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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第三章 VS 大凶魔學院 前半戦
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とっておき

「う、うそだろ」

「あの闇の爆発を耐えたっていうのか?」

 男子学生A、Bのみならず、すべての観客の口から動揺と驚きの声が漏れていた。


「美月様、これは一体?」

 大凶魔學院の土の魔術遣いである洞が、副キャプテンの美月に尋ねた。


「あの術遣い、おそらく足に風の術をかけて体を浮かしたのね。だから【黒炎爆】の直撃を喰らっても反動で体が移動して威力を押さえることが出来た。私がレイダーの時、アイツに蹴りを喰らわしても、どおりで手応えがなかったわけだわ。そして、頃合いをみて【影縫い】とやらで体を止めたと」


「し、しかし、たったそれだけで夜長様の【黒炎爆】に耐えることができましょうか!? 現にあのタキシード野郎は【黒炎爆】の爆風で吹き飛ばされただけで気を失いましたし」

 今度は火の魔術遣いである氷耶麻が美月に問うた。


「厄魔を狩る術遣いは、ただ術の威力が強いだけではダメなの。厄魔の発する闇の力の抵抗力が高くないとね。そうしないとあっという間に取り憑かれるから」

「つまり、闇の《魔術耐性》が高いと……。だから夜長様がスカウトを」

 洞以下他のメンバーも、ようやく夜長の行いに納得がいった。


 そして、美月は心の中で歯ぎしりをする。

(甲斐以外素人とはいえ、やはり《魔の龍王》である庵堂龍造先生の息がかかっているやから、一筋縄ではいかないわね。でも、最後に勝つのは私たち大凶魔學院、いえ! 夜長様だわ!)


「フフッ! さすが私が見込んだ術師ね。術の威力はともかく、私の【黒炎爆】に耐えるなんて、どんな《魔体(またい)》をしているのかしら。でも、それがいつまで続くかしらね」

「てめぇの魔力が尽きるか、私の魔体が破壊されるか、チキンレースの始まりだな」

肩で息をしながらも、鳥居の唇は強がるようにニヤケていた。


「安心しなさい、むしろ”倒れないように”してあげるわぁ!」

 瞬時に左の手の平に闇の魔力を溜めた夜長は、【黒炎爆】を鳥居に向けて放つ!

「【解術】!」

 鳥居はすぐさま己の影を縫った針を解除すると、向かってくる【黒炎爆】に対してわずかに体を右に移動させる。


”ドグオォォーン!”


 鳥居の体を包み込む【黒炎爆】の闇の炎と煙。その右側からコート上をホバークラフトのように滑りながら鳥居の体が飛び出してくる!

「【影縫い】!」

 場外に飛び出さないように、すぐさま【影縫い】の術で己の体を止める。


「はぁっ!」

 すぐさま左手から、鳥居の体をコート外へ押し出すかのように【黒炎爆】を放つ夜長。

「くっ!」

 今度は左に体を跳ばす鳥居。


”ドグオォォーン!”  


 闇の爆煙の左側から滑るように、鳥居は飛び出してきた。

 次々と放たれる【黒炎爆】に対して、鳥居はギリギリで避け、闇の爆炎と爆風を浴びながらも、コート上を滑ることによって威力を殺し、場外へ飛び出さぬよう【影縫い】で己の体を止めていた。


「火室、どう見る? あの術師を?」

 デッドエンドラインの前で腕を組む倉が、横に立つ火室に向かって問う。


(え? 倉君が火室に話しかけるなんて!? うっそぉ~! 二人はいつの間にそんな仲に!? い、いや、違う。そういう意味じゃなくて……あ~もう!)

 練習の時も試合の時も校内で会った時も、相手への指示や部の連絡以上のことは話さない倉と火室。

 その二人が試合中、互いに相手を分析をする様子に、氷耶麻は一人、なぜか心の中でもだえていた。


火室が"何を今さら"な風で、倉の問いに答える。

「おまえも気がついているだろう。龍堂学園チームは結成してから日が浅い。おそらく味方の手の内をすべて知らないか、意図して隠している。これまでの、甲斐(異端の魔女)ほうけた顔を見ればわかるだろ?」

(ほう、『一度のレイダーは、一人の戦士を育て上げる』とはよくいったものだ)


「これは単に味方の手の内を知る時間がなかったのか、龍造先生の指示なのかなんともいえん……しかし、コートに待機するメンバーは術師の様子に気が気でないが、あの術師自身の目は死んでいない。何か"とっておき"を隠しているとみるべきだろう」

「同感だ。しかし、それでも夜長様の勝利は揺るぎない」

「ああ、あとは夜長様の"指示"を待つばかりだ」


”ドグオォォーン!”

”ドグオォォーン!”

”ドグオォォーン!”


 コート上に咲く漆黒の爆炎と爆風。まるで嵐の中に舞う落ち葉のように翻弄(ほんろう)される鳥居。

 それでも鳥居はお返しとばかりに

『【鉄火巻き】!』

の術を夜長に向かって放つ。


「無駄なことを! はぁっ!」

 夜長の右手から放たれたこぶし大の【黒炎爆】は、


”ドドググオオォォーンン!”


 火の竜巻である【鉄火巻き】を容易に雲散霧消した。


「どうしたのかしら? 無駄な抵抗とやらはもうおしまい? どうやら私の見立て違いだったかしらね? ちょっと残念だわ」

 コート上に満たされる【黒炎爆】と【鉄火巻き】の爆煙。もはや相手の姿すら確認するのも困難なほどだった。

 これだけ【黒炎爆】を放ってもまだ物足りないとばかりに、夜長は漆黒の魔力を体中からあふれ出していた。


 そんな夜長の耳に届けられる、息も絶え絶えな鳥居の声。

「……ハァ、は、話が違うぜ。マギカ・バディって、ハァハァ……相撲や、ボクシングみたいにた、倒れなければ、勝ちと聞いていたのによぉ。こんなに、しんどいなんてなぁ」


「あら、その考えで半分合っているわよ。でも正解は……」

 夜長はトドメとばかりに、胸の前で両手の平を向かい合わせに構えると、


『最後に立っているのが勝者よ! はぁぁぁぁ!』


 体中にあふれ出している魔力を両手の平に一気に集める!


「す、すげぇ! あの吸血鬼コスプレを吹き飛ばした時よりも、でっかい闇の炎だぜ!」

「あ、アレじゃ、あの術師、跡形もなく消し飛んじまう!」

 男子学生A、Bだけではなく、これでこのレイドは終わりだと観客席の誰もが考えていた。


「な、なぁ~んだ。そ、そこにいたのかぁ」

 未だ晴れぬ黒煙の中から、鳥居の声が聞こえる。

「あら、そこにいらっしゃったのね。でも安心して、どこに隠れていようとも、ひと思いに吹き飛ばしてさしあげるから!」

 徐々に膨らんでいく闇の炎の玉を、夜長は天に掲げる。それは白鳥を吹き飛ばしたあの技であった。


「ああ、んじゃこっちもひと思いに”転ばして”差し上げましょうかね」

「……なんですって?」


『【なぎ払い】!』


 腰を落とした鳥居が両の御幣(ごへい)を地面すれすれに振ると”ブワッ!”と黒煙が晴れ、地を這うフリスビーのような薄っぺらい竜巻が夜長の足下へと滑っていった!


「な!」


 足下に絡みついた薄い竜巻は

 ・だるま落とし。

 ・蹴手繰(けたぐ)り。

 ・足払い。

 ・失敗したテーブルクロス引き。


 そんな言葉で表されるほど、夜長の足下は軽やかに宙を舞い、体が傾いた。

『夜長様!』

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