野火
「間に合うかな」
潤の言葉に、美咲は身を寄せるだけだった。
事情も分からぬまま、場の雰囲気に呑まれて学校までの車の運転手を買って出た水橋は。
後部座席でその若い手を携えて身を寄せる少年達に、畏怖と期待の入り混じった固く重苦しい感情を覚えていた。
(何しようっていうんだ!)
隊員達からの連絡で、学生達が通っていた学校に異形の巨大な竜らしき怪物が現れた事。その竜を呑み込む様に終結する霧がある事。両者の争いに巻き込まれた自衛隊の車両が破壊の渦中にある事を聞いた松山は、ここ数日の間に唐突に現れては、齢50の松山の常識を歯牙にもかけず否定していく若者達の存在に己の立つべき縁を失いかけていた。
(こいつら若造に、この異常事態を納める力が有るっていうのか!?)
ハイビームにしたヘッドライトの光条が彼らの行く先を暗示するように立ち込める霧の中に進むべき道を指し示していた。
ナビの音声に導かれて進む潤と美咲を乗せた車の周りを、纏わりつく様に追いかけてくる霧。
いや追いかけると言うよりは、競うようにヘッドライトの先へと向かう。
「どういうことなの!!」
順子と赤子たちだけの病室に八神は吠えた。
「仕方ないんです……誰か介錯してあげないと……」
八神の剣幕に怯えた順子の返事に八神の苛立ちはいや増した。
「介錯って?あなた自分が何言ってるのかわかってるの?」




