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召喚直後に同級生が戦い始めたので、《虫の知らせ》を信じて俺は城を出た  作者: きゅっぽん
第一章 俺は城を出て地味な冒険者になる
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第一話 その日は、いつも通りに終わるハズだった

 俺のクラスは、明らかにキャラが濃すぎる。

 学年一位のイケメン、ガチのお嬢様、身長190センチの不良。そんな連中に囲まれている俺の名前は、高橋 恒一。モブの高校三年生だ。

 今は二時限目の授業が終わったところで、まだ下校まで四時限もあると思うと大変しんどい。


 「大和、この間の中間の現代文、満点とか流石だな」

 「圭こそ、数学と物理は満点だろう。すごいよ」

 「物理満点はお前もだろ。体育も満点だったか。全く完璧超人め」

 教室の前方を見ると、やや赤茶けた髪の高身長イケメンと、カッチリ髪を整えた眼鏡イケメンが立ち話をしている。

 彼らは学年成績一位の天城大和君と二位の御堂圭君だ。

 しかも、天城君はスポーツも万能だし、性格もよく、学年人気も圧倒的一位だ。

 御堂君もスポーツも結構やるし、一部の女子に大人気だ。

 羨ましい。あやかりたい。見ているのが辛い。

 「二人ともすごいね。物理、私も少し教えてもらっていい?」

 「じゃあ、次のテストは一緒に勉強しようか」

 彼らの横に座っているのは、白石結衣さん。成績は七位だったか、八位だったか。二人に教えてもらう必要ないよね。

 ゆるふわの明るい栗色の髪が美しい正統派美少女で、性格もいい。

 体育祭の大縄跳びで彼女に応援された時は、俺も百五十パーセントくらい力が出た気がした。

 ……俺だけじゃなく、大縄跳びのクラスメイト全員を応援してたんだけど。


 「麗華様、今度のパーティーのドレスはお決めになりました?」

 「昨日、お父様がパリから呼んだデザイナーと相談したわ」

 「まあ、素敵」

 中央を見れば、腰まで届く艶やかな黒髪に、やや鋭い目つきの美少女が座っている。

 彼女の名前は九条麗華さん。彼女はマジモンのお嬢様で、彼女の周りには同じような女子達が、うふふ、おほほと話している。

 この学校は古い名門校で、九条さんのような本物のお嬢様も通っている。

 もっとも、OBの寄付金のおかげで授業料は意外と安いので、俺のような庶民も紛れ込んでいるのだが。

 「ねぇ~、麗華ちゃん! 昨日のテレビ、蒼井翔也が首四の字で勝ったんだよ~」

 「そう。良かったわね」

 今、ザ庶民な女子が九条さんに突撃していった。ああいうのを見ると肝が冷える。

 周囲の女子の目も厳しいが、九条さんの目元はやや緩んでいる、か?

 あのちっこい突撃少女は、桜庭瑠璃さん。女子にしては髪が短く、昭和に流行った猿のぬいぐるみを連想させる。

 なぜ、彼女はそんなに強心臓なのか。九条さんは彼女をどう思っているのか。世の中には謎も多い。


 「黒瀬さん、生活指導の桐谷が呼んでるらしいっスよ」

 「またかよ、アイツ。本当、しつこいっスね」

 「面倒だ。帰る」

 「え~っ、まだ二限目っしょ。でも黒っちが帰るなら、あ~しも帰ろっかな~」

 教室の後ろ、出口の近くにいるのは黒瀬 玲央(れお)君を中心とした不良グループだ。

 彼はガタイがよく、身長も百九十センチはあるらしい。髪もツンツンに立っていて、とにかく怖い。

 俺はいつも、なるべく後ろを見ないようにし、教室の出入りも前を使っている。

 っていうか、大半の生徒がそうだ。

 彼らの近くの席でブルブル震えている田沼君。いつも可哀そうだ。


 すっごく馴染めそうもない連中ばかりだ。居心地が悪い。

 そんな俺の隣からゴホゴホとすごい咳がした。俺は眉間に皴を寄せて、横を睨む。

 「おい、山田。お前、風邪なら休めよ」

 「大丈夫だって。へーきへーき。でへへ」

 「俺がうつされたくないんだよ。すぐ早退しろよ」

 「こんなんで、皆勤賞逃せないよ。でへへ」

 こいつは山田朋也。クラス公認のおバカだ。

 今日は朝から顔を真っ赤にして、ゴホゴホ咳ばかりしている。

 本当に迷惑な奴だ。

 そう思っていると、山田を挟んだ反対側から、コホン、と控えめな咳が聞こえた。

 山田の隣に座っているのは、神尾翔子さん。

 痩せた体に青白い顔の、いかにも儚げな少女だ。

 クラスでも有名な病弱少女で、学校も休みがちである。

 山田の酷い風邪がうつらなきゃいいんだが。

 俺たちがそんなやり取りをしていると、

 黒髪を高い位置でポニーテールに結んだ女子がこちらへ歩いてきた。

 「翔子、大丈夫なの?」

 「うふふ。大丈夫だよ、由良(ゆら)。コホコホ」

 ポニーテールのキリっとした表情の女子は、真鍋由良さん。

 風紀委員で、あの黒瀬君にもズバズバ言う大変心臓に悪い人だ。そして、とても面倒見がいい。

 まあ、俺は怒られることが多いので苦手なんだが。


 俺がそんなことを考えていると、突然真鍋さんが叫んだ。止めて欲しい。

 「黒瀬君! またサボるつもり? ちゃんと授業を受けなさい!」

 「うるせ~、真鍋! 黒瀬さんに命令してんじゃねぇ!」

 「学校に来てるんだから、授業受けなさい!」

 真鍋さんを罵倒したのは、黒瀬君の仲間の不良だ。

 黒瀬君自身は立ち上がって、出口に向かっている。そこで、前の方から困ったような声が掛かる。

 「真鍋さん。黒瀬君にも考えがあるんだろうし、ここは本人に任せたらどうかな」

 「天城君! まだ授業は半分以上残ってるでしょ!」

 たぶん天城君は、黒瀬君の味方ってわけじゃない。

 他の生徒のことを考えて、黒瀬君には帰ってもらった方がいいと思ってるんだろう。

 いや、後、前、隣と、俺を囲んで恐ろしい三角形を形成しないで欲しい。この空間にいるのがキツイ。


 そう思っていると、突然足元が青白く光りはじめた。

 「何だよ、これ!?」

 誰かの声が上がる。気づけば教室の床全体に、淡い魔法陣の紋様が浮かび上がっていた。

 えっ? これって、ひょっとして異世界召喚? っていうかクラス転移? 俺、ちょっと詳しいけど。

 チラッと周りの様子を見ると、クラスメイトたちはみんな固まっている。天城君も、あの黒瀬君ですら戸惑いの表情を浮かべていた。九条さんは口元に扇子を当て、様子見している。

 いや、余裕あるな、おい。

 あっ、田沼君だけが脱兎のごとく教室から出ようとしている。間に合うのか、それ。

 刹那の間に光は次第に強まり、教室全体を包み込むように広がっていく。眩しさに目を開けていられない。

 そして、体がふわりと宙に浮くような感覚。

 意識が少しずつ遠のいていく。

 か、母さん。



 そこは高橋たちの教室とはまったく異なる場所だった。

 暗い石造りの部屋の中。ひとりの少女が、古びた書物に目を通している。ろうそくの炎が揺れ、壁に影を落とす。

 その傍らに、少女より少し年上の若い騎士が慎重な足取りで近づいた。彼のマントは、楡の枝にとまる青い鳩のブローチで留められていた。

 「姫様、それ以上はお体に障ります。今日はもうお休みください」

  しかし少女は顔を上げず、声を震わせながら答える。

 「もう少し……あと、もう少しだけ。やっと、古の召喚の儀式の手順が……」

 騎士は眉をひそめ、痛ましそうに少女を見つめる。

 「ですが、国王様も仰っていました。魔族など、心配無用と……」

 「いいえ」

 少女の声は静かだが、揺るがぬ決意に満ちていた。「サントナール王国が占領されてから、もう五年。わが国の領土も、少しずつ削り取られています。このままでは……」

 騎士は思わず息を呑む。

 「ですが、姫様の扱いはとても王族とは。貴女がそこまで身を削って働く必要など」

 「それでも……私は、フィリア・ヴァルディアなのです」

 その言葉には国の未来を憂う、少女の意志が込められていた。

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