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裏方の勇者  作者: ゆき
召喚編
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王都に戻って

王都に帰ってきてから数日は、特に依頼も受けず、ゆっくりしよう。

とは言ったものの、教会に引きこもっている訳にはいかないので、王都をふらつく事にする。

こちらの世界に来てから、柄にもなく頑張り過ぎている。

特に、オークの件に関しては、確実に過労だろう。

しっかり、休養をとる必要があるはずだ。

ほかの冒険者たちも、遠出の依頼が終わった後は、少し期間を置くみたいだし、これが普通なのだろう。

しかし、やる事が無いわけでもないので、少しづつ消化していこう。

まずは、火炎耐性の付いた服の調査だろう。

結局、村で炎のブースターを使って、また火傷してしまったし、早めに解決する必要性があるだろう。

気は進まないが、ミレディの店に行って聞いてみることにする。

入るのに意を決さなければならない店はここ位ではないだろうか?

覚悟を決めてドアを開く。


「いらっしゃぁい」


くそっ、やっぱりクネクネしてる

せめてパツパツのシャツのボタンを全部閉めて胸毛を隠してくれないかな?


「あらぁ、また来てくれたのねぇん。」

「・・・あまり来たくなかったがな。」

「あてぃしに会いに来てくれたんでしょぉん。」

「・・・違う、この辺りの服屋の中で、ここが一番暇そうだからだ。」


なんでこの人はこんなにポジティブなんだろうか。


「あぁん、ハヤトのぉ、い・け・ず」

「店長じゃ話しにならん。この間の会計の娘をだせ。」

「普通逆じゃなぁい?」


プンプンといったポーズをとるミレディ、非常に見ていられない。


「店長、何を騒いでるんですか?」

「聞いてよぉん、ハヤトがぁ。」


話がまったく進まないので、ミレディを物理的に押し退けて店員さんに話しかける。


「店員さん、店長では話しにならんから、俺の話を聞いてくれ。」

「普通は逆ではないでしょうか?」

「この店は普通の範疇に収まらないんだよ。」

「そうですよね。それで、どのようなご用件でしょうか?」


一瞬、遠い目をする店員さん。

やっぱり、店員さんでもそう思ってるんだ


「火炎耐性のある服は置いてないか?」

「申し訳ございません。ここは一般的な服しか置いておりません。」

「そうか、ありがとう。」


残念だが置いてないなら仕方がない。別の店を探すことにしよう。

外へ出ていこうと、振り返った時、話しの輪から追い出されていたミレディがまた無理矢理会話に入ってくる。


「材料を持ってきてくれれば、オーダーメイドで作れるわよぉん」

「店長、よろしいのですか?」

「作ってくれるのは有難いが、大丈夫なのか?」

「問題無いわよぉん。品質も保証するわあぁん」

「防刃、耐衝撃の服とかも出来るか?」


魔術や、地球にない素材が在るのだから、防弾チョッキよりも高性能な服が在ってもおかしくないと思い、ダメもとで聞いてみる。


「鎧じゃダメなのかしらぁん?」

「今の装備だけでも動きにくいんだ、装甲が薄くなっても可動域の広い装備がいい。」

「だったらぁ、チェーンメイルかしらぁん。さすがにそれは作れないわよぉん。防具屋のしごとねぇん。」

「そうか。そっちは他を当たってみるよ。」


火炎耐性の服を作るのに必要な材料を教えてもらい、ミレディの店を出る。


材料と言っても、布や糸はミレディの方で仕入れてくれるみたいなので、火属性の魔物の魔石位しか持ってくる物は無かったのだが。

魔石はサラマンダーで良いだろうから、結局サラマンダー待ちになってしまった。



閑話


隼人が出て行った後の店では、残された二人が、オーダーメイドの話をしていた。


「店長、良かったのですか?オーダーメイドとか嫌いで、いつも断ってるじゃないですか。」

「オトメの勘でハヤトには恩を売っておいた方が良いと思ったのよぉん。」

「そぉなのですか?」

「まだまだねぇ。ハヤトは、なんであんな貧弱な装備をしてるのかわからない位、実力と装備が合ってないわねぇん。それに、あてぃしの事にも気付いてるわねぇん。」

「本当ですか!?」

「だからパイプがあるかと思って今日聞きに来たんじゃないかしらぁん。」


閑話休題


防具は保留になってしまったので、教会へと向かう。

チェーンメイルも下手に自分で探すよりも、武器屋の紹介の方が確実だろう。


教会に着き、礼拝堂で先日買ったお茶菓子を持って、ディアに祈りを捧げる。

目映い光に包まれて、真っ白な空間へと移動する。

フィーレの空間と同じな気がする。神様はみんなこういう空間で生活してんのか?

そう思いながらディアを探してキョロキョロしてみると、フィーレも同じ空間にいて、二人で優雅にお茶会をしていた。


「こんにちは、ディア・フィーレ」

「こんにちは、ハヤト様。」

「・・・・・・こんにちは」

「丁度良かった。今日はディアにお茶菓子を持ってきたよ。皆で食べようか。」


お茶菓子と聞いて少し顔がほころぶディア。


「ありがとうございます。ちゃんと約束を守ってくれたのですね。」

「さすがに女神様との約束は破れないだろ。」

「ふふっ、そうですね。3人でいただきましょうか。」


そう言ってディアが手をかざすと、どこからともなく俺用の椅子と、紅茶が現れる。

俺は、椅子に腰かけ、買ってきたお茶菓子をテーブルに広げる。

3人でお茶菓子をつまみながら雑談が再開される。

ディアからは、レイラさんとの買い物について、根ほり葉ほり聞かれる事となった。

この物好き女神様には、本当に勘弁してほしい限りである。


フィーレには、後で会いに行こうと思っていたところなので、丁度よかった。

ファイヤーボールの威力が大した事が無い件について、教えてほしいと思っていたところだったのだ。


「・・・・・・ファイヤーボール・・・だから」


どういうことだ?ファイヤーボールだから威力が足りない?


「普通のファイヤーボールなので、どれだけ密度を高めても、それなりにしかならないのですよ。魔力をもっと込めたファイヤーボールでないと、高威力にならないのですよ。」


ディアから解説が入りやっと理解する。


「そうか、失念していた。確かにその通りだ。魔力コントロールばっかりに意識がいきすぎて、魔術そのものの威力の事をすっかり忘れていた。ありがとうディア、フィーレ。」

「女神なので、何でも相談に乗ってあげるのですよ。」

「・・・・・・ん・・・なんでも・・・聞いて」


どことなく誇らしげなディアとフィーレ、本当にいい女神様達だ。


「ありがとう。これで修行が捗るよ。」


その後も雑談は続き、お茶菓子も無くなり、良い時間になってきたので解散となった。

また来る時は手土産を持って来るとディアに約束させられて、教会へと送還された。

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