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女装令嬢の日常  作者: マルコ
女装令嬢の戦闘実習

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20/42

2-7

感想、評価等ありがとうございます!

 ──ダンジョン。

 力と富と名声を得る場所。


 そこには数多の魔物が 跋扈(ばっこ)し、数知れぬ財宝や魔法のアイテムが眠っていると言う。

 数多くの勇者の血と肉と命を喰らい、日々成長するダンジョンを攻略した者には、巨万の富が約束されるだろう。


 そんなダンジョンが発生する理由は誰も知らない──


 などと言われていたが、それは昔の話である。

 今ではその生成過程も解明されている。

 そもそも、生き物のように成長し、内部構造が変わるダンジョンが何なのかと言うと……なんてことはない。生き物なのだ。


 ダンジョンワームと名付けられたその生き物……魔物のギルド討伐ランクは測定不能。

 広くダンジョンと認識されているのはオスの成体で、メスは巨大なオスとは比較にならないくらい小さく、指の先ほどしかない。

 このメスが世界に散らばるオスの元へと向かい、交尾の後に移動し、卵を産む。そこで孵化したオスが成長すると、新たなダンジョンとなるのだ。


 そして、成長したダンジョンワームは魔物や普通の動物の格好の住処となる。住みついた魔物たちの魔力や死体を取り込み、さらに成長する。そして、老廃物として宝石を生み出すのだ。これを人々は求めてダンジョンに潜る。


 住み着いた魔物にやられる者もいる。

 そうした者たちの持ち物は、次にやってきた者たちの取得物となる。

 大きく成長したダンジョンワームほど、攻略難度は上がり、宝石やアイテムも数多く手に入れることができる。


「しかし、その手に入れたアイテムの所有権はどうなるのでしょうか?」


 解説していた教師の声を遮り、ひとりの生徒が質問した。ほかの生徒も気になるのか、真剣な眼差しを教師に向けている。


「ダンジョンで入手したものは取得者に所有権がある。例え、以前に所有していた者が判明したとしてもだ」


 それに、ダンジョンに遺されたアイテムはダンジョンに……ダンジョンワームに吸収され、魔力を帯びた形で排出される。つまり、別物になっているのだ。


 さらに、長い期間放置されたアイテムは何度も吸収と排出が繰り返され、強力なマジックアイテムへと変貌していく。

 十分な期間さえあれば、最下級のポーションですら、最高級のエリクサーに変質するのだ。


 巨大で長く存在するダンジョンほど強力なアイテムを得る事ができるのは、こうした理由からだ。

 この過程は学園で管理しているダンジョンで確認されたものだ。単なる量産品の鉄の剣をダンジョンワームに喰わせたところ、数年後には大貴族所有の魔剣と遜色ないレベルの業物に変質していたのだ。


 そんな説明を教師がすると、皆の目は期待と欲望で輝いていた。


(今年の1年は優秀だ)


 そんな風に教師──アドナンは胸中で呟く。

「国のために強くなる」や「家のために箔をつける」などという高潔な動機というのは、ウケは良いがちょっとした挫折で折れてしまう。立派な動機であればあるほど「別に自分がやらなくても良いのではないか」という気になるものだ。


 だが、名声が欲しい。異性にモテたい。金が欲しい。といった「不純」な動機は他人任せにしては意味がない。何せ自分自身の欲望が原動力なのだ。こうした動機をもつ者は伸びる。


 この学園にいる者のほぼ全員が貴族か裕福な商家の者なので、そういった欲望にはだいたい疎い。

 だが、今年の1年は違う。少なくとも、アドナンの担当するクラスは。


 アドナン自身も5大公爵家とはいえ、三男という立場から、自分自身の価値を示そうとダンジョン攻略に精を出した事を思い出す。


 ──同時に、「悪役公爵子息」から被った数々の被害をも思い出すが、私情は挟まない。


 ──そう、目の前に居るのがあの男の()だろうと、他の生徒と同様に、平等に扱うのだ。



 そんな事をアドナンが思ったのが、測定開始前の事。


「さて、ではダンジョン実習に挑む者を発表する」


 現在は測定も終わり、結果発表の時間だ。

 測定で優秀な成績を納めた者……具体的には各クラス上位2名が最初のダンジョン実習に挑む事ができる。


 もちろん、各クラスの3位以下が他のクラスの1位よりも優秀である可能性はあるが、コレはあくまで最初の1回のみの話だ。

 たかが1回の経験の差で差が開くほどダンジョンは甘くない。しかも、学園が管理している安全なダンジョンだ。


 とはいえ、こういった競争は向上心を育てる。そしてこのクラスで選ばれたのは──


「エイアンド殿下と、エレン君。おめでとう」


 名を告げた時、一瞬落胆の色が生徒たちに広がったが、すぐに拍手でふたりを祝福した。

 別にこの日にダンジョンに挑戦できなくとも、別の日にいくらでも挑戦できるのだ。──もちろん、許可は必要だが、選考から漏れて落胆するような実力の者なら、すぐにでも許可が出るだろう。


(それにしても……)


 アドナンは測定の結果を思い出す。

 本当に、今年の1年……とりわけ彼の担当するクラスは優秀だった。

 学年の上位5人が全て彼のクラスだった。


 攻撃魔法が使えず、攻撃魔法系測定をしなくとも5位に食い込んだシャルトリュー。


 突出したところは無いが、高い平均点を叩き出したリリア・ノマール。


 そのリリアの上位互換とも言える成績のイーチェ・オライト。


 王子らしく、他の生徒よりも頭一つ抜き出る成績を収めたエイアンド・ローラシア。


 そして、先ほど告げた時は2番目に名を上げたが、その実学年1位。上位冒険者とも遜色のない成績を叩き出したエレン・クアマリン。


(楽しみと言うべきか、末恐ろしいというべきか……)


 教師としては、前者であろう。

 だが、彼の脳裏にはかの「殲滅武姫(ぶき)」の逸話が渦巻いた。


 ──考え過ぎだ。


 たしかに、突出した成績ではあるが、非常識というほどではない。

 そうアドナンは結論付け、ダンジョン攻略の手続きや注意事項を、ふたりを含めたクラス全員に告げるのだった。


 この時アドナンは……いや、学園の教師全員、エレンがまだまだ余力を残している可能性など、考えもしなかった。


 だがそれは仕方がないだろう。いくら測定しても、他人の能力を正しく()ることができる者など、()()()()()()()()()()()

設定説明するのに授業って体裁にするの便利だなー。

とか思ってるんですが、どんなモンでしょう?


次回は22日です。

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