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女装令嬢の日常  作者: マルコ
女装令嬢の戦闘実習

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21/42

あるパーティの末路

お忘れかもですが、「この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。」

 学園の管理するダンジョンはちょうど100ある。


 もちろん、それなりに広いとはいえ、学園の敷地内にそれらの全てがあるわけではない。

 国中……どころか、国外にもそれらはある。

 単に名目上、学園が管理していることになっている。というものまである。


 その者たちが入ったのは、学園の敷地内にある、実習用に完全に管理されたダンジョンだった。

 一見するとただの洞窟と違いは無いように見えるが、見た目で決定的に違う部分がある。

 壁や天井、床までもがほんのりと光っているのだ。

 この光──魔力の光こそが、ただの洞窟とダンジョンを見分けるポイントとなる。


 そして、この光故に(あかり)を準備する必要が無いというのは、ダンジョンに挑戦する者にとっては地味にありがたい部分なのだ。……その代わり、暗闇に紛れるような事は出来ないが。


「意外と簡単に忍び込めたな」


 先頭を歩く剣士の男が呟いた。


「そりゃぁ、依頼主が──」

「やめておけ。どこで誰が聞いているかわからん」


 続く魔法使いの女が言いかけたことを、最後尾の大柄な重装の男が遮った。


「は、こんなダンジョンで誰が聞いているんだい? 臆病ガロスは相変わらずだねぇ」


 言葉を遮られた女は、小馬鹿にした視線を後ろの男に向ける。


「なんとでも言うが良い。クライアントの名を言うなら、俺がその口をきけなくしてやる」

「おお、こわい」


 ガロスと呼ばれた男の淡々とした物言いに、女は軽く肩をすくめた。


 実際、この男に自分は勝てないと分かっているのだ。もうひとりの剣士と共に戦えば流石に勝てる相手ではあるが、剣士が自分に味方をする保証はない。ついでにいえば、争う意味もない。


 自分たちは固定のパーティ(仲間)というわけではないが、今回の依頼を受けたパーティ(同士)だ。

 ──そう、今回の第1王子暗殺という依頼を。


 学園が管理する安全なダンジョンとはいえ、危険性が皆無というわけではない。

 それなりに魔物は配置されているし、配置された魔物はダンジョンに蔓延する魔力を吸って成長する。

 さすがに、魔物が「湧き出る」ような事は無いが、アンデッドの類いは例外だ。

 ダンジョン内で死んだ魔物がアンデッド化する事もあれば、外部から霊が侵入してレイスのようなモノに成ることもある。


 さらには、一緒に入ったパーティ内でのいざこざだってある。

 そういった事情から、このダンジョンでも大怪我や死亡する事例が全くのゼロというわけではない。


 今回、「たまたま」王子がソレに巻き込まれるだけだ。


「ペアの生徒が王子と諍いを起こして殺害。そのまま逃走、ねぇ……雑すぎやしないか?」


 先頭の男が、今回のシナリオをそう評価する。

 今回の依頼人が用意したのは、そんなかなり雑なシナリオではあるが、完全に否定することもできない類のモノでもあった。


 何せ、ダンジョン内ではあらゆる証拠が消失、変質してしまうのだから。


 流石に、死体はダンジョンが「食う」前に見つかるだろうが、それはそれで都合が良い。

 王子が行方不明になるより、死体が確認できる方が、依頼人としても都合が良いのだ。


「雑でも何でも、王子が死ねばそれで良いんでしょ。そうそう、犯人役の子は、ワタシが貰うから」


 そう言った魔法使いの言葉に、ガロスと剣士は眉根を寄せた。


「なによ、逃すなんてマネはしないよ。手脚とっちゃうから」


 女の言葉に、男2人は同時に嘆息する。逃す心配ではなく、その行為を嫌ったのだが、この異常者には通じなかったようだ。


 とはいえ、ふたりも似たようなモノなのだ。

 依頼を打診された時、パーティ(同士)がこの面子だと知っていたら、絶対に受けなかっただろう。


 ……もっとも、彼らに極秘でくる依頼のパーティ(同士)など、いつも似たり寄ったりではあるが。


「しっかし、キラーラビットの1匹も居ない。ってのはどういうことだ?」


 剣士がそんな事を呟いた。その言葉通り、今までダンジョンの中で魔物に遭遇していない。


「王子サマの実習用に間引いたんじゃないかい? 過保護なこった」


 女がそんな推測を口にする。男ふたりも、その推測に満足したのか、そのまま疑問は棚上げした。


 この時、もっと真剣に考えていれば、或いは彼らの命運も違っていただろうか?



 さらに奥へと……少々の事態があっても容易にターゲットが逃げ出せないくらいの奥地へと入り込んだ彼らは、広場にたどり着いた。


「へぇ、ダンジョンにこんな場所があるんだね」

「集団戦もできそうだな」


 ガロスが呟いた通り、そこは集団戦の実習にも使われる広場だった。


 その広場の床に、何やら模様が描かれているのに剣士が気付いた。


「何の模様だ? コレ」


 剣士が声を発しなければ、見落としたであろうくらいには消えかけていたが、たしかに床に模様が描かれていることに残りふたりも気がついた。そして、魔法使いの女はソレが何なのかにも気がついた。


「コレは……召喚陣かね? ダンジョンの中で消えてないって事は、ついさっき描かれた? でも、この大きさって……」

「ゴフッ」


 ぶつぶつと模様を見て考え込んでいる女の傍らで、ガロスがそんな咳をした。


「おいおい、風邪か? 変な咳を……」


 剣士がそんな揶揄と共にガロスを見たが、最後まで言葉を発する事が出来なかった。

 異様な光景がそこにあったからだ。


 ──ナンでガロスの口から鎌が生えてるんだ?


 剣士がそんな疑問を持つ間も、ガロスの体はビクビクと震え、宙に浮き上がっていく。

 重装で、大柄な……軽く200ケロはあるガロスが、だ。


「コレは……マズい! この陣はディブファメットを呼び出す! ランク7のバケモノだ! この分だと、まだその辺に──」


 警告を発しながら女がふたりの方へ向き直ったのは、剣士の男の体が縦に両断される瞬間だった。


 カマキリを思わせる大ガマ。蜘蛛のような胴と脚。サソリのそれに似た尻尾。

 そして、大男であるガロスが小さく見えるその大きさ。


 ディブファメットと呼ばれるその魔物を認識した魔法使いの女が最期に見たのは、血を吹き出し倒れる自分の体だった。


1ケロ=だいたい1kg

魔物のランクについては1-2後書き参照。


次は24日です。

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