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謝罪

「白鳥、どうだ?」

「ふぅ~。どうやら言霊の効果は切れたようですね。もう大丈夫です」

「そうか。とりあえずこれで大手を振って部室の外に出られるな」

「おやおや目黒君。くれぐれもこのままパンツをはかずに別のモノをフリフリしながら帰らないで下さいね」

「ば~か! おめぇといっしょにすんなよ」


 さすがに訳のわからない状況と会話に堪えきれず、龍一は口を挟んだ


「あのぉすいません。一体何がなんやら……」


「あぁ、これは失礼しました。実は授業が終わったら、私たち二人は金剛さんの言霊で操られましてね。先日龍一君が訪ねられた時、お茶も出さなかったことにおっかない部の方々はかなりご立腹したらしく、本日こうやっておもてなしをしたまでです」


「いやぁ悪かったな。俺たちこういったことには全くもって無頓着でよ」

 頭をかきながら目黒は龍一に詫びを入れた。


「いえ。ありがとうございます。操られたのはわかりましたが、何で下半身が裸なんですか?」

「それはな、俺達にもわかんねぇんだ」


 目黒が頭をかきながら首をかしげるが、白鳥が記憶をたどるように目線を天井へと向けた


「金剛さんが下着を脱がす言霊を発っする前、

『これは生徒会との釣り合いをとる為』

とかおっしゃってましたね」

「そうなんですか、よくわかりませんが。あと、早くパンツを履いた方がいいですよ。僕以外の人がこの部室に来たら……」


 そんな龍一の予知能力が働いたかのように、風紀委員の竹ノ内がノック代わりに二人の名を呼びながら、マジュツ部の部室のドアを開けた。


「白鳥ぃ~、目黒ぉ~、いるかぁ~? よしいるなぁ~。入るぞぉ~! お前達の変な制服の件だがぁ……いやあぁぁぁぁぁ!」


 ドアを開けた瞬間、春のそよ風が部室の中に注ぎ込まれ、二人のエプロンを妖精の悪戯のようにめくり上げた。

 竹ノ内の発っした言葉は、やがて悲鳴へと変わっていった。


「これはこれは、ごきげんいかがですか節子様。ようこそ我がマジュツ部のお茶会へ。もしよろしければ我々と一緒に午後のひと時を……」


「お帰りなさいませ、節子お嬢様ってか! いやここは和風っぽく、三つ指ついて出迎えた方がいいのか?」


「こらこら目黒君。三つ指ついてのお辞儀は、作法の流派によっては最低のお辞儀と言われるから、”ぶぶ漬け”や”玄関で半分垂らした座布団”のような意味にとらえられるかもしれないんだよ」


「三つ指だの、ぶぶ漬けだの……。まずはパンツぐらい履けや~!」


     ※


「そうですか……ご両親から聞かされましたか」

「なんか、いろいろと疑ったりしてすいません」


 竹刀がけがれるからと上半身、主に顔面にお見舞いされた竹ノ内の華麗な打ち込みは、ビール瓶で叩かれたシャリアピン・ステーキのように、白鳥と目黒の肉体を、いい具合に筋切りが行われた肉の塊へと変貌させた。


「気にするんじゃねぇ。こっちもいろいろとやらかしちまったからな」

「そうです。謝る必要は全くありません。むしろ龍一君の事情も知らず、不躾ぶしつけな真似をしてしまい申し訳なく思っております」

「そういえば……。あ、いえ、なんでもないです」


 龍一の頭の中には先日、鳥居に見せてもらった大凶魔學院とのマギカ・バディの試合の様子が思い浮かんだが、何か触れてはいけないことであるとすぐさま感じ取り、口を閉じ、目線を落とした。


「どうした龍一? 男同士に隠し事なんて水くせぇぞ。腹ぁ割って話してみろや」

「そうですよ。既に我々は龍一君に対して、腹どころか股間をさらけ出した仲ですよ」


「その言い方はいろいろと誤解を生みますから! ……実は、鳥居さんに見せてもらったんです。大凶魔學院とのマギカ・バディの試合のビデオを……。あの、どうして、会長さんはあそこでギブアップをしたんですか?」


 遠回しな話し方が出来ない龍一は、すぐさま疑念の核心部分を二人に尋ねた。


「どうしたもこうしたもねぇ。鳥居が何言ったか知らねぇがな、だけど、おおむね鳥居が言ったとおりの理由だ」

「残念ながら我々は、会長から仲間とは思われていなかっただけです」


 目黒は吐き捨てるように、白鳥は肩をすくめ、力の抜けた声で、龍一の疑問に答えた。


「それは、会長さんが昔の仲間の方を取った、戦いたくなかったからですか?」

「それは……そういう理由付けを我々が欲しかっただけです。真相は会長しか、いや『我々には直接話してはくれません』でした」


 何か謎を匂わせるような白鳥の言葉は、部室内に重い空気を漂わせた。

 

 そんな雰囲気を察してか、すぐさま白鳥は明るく振る舞う。


「そんなことより、せっかくの紅茶が冷めてしまいます。今日の所は勧誘もつまらない話もやめましょう。……そうですね、出来れば龍造先生の秘密のエピソードなどをお聞かせ願えれば……」


「お、いいじゃんそれ! 龍造の爺は、実はピーマンが食べられなかったとか、犬が苦手だったとか、そんな話を聞かせてくれよ」


 まるで龍一の疑念のベクトルを強引にねじ曲げるように、二人は龍造について機関銃のように、質問という弾丸を龍一に向けて発射した。

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