウスがやっかいになったね…」


「死ねよ!!!クソ野郎!!!!!!!!」


その言葉を聞いた瞬間、俺は、怒りを噴出させた。


「なんで、猫族(フェリス)の俺んちに、鼠のテレシウスを寄越したんだよ!!!

ザケてんのかよ、テメェ、あ!?」


「こっちにも色々あるんだよ!!!」


意外にも、温厚なロベルトがキッとなって言い返した。


「それに、テレシウス…

いや、テレシウス様が、君のところに住みたいと強く希望したんだ。」


「その我がままの結果が、これかよ…!!」


馬鹿馬鹿しくなった俺は、

ゴロリと横たわった。


「ロベルト…

アイツは、コルデールに、何しにきてたんだ?」


「…」


「話せよ。誠意を見せろ。」


ロベルトは深いため息をついて、

ゴトゴト揺れる荷台にもたれかかった。


「コルデールで内乱の動きがあって…

その調査と鎮圧のために、テレシウス様が送り込まれたんだよ。」


「…俺んちに泊まる必要ねェじゃん。」


「その内乱に、猫族の王(あなた)に反発する猫族(フェリス)が加担していたんだ。


神羊(しんよう)コルデールの王は、猫族(フェリス)を使って神鼠(しんそ)を襲う…

その一方で、神羊は、猫族が君を暗殺することに協力する…

そういう計画だよ。」


「…へェェ…」


俺は、「相当数の猫族に狙われている」とテレシウスに言われたことを思い出した。


「密命を受けたとき、テレシウス様は、

『拠点をエーレントという猫族(フェリス)の王の家にする』

と、自分から提案した。

そうすれば、猫族の王の命を守れる、とね。」


「別に、俺の護衛は必要ねェだろ…?」


「そう、そのとおり。

我々にしてみれば、内乱を鎮圧できれば、

猫族の王が死のうと生きようと、どうでもいいからね。」


「はっきり言うねェ。」


「ハハハ」


ロベルトは整った顔を綻ばせた。


「でも、テレシウス様は違った。

『ハッ!猫族(フェリス)の王を守ってやろう!

つまらん内乱は、そのついでに鎮圧してやる。』ってね。」


俺は驚き、そして、呆れ返った。


「ハァ?何様なの?」


「テレシウスは、いつでも『テレシウス様』だよ。


…亡くなった前の大王は、試合を観覧するのが趣味だったから、

ディモイゼでは、ひっきりなしに大会や観覧試合があった。


奴隷や猛獣が殺し合うやつだよ。

人間が恐怖で叫んだり、逃げ回ったり、狂ったように暴れたり…


正直、私は、胸糞悪かった。


あるとき、テレシウス様が、

『ハッ!つまらんな!私が芸術にしてやろう!』とか言って、

急に剣一本持って、観覧席から飛び入り参加してね。」


「…」


(次話に続く)

十二支と神鼠は猫に「こい」


第Ⅰ章(人生の 最後のページで 見えるもの):https://ncode.syosetu.com/n5418ls/

第Ⅱ章(猫に恋する神鼠 妹に恋する禁忌の竜):https://ncode.syosetu.com/n3802lt/

第Ⅲ章(神山ゴテスベルクと猫天神):https://ncode.syosetu.com/n9385lu/

第Ⅳ章(神鼠の中に 住まう者):https://ncode.syosetu.com/n2574lx/


カクヨムでも連載:https://kakuyomu.jp/works/2912051595951960067


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