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第19話 【テレシウス・エーレント編】俺らダチだろ? ―ダチなんかじゃない、貴様は。

修正ver.

物語の登場人物・世界の【総まとめ】はこちらの短編を:

https://ncode.syosetu.com/n3739lz/

挿絵(By みてみん)



それからも、俺たちは変わらない毎日を過ごした。


俺んちにいるときのテレシウスは、

相変わらず何もしないし、

素っ裸で部屋を歩くし、

女を連れ込むし、

俺もお相伴に与るし、

口を開けば他愛ない会話しかしない。

フラリと来て、フラリと去るところも変わらない。


俺が気を腐らせると、

耳輪やピアスを買って来るのも変わらない。


…少しだけ変わったところは、

俺が外出するとき、

テレシウスがマントをかぶって後ろの方からついてくること、

帰ってきたら、血の匂いをさせていることもあることだ。


――ああ、まだあった。


テレシウスが、哀しそうに葉巻を吹かしている時間が増えたことだ。


そんなとき、これまでは、

「アンタ、何考えてんだ?」

と聞くこともあった。


でも、今はもう聞かない。


その代わり、黙って近くに寄って、俺も煙草を吸う。


煙が混ざり合って、窓の外に流れていく。


この男が背負っているものを、

俺が少しでも分かち合えるとすれば、

これしか方法を見いだせなかったのだ。


*********


その日は唐突にやって来た。


ある日、日暮れにふらりと部屋に戻ったテレシウスが言った。


「明日、ディモイゼに帰ることになった。」


「新しい葉巻、まだ揃ってねぇぞ?」


「ここでの生活は終わりだ。」


俺は一瞬固まったが、すぐにテレシウスを睨みつけた。


「ハァ?

どういう意味だ?」


「野暮用が終わったから、

ここにいる理由がない。」


テレシウスは、寝台に腰をかけて手を組んだが、

俺の方は見ない。


「ハァ?理由?アンタ舐めてんの…」


「煙草の方は、これからも融通を…」


「んなこと聞いてねェ!!!!!!」


俺は、狭い部屋の天井まで跳躍すると、

テレシウスに飛び掛かった。


ヴッ…とうめいて、テレシウスは俺に組み敷かれる。


「貴様の身の安全も、もう確保…」


「いい加減にしろ…!!!」


俺は襟首をつかんだ。


「いい加減にしろよ…!!!

…そういう…問題じゃねェだろ!!!!!」


「ハッ…貴様はいつも、『さっさと出て行け』と言っていただろうが…」


そう言いかけて、

テレシウスは真っすぐに俺を見た。


「…とは、言えんな。」


テレシウスは、逞しい片腕でガッシリと俺の頭を抱えると、

しばらく黙っている。


「俺ら…ダチ…だろ?

ダチでも…俺らの立場じゃ…もう会えねェだろ…」


「ハッ!…ダチじゃない。」


「ハァ!?何だと!!!

もう一回言ってみろ!!!」


俺は飛び上がって、テレシウスの鍛え上げられた腹に、容赦なく着地した。

が、テレシウスは、


「野蛮な猫族(フェリス)だな…

話を聞け。」


と言って、むしろ、無防備に大の字になった。


「ダチなんかじゃない、と言ったんだ。

エーレント、私は…」


********


しかし、急にテレシウスは唸り始めた。

身体が、うっすらと青い光を放ち始めている。


同時に…


俺の身体中に、テレシウスへの憎悪が強烈に走り回った。


コイツをどうしても食べたいという欲求、

恐怖で凍り付いたテレシウスの顔、

そして、

浮き出てきた額のアザ…神鼠の刻印だ。


怒涛のように押し寄せる憎悪と食欲の濁流に飲み込まれ、

枕元の剣を引き抜き、

無我夢中でテレシウスに向かって振り下ろした。


剣を引き抜くと、

吹き出る血を夢中で吸い取る。


頭を上げると、

あまりにも美味そうな、震えるブルーダイヤモンドの瞳が目に入った。


喜悦に溺れながら、俺はその瞳を指で(えぐ)り出そうとした。


その瞬間、


「神通力 【牛歩】!」


という声と共に、

目の前が真っ暗になった。



これが

俺が

ダチとして

テレシウスを見た

最後の瞬間だった


十二支と神鼠は猫に「こい」


第Ⅰ章(人生の 最後のページで 見えるもの):https://ncode.syosetu.com/n5418ls/

第Ⅱ章(猫に恋する神鼠 妹に恋する禁忌の竜):https://ncode.syosetu.com/n3802lt/

第Ⅲ章(神山ゴテスベルクと猫天神):https://ncode.syosetu.com/n9385lu/

第Ⅳ章(神鼠の中に 住まう者):https://ncode.syosetu.com/n2574lx/


カクヨムでも連載:https://kakuyomu.jp/works/2912051595951960067


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