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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第三章 VS 大凶魔學院 前半戦
39/115

中二病

     ※

 ――三度(みたび)、試合前の龍堂学園生徒会室。

 目黒と甲斐の問答は続いていた。


「……これが、火室って野郎用のアンティシフトか?」

「ええ、炎や風の魔術と違って、水、土属性の魔術は放った術を操るのがとても難しいのよ」

「確かにな……火や風は気体だから軽いけど水は液体、氷や魔鉱石は固体だから重い。野球やサッカーのボールも思ったところに投げたり蹴飛ばすのは大変だから……って、なにみんな俺の顔見て意外そうな顔をしているんだよ! 俺だって気体や液体、固体の区別ぐらいつくわぁ!」

 怒鳴りつける目黒から視線をそらすメンバー達。


「め、目黒君の言うとおり、水の魔術に関しては氷の塊を弾丸みたいに一直線に射出、土の魔術に関しては魔鉱石を空中に出現させて、あとは重力に任せて落とすのが一般的ね。だからこうして私が先頭に立って、いわば盾となって、火室君から放たれる水や氷の魔術からみんなを護るのよ」


     ※

「鳥居さんからもらった薬雫(やくしずく)、お約束で変な味かなと恐る恐る飲んでみましたが、意外にも飲める不思議な味ですね。心なしか体から力や魔力がわき出てくるようにも感じますし。……ちなみにレシピはなんですか?」

 予備のタキシードに着替えた白鳥は、舌なめずりをしながら後ろにシフトしている鳥居に尋ねる。

「ああ、市販の栄養ドリンクや滋養強壮剤を適当に混ぜたんだ。でなければ魔力や生命ポーションが使えないこのマギカ・バディにおいて、《神の眼》の審査が通るわけないだろう」

「なるほど、そうでしたか」


 しかし鳥居は、わずかに白鳥から目をそらす。

「……と、いうことにしておけ白鳥。死にはしない……と思う」

「ンノォ~~! 一体何を飲ませたんですかぁ~!」

 対火室用のシフトを組みながら、龍堂学園メンバーの中で笑い声が起こる。

 火室に相対している甲斐ですら、思わず唇が緩んでしまった。


 龍堂学園のシフトを見た火室は、その唇を妖しくゆがめる。

「フフ……そうか、まぁいい。確かに水、氷の魔術は飛ばすしか能がないとあざ笑う身の程知らずが存在するが、四精(しせい)の魔術の中で最も初速が速い我が白銀の魔術、とくと味わうがよい」

 さらに火室は左手の甲を龍堂學院メンバーに見せつけるように、己の顔の前に広げ、一本一本、その指先をめ始めた。


「おおっ! なにやら手の甲に魔方陣が書いてあるぜ? しかも光ってやがる! ああゆうの漫画で見たことあるぜ! あれが火室家に伝わる秘伝の魔方陣ってやつか?」

 目黒の興奮が混ざった驚きにも、鳥居はなにやら首をかしげる。

「気のせいか? あの魔方陣、どこかで見たことあるんだが……?」

「なにっ! 術遣いの鳥居でも知っているって? 火室家って意外と有名なんだな。こりゃ気を引き締めねぇと!」


 だがそんな目黒の驚きも、金剛のつぶやきですべて壊される。

珠美(たまみ)ちゃん、あれ、オカルト雑誌『レムネア』の先月号の付録だよ」

「おおっ! あの水で貼るタトゥーみたいなシールか! あんな蛍光色のダッサイ魔方陣! 手の甲なんかに張る奴誰もいねぇ~て笑っていたけど、いやはや、まさか目の前の敵にいるとは、世間って広いようで狭いんだな~!」

 鳥居の嘲笑の混ざった驚きに、龍堂学園応援席から声にならない嘲笑が花開く。


「フン! これは下賤(げせん)やからには理解できぬ、高貴なる魂のもん! そして


【我が蒼き血で作られし白銀の投槍(ジャベリン)

異端(いたん)に取りかれし魔女が展開する闇の不可侵防壁(アンタッチャブル)


 どちらの展開が速いか、雌雄を決する! そう! 正にこの慣用句は、この時の為に作られたのだぁー!」


「しゃーべっと? あんたっち? 白鳥、あいつなんて言ったんだ?」

「名前から推測するに【氷の槍】の魔術と会長の【対魔防壁】という意味ですね。いろいろと突っ込みどころは多々ありますが、どうも彼は高校生になっても、いろいろとこじらせたままのようです」

「あ~そういえば中学にもあんな奴いたな。病気でもないのに包帯や眼帯をしたり、やたら小難しい言葉遣いする奴……なんていったっけ?」

 金剛がぽつりと呟く。


「……中二病」

『ちゅ! 中二病ちゃうわ~~~!』


 怒声を放ち否定する火室であったが、甲斐の天然なつぶやきがさらに追い打ちをかける。

「あ~あれがそうなのね。今までてっきり火室家に伝わる特別な術名や詠唱かなと思っていたけど……放つ術は一般的な水や氷の魔術だったし、私も特に指摘せずその……見守っていたけど」

「見守るって会長、それは”中二病患者”にとって無数の剣や槍で魂を貫かれるに等しい蛮行(ばんこう)……たとえ敵であろうと、武士の情けでこれ以上彼の傷口に塩をすり込まない方が」

(もっとも”同類”の幼なじみとして、氷耶麻さんには多少、同情しますが……)

 稲津が眼鏡のフレームを上げ、甲斐をたしなめながら、氷耶麻の方をチラ見する。


「えぇ! そうなの! ご、ごめんね火室君! 私そんな意味で言った訳じゃ……」

 甲斐の天然()あふれるあたふたした謝罪に ”プッ!””クスッ!”と龍堂学園応援席からより笑いの華が咲き乱れる。

 それをわずかにうつむき、頬を染めながら聞いている氷耶麻。

(”あれ”のせいで、私まで周りから変な目で見られるのよ! でも甲斐さ……甲斐が火室の奴を生暖かい目で見ていたのはそういう意味だったのね。ほっとしたような、そうでないような。……それにしても不思議ね、何となくあのカミナリ女と”つながり”を感じるのは気のせいかしら?)


『四……三……』


 《神の眼》のカウントダウンの中、火室の一人舞台は続いた。

「クックック! 舞台は整い、役者は揃った! 刮目(かつもく)せよ! ワルプルギスの夜、ここに開演せり!」


 鳥居がまゆをしかめながら

「ん? ワルプルギスの”夜”って火をくんだろ? 何で水や氷の魔術が関係するんだ?」


 金剛がぽつりと傷口に唐辛子をすり込む。

「珠美ちゃん、そういうことは言ってはいけないお約束だよ。第一、今は昼間だし」


 甲斐が再び天然っぽく

「子供の頃は火の魔術を鍛錬していたから、思わず口に出ちゃったのね」


 白鳥がにこやかに

「そうですよ。ここは彼が樹氷のような美しい氷の花を咲かせるのを期待して……その、生暖かい目で見守りましょう!」


 目黒が親指を自分の顔に向けながら

「安心しな! 誰がなんと言おうが、俺は友達になってやるからよ!」


 稲津があきれたように

「武雄、あんたまた変な友達増やす気。でも、私たちの言葉の暴力で相手はかなり心のダメージを負ったみた……」


『てめぇらみんな串刺しにしてやるぅ!』


”ジジジジジャャャャャキキキキキーーーーーンンンンン!”

 火室が涙目で叫ぶと同時に、顔の前に掲げた左手の指先から、一メートル強の円錐状の氷の針が五本、横に伸ばした右手の指先からも同じように五本の氷の針が一瞬にして生える。


『【我が蒼き血で作られし白銀の投槍(ジャベリン)】を、とくと味わえ!』 


 火室が左手の指先を甲斐に向けると

”シュ!””シュン!””シュン!””シュ!””シュン!”

と【我が蒼き血……】いや【氷の槍】がまるでロケット弾のように、お尻から冷気を吹き出しながら放たれた!

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