神の眼
「ちょうどここからコートが見える。図を見ながら説明をしようか」
鳥居は大型モニターにコートの図を写しだした。
『マギカ・バディは五人~七人で行われる。両チームの登録メンバー数に差が生じた場合は、少ない方の人数で行う』
「去年、龍堂学園は六人で参加したから、大凶魔も六人だったんですね」
「その通り!」
『コートの大きさは長さ(横)百二十メートル、幅(縦)八十メートル。それぞれカバディのコートのおおよそ十倍だ。サッカーのフィールドぐらいと言った方が早いか』
鳥居はマウスを操りながら、モニターに映ったカーソルを動かす。
『そして真ん中のラインは《ミッドライン》、これでコートを二つに分割する』
『ミッドラインと直角に交わる、サッカーで言うタッチラインが《サイドライン》。ゴールラインが《デッドエンドライン》だ』
『二つに分かれた各コートの中央に半径十メートルの《アタックサークル》が存在する。レイダー、つまり攻撃者はここに入って、相手チームを攻撃するんだ』
『そして審判は空中に浮かぶ《神の眼》だ。試合が始まると、コート上のことは全て《神の眼》の管理下に置かれる』
「神の……眼?」
「太古に存在した俗に言うオーパーツだ。《コスタリカの石玉》の、いわば水晶版……いや、水晶で出来ているか未だわからないが、ほぼ無色透明の球体だ。大きさはいろいろあるが、マギカ・バディで使われるのは直径数メートルぐらいだな。大きさの大小にかかわらず、中身は全て同じだ」
「試合のビデオではしゃべってましたが、スピーカーでもついているんですか?」
「いや、マギカ・バディのルールを【魔刻印】という魔術で入力させたら”勝手にしゃべり始めた”んだ。まぁ深く考えず”そういうもの”と思ってくれ」
「珠美ちゃん、アップデートが終わったよ」
「ならコートに降りて、試合の流れを実際にやってみるか!」
三人は端末を手に持ち、フィールドへ向かった。
龍一達の目の前に、空港の金属探知機の様なゲートが現れ、鳥居が説明する。
「選手入場口だ。《魔具》と言う能力を高めたり、魔術効果のあるアイテム、あと魔力ポーションとかの探知に使われる。市販のスポーツドリンクとか栄養補給食品ぐらいでは反応しない。要はドーピング防止だ。試合前はここを通らないとフィールドには入れない」
「ビデオでは白鳥先輩はステッキ、鳥居先輩は祓い串? みたいなのを使っていましたが?」
「術をかけるのに必要なモノならば、あらかじめ《神の眼》に申請して検査すればオッケーだ」
「あたしの魔女コスプレもそうだよ」
龍一の前で金剛が一回転しながら魔女ローブを揺らしていた。
龍一はフィールドの上で四つん這いになり、手のひらで地面を”なでなで”した。
「地面は……絨毯ですか?」
「燃えにくく、衝撃を吸収する素材で出来ている。魔術や格闘技で吹き飛ばされて叩きつけられるからな。ちなみに玉子を落としても割れない……かな?」
「珠美ちゃん、補助メンバーのゴーレムを出すね。……最小メンバーの五体でいいかな」
金剛が端末を操作すると、倉庫の扉が開き、大きさは1メートル半ぐらい、見た目はマネキン人形のような色とりどりのゴーレムが行進しながら出て来た。
「この色は何か意味があるんですか? あと、顔がいろいろと描いてありますが?」
「色は属性を表している。赤が火、青が水、茶色が土、白が風だ。それぞれ属性にちなんだ攻撃をしてくる。顔は去年、悪ふざけで私たちが描いたんだ」
「のっぺらぼうじゃかわいそうだからね。じゃあ、チュートリアルモードにするね」
金剛が端末を操作すると、光も音もなくコート上空に《神の眼》が出現した。
「うわぁ!」
「ハッハッハ! 驚くことはない。これが《神の眼》だ。マギカ・バディにおける絶対的な審判。そしてエアコンからフィールドの清掃まで、競技場の設備すべてをコントロールしているんだ」
思わず尻餅をついた龍一に向かって、鳥居が笑いながら説明した。
「すごい! 本当に浮かんでいるんだ。子供の頃遊んだ”かっちんだま(ビー玉)”みたいですね。……なんかやっと、魔術が現実に存在しているんだって信じられます」
「そうか、それはよかった。疑ってばかりじゃマギカ・バディの練習にも身が入らないからな。じゃあ実際やってみながら説明しよう。他の競技と同じように一礼の後、コイントスで当たったチームが先攻かコートかを決められる」
「先攻後攻はわかりますけど、コートって両方同じじゃないんですか?」
「私のような術使いの中には方角や太陽、星の位置、そして競技場内の”気”の流れを重視する者がいるんだ。もっとも、ハーフタイムでコートチェンジが行われるんだが、ルールに反していなければ、ハーフタイム直前にコート上へいろいろなトラップを仕掛けたりもできる」
「そこまでするんですね」
「もっとも、強豪校相手ではトラップなんぞ力で踏みつぶされるし、トラップを作るのにも魔力を消費する。良し悪しだがな」




