秘密兵器
「霧ってなんだかご存じですか?」
紙コップを両手で包み、冷えた手を温めでもするかのようにコーヒーを抱えながら立花が得意げに水橋に問いかける。
八神と言い、目の前のこの立花といい、なんでこうこまっしゃくれたメンバーが集まってるんだここは。水橋は口の中で愚痴る。
「別に難しくはないわよね、只粒子が小さいだけの水でしょ」
八神が口を挟む。
「半分正解です、と、言っておきましょう」
立花がすかさず答える。
「正確には、小さすぎて水滴になれなかった水の卵ですよ」
立花の持って回った物言いに首を傾げる水橋だが、八神は得心がいったようだ。
「それで放水車…」
顎に手を充てた八神に立花が身を乗りだして答える。
「ノズル先端を加工して、微粒子化した水を撃ちだします」
「恐れ入ったわね」
流石プロファイラー。これまでの状況証拠を積み重ねて、未だ正体も不明な霧と、その中で猛威を振るう怪物に対する有効な対策を編み出して見せた。
一人のけ者状態の水橋は説明を求めるように立花と八神の顔を交互に見る。
「霧を以って霧を制するとは」
感心したように嘆息する八神に立花は続ける。
「小さすぎて水になれないなら、更に水粒子を与えて水にしてしまえばいい」
重ねるように八神が続ける。
「容積が増えた霧は雨となって地上に引き寄せられる」
「これまでの怪物の猛威は霧の中でしか起きていませんでしたよね?」
ようやく得心がいった水橋が大きな声で口を挟んだ。
「霧を封じてしまえば怪物どもは出てこれない!」
「或いは消える、と言った所ですね」
水橋は改めて目の前の痩せぎすの青年をまじまじと見る。
この男は何も解明していない。
霧のなんたるかも、そこで蠢く怪物どもの事も。
一つも解明することなく只封じて見せる。
常人の水橋は只唖然とひ弱そうな立花を見つめるだけ。
取り敢えず、嫌われない程度には仲良くして置こう。
自分に言い聞かせて場を取り繕うように首を廻す。




