第19話 【テレシウス・エーレント編】俺らダチだろ? ―ダチなんかじゃない、貴様は。
修正ver.
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それからも、俺たちは変わらない毎日を過ごした。
俺んちにいるときのテレシウスは、
相変わらず何もしないし、
素っ裸で部屋を歩くし、
女を連れ込むし、
俺もお相伴に与るし、
口を開けば他愛ない会話しかしない。
フラリと来て、フラリと去るところも変わらない。
俺が気を腐らせると、
耳輪やピアスを買って来るのも変わらない。
…少しだけ変わったところは、
俺が外出するとき、
テレシウスがマントをかぶって後ろの方からついてくること、
帰ってきたら、血の匂いをさせていることもあることだ。
――ああ、まだあった。
テレシウスが、哀しそうに葉巻を吹かしている時間が増えたことだ。
そんなとき、これまでは、
「アンタ、何考えてんだ?」
と聞くこともあった。
でも、今はもう聞かない。
その代わり、黙って近くに寄って、俺も煙草を吸う。
煙が混ざり合って、窓の外に流れていく。
この男が背負っているものを、
俺が少しでも分かち合えるとすれば、
これしか方法を見いだせなかったのだ。
*********
その日は唐突にやって来た。
ある日、日暮れにふらりと部屋に戻ったテレシウスが言った。
「明日、ディモイゼに帰ることになった。」
「新しい葉巻、まだ揃ってねぇぞ?」
「ここでの生活は終わりだ。」
俺は一瞬固まったが、すぐにテレシウスを睨みつけた。
「ハァ?
どういう意味だ?」
「野暮用が終わったから、
ここにいる理由がない。」
テレシウスは、寝台に腰をかけて手を組んだが、
俺の方は見ない。
「ハァ?理由?アンタ舐めてんの…」
「煙草の方は、これからも融通を…」
「んなこと聞いてねェ!!!!!!」
俺は、狭い部屋の天井まで跳躍すると、
テレシウスに飛び掛かった。
ヴッ…とうめいて、テレシウスは俺に組み敷かれる。
「貴様の身の安全も、もう確保…」
「いい加減にしろ…!!!」
俺は襟首をつかんだ。
「いい加減にしろよ…!!!
…そういう…問題じゃねェだろ!!!!!」
「ハッ…貴様はいつも、『さっさと出て行け』と言っていただろうが…」
そう言いかけて、
テレシウスは真っすぐに俺を見た。
「…とは、言えんな。」
テレシウスは、逞しい片腕でガッシリと俺の頭を抱えると、
しばらく黙っている。
「俺ら…ダチ…だろ?
ダチでも…俺らの立場じゃ…もう会えねェだろ…」
「ハッ!…ダチじゃない。」
「ハァ!?何だと!!!
もう一回言ってみろ!!!」
俺は飛び上がって、テレシウスの鍛え上げられた腹に、容赦なく着地した。
が、テレシウスは、
「野蛮な猫族だな…
話を聞け。」
と言って、むしろ、無防備に大の字になった。
「ダチなんかじゃない、と言ったんだ。
エーレント、私は…」
********
しかし、急にテレシウスは唸り始めた。
身体が、うっすらと青い光を放ち始めている。
同時に…
俺の身体中に、テレシウスへの憎悪が強烈に走り回った。
コイツをどうしても食べたいという欲求、
恐怖で凍り付いたテレシウスの顔、
そして、
浮き出てきた額のアザ…神鼠の刻印だ。
怒涛のように押し寄せる憎悪と食欲の濁流に飲み込まれ、
枕元の剣を引き抜き、
無我夢中でテレシウスに向かって振り下ろした。
剣を引き抜くと、
吹き出る血を夢中で吸い取る。
頭を上げると、
あまりにも美味そうな、震えるブルーダイヤモンドの瞳が目に入った。
喜悦に溺れながら、俺はその瞳を指で抉り出そうとした。
その瞬間、
「神通力 【牛歩】!」
という声と共に、
目の前が真っ暗になった。
これが
俺が
ダチとして
テレシウスを見た
最後の瞬間だった
十二支と神鼠は猫に「こい」
第Ⅰ章(人生の 最後のページで 見えるもの):https://ncode.syosetu.com/n5418ls/
第Ⅱ章(猫に恋する神鼠 妹に恋する禁忌の竜):https://ncode.syosetu.com/n3802lt/
第Ⅲ章(神山ゴテスベルクと猫天神):https://ncode.syosetu.com/n9385lu/
第Ⅳ章(神鼠の中に 住まう者):https://ncode.syosetu.com/n2574lx/
カクヨムでも連載:https://kakuyomu.jp/works/2912051595951960067




